獣神_01
皮や前足は後で俺が街に行った時にでも買い取りをしてもらったほうがいいだろうと言われた
要は村に需要がないのだ
いくら恩人とはいえ需要のない物をいくつも買う訳にはいかないし、そうなればそれだけ安めに買わなくてはならない
ならば街で売ったほうがいいだろう、非常に合理的だ
村の広場に行くと、既に宴は始まっていた
場には村で育てている、食用には少々向かない穀物を発酵させた度数の低い酒が出ていた
しかし量は多い、風味も強く酒に酔うために飲むというよりは風味を楽しむために飲むといった酒だ
どう発酵させているかまではわからない・・・もしかするとファンタジーな製造方法があるのかもしれない
テーブルには今日捕ってきたウサギ肉だけでなく家畜を調理したものも並んでいた、この村は牧畜よりも野菜の栽培が盛んなため、付け合わせの野菜も多い
しかし騎士団員も居るこの人数ではこれでも足りないかもしれないという勢いで消えていく料理たち
「主役は騎士団、肴は山賊・・・なのかな?」
「いやいや、主役はユウヤ殿・・・の筈ですが」
見たところ大人はみんな出来上がっているし、子供は満腹でうつらうつらとしている
原酒で飲んでも5%程度の酒でこの酔いっぷりってどんだけ飲んでるんだよ
よく見ると首輪をかけられ、柱に繋がれた獣人の子供がスヤスヤと眠っていた
「この獣人は・・・」
アルベルトさんが獣人の子供を詳しく調べてみると、この獣人は普通の獣人ではないことがわかった
「獣神族」と言う、特別な力を持つ獣人の血が流れているようだ
獣神族は通常は人族と全く変わらない外見をしているが、生殖的には獣人と親和性が高く、子を成し易いのだという
しかし、種を問わず獣人を従えたり獣系のモンスターを含む獣の類から恐れられる存在だそうだ
「一体どこを見たらそんなことが?」
「ここです」
指差した場所を見ると、そこは鼻だった
「獣神族の血が濃いと、この鼻の部分が人に近くなります」
「普通はどうなんですか?」
「普通だとここがそれぞれの獣の鼻と同じ形になるのです」
所謂Yの字のアレか
そういえば兎特有の「ピスピス」という動きの印象がなかったな、そういう事か
「だとするとこの状況は・・・もしかするとこの子の所為かもしれませんね」
「どういう事ですか?」
「獣神族の血が混じっていると、同族のモンスターが持つ能力を持つことがあるのですよ」
なんでも、眠る事で周りの生き物を酩酊状態にする兎種のモンスターが居るのだという
呪いの装備と組み合わせるととんでもない状況になるな
「この子は獣神よりも獣人の血の方が濃いようです。恐らくこの惨状も酒が入っているものがより酩酊しやすくなっているのでしょう」
「判るのですか?」
「この・・足をご覧ください」
言われて足を見ると、つま先から踵までが非常に長い・・・これは
「足が兎ですね」
「獣神族は一目で人と区別を付け難いとは言いましたな?アレはこういった部分も含めて、獣神族に獣人としての特徴が無い為なのです」
じゃあなんで獣神族は獣人に含まれて・・・・・・
「獣神族は変身能力を持ちます。子を成しやすい事とその変身した姿が獣なので、獣人族の祖先ではないかと言われているのです」
まあ肉球が残ってればぷにぷにできるからむしろ良かったというか
これも男のロマンだよね
そんなケモナーLv1なロマンは置いといて、今後の事だ
「とりあえず名前を付けないと行けませんね山賊が名前を着けていたとも思えませんし」
「名前も呼ばずに仕事させるんですか?」
「珍しい事ではありませんよ。ウチのように使用人として扱うならともかく、雑用を任せるだけならば名前を呼ぶ必要もありませんから」
「そうですか、それなら本人に聞いてみますか」
「は?」
言うが早いか、俺は兎獣人を揺すり起こしていた
「みゅ・・みゅ~?」
「寝てたところ悪いが、お前名前はあるのか?」
「みゅー!みゅっみゅ!」
うむ、わからん
「何となく分かるかと思って聞いてみたがそうでもなかった」
「びっくりしましたよ、まさか獣神語が判るわけ無いと思いましたが」
「獣神語は知りませんが、この子が人語を話せるかもとなんとなく思ったもので」
多分この子を手に入れたことでボーナスにも加わるだろう
これまでのボーナススキルや鑑定内容の法則から考えて、取得・行使してから新たにそれに対応した説明やスキルが手に入るような法則が見える
まぁ、それが「獣神語」かは不明だが
「彼らにも聞いてみますか」
そう言うと、俺はまず獣人の子を連れていた弓使いの男を起こした
もし名前があって、それをコイツらが使っていたとすれば知らないとは思えない
「気が付きましたか?」
「て・・てめぇっ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます