魔術師_01

 翌朝、俺は一人で迷宮に出ることにした

 迷宮までの道筋は判っているし、念の為ボーナススキル「暗視」を入手した


 「暗視」は3段階のスキルだった

 「夜目」「猫目」「暗視」に分かれていて、「暗視」を取るのに6ポイントも使った

 何故「暗視」まで取ったかといえば、こんな夜明け前に動くこともあるが迷宮の中の明るさがわからないのもある

 とりあえず「暗視」で様子を見て、余裕そうなら「猫目」「夜目」と段階を踏んで下げていくつもりだ


 目的地はオオウサギの方の迷宮

 理由はと言えば、オオアゲハの方は今騎士団が掃討作戦を図っているからということだ

 もし俺がこの世界で生計を立てるならば、迷宮でレベルを上げて傭兵として暮らしたり、冒険者になるべきだ

 ならば今の内に迷宮を知る必要がある


 今の俺は「戦士」を育て「騎士」を出したり、「魔術師」を育てる必要がある

 つまり多少は無理をする・・ということだ

 ここにナズナを連れてくる訳にはいかない


 「こんなところでどうしましたか?ご主人様」

 「!!」


 え?ちょっと待って

 え~っと・・・時間的に今4時過ぎくらいだよな?

 まだ空に青みすら見えないこんな時間になんで


 「なんでこんな時間に・・・という感じですが、それはこちらのセリフです。下働きは今の内に水を汲むんですよ?なんでご主人様のような人がこんな時間に表に居るんですか」

 「いや、ちょっと迷宮の中に入ってみようかと」

 「そうですか?では私も準備を」

 「いや、ナズナは残っててくれ昼過ぎても戻ってこないようならアルベルトさんに言って所有権を移動して貰っていい」

 「そうですか?まあ、私の仕事でないというならいいんですけど」

 「もしかすると着いて行かないことで怒られるかもしれないが、その時はみんなでオオウサギの方の迷宮に来てくれていい。俺はそっちで自分の力を試してくる」

 「わかりました、ではそのように・・・お食事はいかが致しましょう?何かお持ちになりますか?」

 「じゃあ昨夜のパンの残りに干し肉でもあれば」

 「では少々お待ちください」


 しばらく待って弁当を持たせて貰い、俺は改めて迷宮に向かうことにした

 ん?そういえばナズナが積極的に迷宮に行こうとしていたような・・・気のせいか?

 気のせいだよな、多分自分の職務に忠実な人間だってことだろう

 自分の命にかかわるような事なのに関心なことだ


 迷宮に着いたのは、空が日に照らされ青みがかってきた頃合いだった

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