名付け

 個人的に気になるのは名付けのルールだ

 こんな名前は駄目だとか、こんな名前だとこんな意味になるとか


 ナズナもそうだが、この家にはセリさんという奴隷も居る

 居てもおかしくは無いが、他の人の名前とはやはり違う印象を受けるのは日本人ならではということか?


 セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ

 春の七草ってこれだったか?

 こんな名前を付けていいならサクっと良さそうなのを付けるんだが


「お前の名前の「ナズナ」とか、「セリ」さんとか他の人と響が違うよな、何か理由があるのか?」

「そうですか・・・私とセリさんでは生まれが違いますので関連があるかは知りませんが、別に珍しい名前ではありませんよ」

「そうなのか」

「ええ、昔の勇者が連れていた従者の名前で「セリ」「ナズナ」「スズナ」「スズシロ」「ゴギョウ」「ハコベラ」「ホトケ」「ノザ」の8人居たそうで、女の子には「セリ」から「スズシロ」までが、男の子には「ゴギョウ」から「ノザ」までが付けられることが多いんです」


 おーい、ちょっとまてーーっ!

 ホントに春の七草が由来じゃねぇか、考えるのに疲れたのか?勇者

 順番が若干違うのは、多分名付け順では本来の順番だったのが、女性と男性で分けて覚えられてるんだな

 「ホトケノザ」が前後で分かれているのも何か理由はありそうだが気にしたら負けだ


「そうか、じゃああの子は「スズシロ」とでもするかな?」

「スズシロ・・ですか?」


 全体的に毛色も白いし肌も白い、足もウサギ獣人の為か腿が太いのでスズシロ(大根)って感じだ


「スズシロは大体の場合スズナと併せて双子の姉妹に付けられることの多い名前ですが?」

「何でだろう、音かな?」

「そうかもしれませんが、主な理由は勇者が名付けた二人が姉妹だったからというのがあります」


 じゃあ、「ホトケ」「ノザ」の二人も兄弟だったんかね?

 まぁ、それで姉妹が居ることを前提に応対されるのもウザいしな、なら・・


「それじゃ「シロ」にするか、ペットっぽいが仕方ない」

「獣人の奴隷をペットのように扱うのは珍しいことではありませんし、よろしいのでは?」


 ナズナのお墨付きを貰った、これでいいか


「初対面の人に獣人の小さな女の子をペットのように扱う外道だと思われるのはご主人様ですから問題はないでしょう」


 気にしたら負けかな・・と思っておこう







 ナズナに聞いた勇者の話だと、勇者はその昔、戦で荒れ果てた村に突然現れたのだという

 そこには8人の孤児と荒れ果てた畑、大人だけで生活するのがやっとの備蓄食料と畑を再建するには少なすぎる人手が居た

 多少の食料は国から出してもらえると言っても、今居る孤児を食わせるほどではない

 孤児は必然的に、口減らしに捨てられるか売られるか、しかしこの状況ではこんな田舎に奴隷商も来ない

 孤児たちはショックで名前も覚えていないほど心が壊され、労働力としても期待できなかったという


 勇者は孤児たちを連れて余裕のある街へ移動すると言い、彼らを預かり、名前が無いと不便だと思い名前を付けていった

 次の街までの移動中、何度も野生動物に襲われたが、勇者は難なく倒していき、襲撃者は食料となって孤児たちの腹を満たした


 次の街、次の街・・街を渡り歩いても彼らを預かってくれるような孤児院はなく、彼らを奴隷として買いたがる奴隷商は後を絶たなかった

 渡り歩く中、彼らの栄養状態は改善され、拾った棍棒で援護が出来る様にまでなり、どんどんレベルが上がりいつの日か、街の近くに着くと毎度現れるようになった山賊を返り討ちにし、犯罪奴隷として奴隷商に売るような毎日が続いていった

 王都に辿り着いた頃には、孤児たちは上級職に就くまでになっていたのだという


 王都に着いた勇者と孤児たちは、偶然門の前に居合わせたモンスターの大群を撃退したらしく、その事で王城に呼ばれることになったそうだ

 時の国王は、勇者たちに褒美を取らせようというので、勇者は孤児たちの仕事先の斡旋を国王に頼んだのだが、孤児たちはこれを固辞し、勇者と共に旅を続けることを宣言したのだという

 これを機に孤児たちは従者となり、戦争で荒れた村々から孤児を引き取り育て、いつの間にか一軍を編成できるまでになったのだとか


 いや、ちょっと待て

 最初の孤児はまあいい、12歳程度の子供が15歳になったとすれば十分戦力だ

 問題はその後・・一体何年孤児を集めて放浪してたんだこの勇者は






 翌日、山賊の生き残りは騎士団の陣地送りとなり、俺は街の騎士団に引取りなどの要請をする為の書状を預かった

 その護衛として、俺は村を出ることになった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る