街へ_01
街へは、街道沿いにいくか行軍用の道を行くかで日数が大幅に変わるらしい
行軍用の道は、別に一般市民が通っても問題はない
ただ一定距離ごとに見張りが居て、通行を監視されている
また、敵の物資輸送用の馬車を簡単に通さないために1mほどの崖があり、普通の荷馬車ではそこを通る為のスロープを出す許可が貰えないので、行商人など荷馬車を使う者は必然的に街道を使うことになる
今俺たちは村から出て1日、最初の見張り詰め所に来ていた
「これが派遣部隊から預かった書状です」
理由は、村に山賊の引き取り部隊を派遣してもらうのに、街まで見張り台経由の通信をお願いする為だ
通信と言ってもその為の魔道具があるわけではない・・狼煙だ
難しい通信は出来ないが、例えば「何番の見張り台からどの方向に何が見えた」程度でも十分役に立つ
今回は「ウサギの巣穴の近くの村に罪人の回収に来て欲しい」と言う旨の通信なので、それ程複雑ではない
「君はこれから街へ行くそうだね この書状を騎士団に持って行って欲しいのだが」
街から回収部隊が来るとして、彼らに書状の運搬を頼むと行軍用の道を使っても往復5日以上
俺たちが街道沿いに行けば、余程の事が無い限り3日ほどで着く
2日の差をどう見るかだが、大した労力ではないので引き受けることにした
割と大きな川(川幅100mくらいだった)を越え、街まで丘をひとつ越えればすぐだと言われた場所まで来たところで・・山賊が出てきた
なんだろう?これから街に入ろうとする行商人を襲って労力に見合う稼ぎが出るんだろうか?
それとも、何か?とりあえず食い物でも手に入れば御の字とか思ってるのか?
これから街に入る行商人が余剰食糧持ってるとでも?
「金と荷物と女を置いていけ、そうすりゃ命までは取らねぇぜ」
哂いながら山賊Aが言う
あ・・なるほど
質はともかく女が二人、行商人なら荷物が無ければ金が、金が無ければ荷物がそれなりの量あると
元の世界みたいに、売っても二束三文のものに大枚はたく奴はそう居ないし、商人ならなおさらだしな、なるほど
「どうしますか? 撃退すると多少危険になりますが」
「金も荷物も置いていくとなれば死んだも同然です 女性方はあなたの連れですし、ここはお任せします」
相手は5人、伏兵が居るとしても10人は居ないと思うが
鎧に操られていた時とは違うし、5人でも厳しいか?
とりあえずナズナの方を見ると、着火の魔道具を早速装備している
あれなら接近を許しても少しくらいはどうにかできるか?
今の職業は決死兵、魔術師、騎士か
決死兵でカウンターがしやすくなってるし、騎士で剣筋が良くなっている
魔術師もあるから遠距離攻撃も出来るし・・そうだな、生活魔法くらいなら魔道具を持っていたと思わせられるか
生命維持スキルは状態異常無効と不死にしてあるから、相手の攻撃は問題ない
「おいっ! はやくしろ」
「早く決めないと痛い目を見ることになるぞ?」
「まさかここに居るだけならギリギリどうにかなるとか考えてるわけじゃねぇよな?」
「へっ! そりゃぁねぇだろ 見たところ戦えるのは一人だけみてぇだしな」
「(スッ・・・)」
最後の一人は退路を断とうと後ろに廻ったか
意外と伏兵は少ないかもしれないな
俺だったら護衛を引き付けて、逃げ出して馬車が離れたところを狙う
今馬車を動けないように牽制するってことは、精々護衛や御者を不意打ちするための弓兵が2・3人と言うところだろう
「(退路を断たれました 狙撃されるかもしれませんので、馬車に潜って身を隠しましょう)」
ナズナGJだ
これで警戒すべきは馬車に直接突っ込む奴くらい
