◆2ー5

 

5.レア

 

 

 

しおり「まつりちゃんも、二段オチ経験したの!?

やったじゃん!」

 

 

 翌日の朝となり、登校中にまつりが今朝見た夢を打ち明けてきたので、しおりも何だかうれしくなってまつりと一緒になってよろこんだ。

 

 

まつり「そりゃもう、見事な二段オチっぷりだったね。

まさにレア体験!」

 

 

 当の本人も、今日の朝日のような明るい笑顔。

 

うかない顔をしているのは、こよりばかりだ。

 

 

こより「むー……」

 

 

まつり「あー……こよりんもきっと今夜辺り体験するって!」

 

 

しおり「そ……そうよ、落ちこむことないよ」

 

 

こより「べつに、落ちこんでなんか、ないのだ……」

 

 

まつり「あー……そういやぁさ、初もうでに行った時、おみくじ引いたんだけどさー」

 

 

しおり「ずいぶん前の話ね……ι」

 

 

まつり「そんで、“大凶末大吉”なんてレアおみくじが当たったんだよ……」

 

 

こより「こよりは“吉凶未分 末大吉”だったのだ」

 

 

しおり「おいなりさん行ってきたの!?

伏見稲荷大社行ってきたの!?

つーか、何て読むのそれ!?」

 

 

まつり「おっ、こよりんオレよりレア引いてんじゃん♪」

 

 

こより「……(///)っ」

 

 

 まつりにおだてられ、こよりはにわかに赤くなった顔を隠そうとしてうつ向いていた。

 

 

しおり「もうそこまでいくと、運勢以前に、レア度の高さで気持ちが高揚するって感じね……」

 

 

まつり「いいことあるといいな、こよりん♪」

 

 

 まつりはそう言って、ほとんど自然にこよりの頭をなでなでした。

 

それを見とめてしおりは、こよりがまた怒るのではないかと内心はらはらした。

 

 案の定、うつ向いたままのこよりの手がにぎりこぶしに変わって、隣の者へ伸びてゆく。

 

 

こより「……にゃ、……にゃ、……にゃっ(///)」

 

 

しおり「照れてる!?

なでなでされて、まんざらでもない!?」

 

 

 彼女のパンチは全く殺気を帯びず、まつりの横腹を軽くつつく程度だった。

 

 

まつり「うふふ、やっぱこよりんはかわいいなぁー、ふふふ、ふふふ♪」

 

 

 こよりに抵抗の色がないと分かると、まつりはさらに調子に乗ってこよりをかわいがり始めた。

 

 

しおり「ちょ……まつりちゃん、それ以上やると……ι」

 

 

 ついにはこよりを抱きかかえ、ほおずりを強制するまつり。

 

 

こより「むー……♯」

 

 

 ついにがまんの限界を越えたらしいこよりが、まつりの腕を脱して上空へ飛び上がる。

 

まつりの頭部をそのきゃしゃな両足ではさんだかと思ったら、次にはみずから倒れこむ反動を利用して彼女を投げ飛ばした。

 

 

こより「ヤ────!!」

 

 

まつり「ふぎゃっ!!」

 

 

しおり「ヘッドシザーズホイップ!!

なんてレア技なの!?」

 

 

 今回も、投げ飛ばしたまつりを放置して、何事もなかったかのように先を急ぐこよりなのであった。

 

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