一人くらいならナズナが魔道具で攻撃できるだろう
ナズナも俺がレベリングしたから、着火の魔道具を全力で1回使ったくらいで死にたくなることはないと理解している
実際山賊を退けた後狩りに付き合って、迷宮の外のオオウサギに着火の魔道具で攻撃してたのは確認したし
・・着火の魔道具で鑑定結果が黄色になってた辺り、相当MPを注ぎ込んでたのは分かる
「おいおい、見逃してやるって言ってるそばからぐるっと囲むとか怖いな 俺がここから離れれば俺だけでも見逃してくれるのか?」
大根芝居だが、元の世界じゃよっぽど警戒している相手以外ならこれでやり過ごしてきた
カツアゲグループから逃げるときもこうやって・・
「ほら、何も持ってない 離れるからちょっと道を開けてくれないか?」
手のひらを相手に見せながら横をすり抜けようとする
当然すんなり見逃してはくれないわけだが
「おい、お前も金と武器を置いていくんだ」
「服だけは見逃してやるぜ」
「どうせ大した値段もつかねぇしなっ!」
「ギャハハハハハッ 違いねぇ!」
逃がすまいとこうして近づいてくる奴は大抵小物だ
まぁ、俺もそう言う奴の横を狙って行くんだけどな
流石に武器に手をかける一瞬は相手も警戒をして間合いから外れる
だがそんなことは関係ない
俺は膝を曲げ、腰を落とし、エクスカリバーを地面に置く仕草のまま、脚力の限りを使って近づいてきた山賊に突進する
相手も完全に地面に置くまでは油断をしなかったらしく、脅しのために抜いていた短剣で俺に斬りつけて来た
「うぎゃっ!」
斬りつける勢いを利用して胃の辺りを狙って肘を撃つ
向こうの体重とこちらの打ち上げる勢いでただ打ち込むより威力が上がり、俺に切りつけた奴・・山賊Cとでもするか、そいつは腹を抑えてのた打ち回っている
あわよくば鳩尾にでも当たってくれればと思ったが、さすがに偶然でもそれは無理だったようだ
俺はそのまま一番近い山賊に向かって、鞘をつけたままエクスカリバーを叩きつける
咄嗟の攻撃を避けようと体制を崩したのをの見逃さず、そのまま踏み込んで革鎧の無い部分に向け、鞘のまま突き出す
鞘付とは言え鋭い棒で撃ち抜かれたようなもの、まさかの攻撃に山賊D(仮)は蹲る
「てめぇっ!」
一番の実力者と見えた山賊Aは直ぐに気を取り直して俺に向かって直剣を構え、残りの山賊は馬車を襲いに向かった
馬車の後ろの山賊Bよりはこちらから向かった山賊Eの方が近い
俺は山賊Eに向けて着火を最低威力で放つと、山賊Aの剣をエクスカリバーを抜いて受けた
山賊Aと切り結び、動きが止まった所で茂みから矢が飛んできて、俺の肩に刺さった
「うっ!」
いくら不死でも痛みはあるので剣を受ける力が削がれ、こちらの方に体勢が傾く
こちらに傾いたのを利用して、相手の足元に向けて水生成を放ち、足を滑らせる
まさかの攻撃に踏ん張りが利かなくなった山賊Aは無様に地べたに倒れこむ
そこにすかさずエクスカリバーで右腕を切りつけ、山賊Aを無力化した
「そこかっ!」
矢が撃ちだされた辺りに着火で散発的に火を付ける
生きた茂みなので燃え広がりはしないが、盛大に発生する煙に燻され伏兵が溜まらず出てくる
そこにすかさず石矢を打ち込んで弓を封じると、俺は倒れこんでいる山賊C・Dを無視して山賊Eに向かった
「ぎゃあぁぁぁっ!!!」
叫び声が聞こえたので馬車の方を見ると、頭に付いた火を懸命に消そうともがく山賊Bがどんどん馬車から離れていくところだった
念の為鑑定してみるとオーラの色は赤・・どんだけ力込めたんだあれ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます