貨幣価値_02

 夕方、MPが回復したのか目が覚めた

 とりあえずリセットして「威力強化(魔)」を外す

「知力上昇」も外しておこう


”ボーナス:28”


 31になってたはずのところをレベルが3つ下がったからこれでいいはず

 取りこぼしはないな


 しかしボーナス28か・・・俺のコンプレックス解消しても十分余りそうだな

 されど28・・・使いきっては後で困る


 今の段階からまた経験値関係をMAXにしたとすると20以上必要になる

 それを考えれば、用心に越したことはないだろう

 もしこのまま魔法で戦闘するとしたら知力上昇はほしいし、「戦士」で行くなら筋力上昇がほしい

 他の職業も試してみたいし、「戦士」ももうすぐ上級職が見えてくる

 そうなると職業欄も増やしたいが、職業欄追加は他の累進型ボーナスの倍だ


 まあ、「リフレクション」や「不死」を取ることはないかもしれないが、復活くらいは取ることはあるかもしれない

 そういえばこの世界のレベル上限はいくつなんだろう?

 99ならまだしも50辺りが上限だとボーナスのやりくりが大変になる・・・それこそコンプレックスになんて振る余裕はないだろう


 そんな事を考えていると、ノックが聞こえてきた


「ご主人様、母屋においでいただけますか?」


 母屋・・・アルベルトさんかルードリッヒさんの呼び出しだろうか?

 そうだな、オオアゲハを単独撃破もできるようになったし、騎士団も来たし村の連中のレベリングも終わった

 そろそろこの村を離れる頃合いなのかもしれない


 母屋に行くとアルベルトさんとルードリッヒさん、そして見知らぬ壮年の男性が居た


「おお、ユウヤ殿。よく来てくれた」

「呼びつけて申し訳ありません、こちらの方がオオアゲハ退治についてお話を聞きたいとのことでして」


 紹介された男性は軽く会釈をして


「ノーソンと言います。騎士団より新しい迷宮の調査、掃討の命を受け、部隊を率いてきました」

「これはどうも、私はユウヤと言います。放浪の末この村に辿り着いた者です」


 お互いに紹介を済ませる


「この度はオオアゲハを退治なされたそうで・・・一体どのような手段で?」


 これはアレだ・・・鱗粉による状態異常はどうだったのかという話だな?

 まあ、俺はそのままでも問題はなかったんだが・・・


「着火の指輪を使って苦し紛れの遠距離攻撃でどうにか・・・苦労しました」

「・・・・・・着火の指輪で・・ですか?」


 なにかおかしなことを言ったろうか?


「どうやらユウヤ殿は非常に知力が高いようですな。着火の指輪は魔力の変換効率が悪いため小さな火球しか作れなかったはず」


 やらかしたーーー!!


「それはアレですよ・・・火事場のなんとやらという。極限状態では常識外の力が出るものです」

「そんなものでしょうか・・・?」

「そうに違いないですよ、そもそも私は今まで着火の指輪すら使ったことのない魔法初心者ですから」

「魔法初心者なら尚更・・・」

「いや、恐らく何かおかしな偶然が重なったに違いありません!!」

「・・・・・・そうでしょうか?」


 今ひとつ腑に落ちないようだ


 そりゃそうか、Lv10の倍の威力の上に元になる知力は標準+50だ

 大天才でも指輪の仕様の内では出し得ない威力なわけだからな

 だが別に一撃で倒したわけじゃない、ある程度の量のMPがあれば再現できなくはない・・・はずだ


「まあ、とにかくあまりにMPを使い過ぎてさっきまでダウンしていたくらいです・・・もしかすると本当に何か自分の命に関係する部分でとんでもないことが起きたかもしれません」


 そう言うと、なんとか納得してくれたようだ


「なるほど、しかし助かりました。もしオオアゲハが相手だったなら、我が部隊でも無事では済みませんでしたから」

「そうですか」

「まぁ、念の為我らには火矢の指輪を持っているものが何人か居ますからそれでどうにかするつもりでしたが」


 ・・・そりゃそうか、着火の指輪はあくまでナズナの所持品だっただけで、普通に「魔術師」になろうと思ったらそういう実用的な魔道具使うよな


「そう言った魔道具はいくらくらいで手に入るのでしょうか?」

「そうですね・・・使える魔法にもよりますが、着火の指輪で金貨1枚と言ったところでしょうか」

「火矢の指輪だと?」

「これは流通に乗る事が無いので値段などは・・・知人に魔道具師がいれば金貨10枚ほどで出来るかどうかですかね」


 出来るかどうか?

 つまり金貨10枚と言うのは材料費と言うことか


「それは・・・大金ですね」

「ええ、しかもMP効率が悪いのでそう連発も出来ません」

「効率が悪い?」

「魔道具は本来詠唱や魔術師の熟練度によって使えるようになる魔法を道具を解して強引に発動するものです、MPも一度道具を介す分効率が悪いのです」


 なるほど、例えば着火の魔法とか本来Lv1で10Pも使うなどありえないんだろう

 何しろ生活魔法だからな

 そしてLv10などと言うのも熟練度を数値化した物で、強引に再現しているんだろう

 だったらどうしてもロスなどが大きくなるはずだ


「では奥の手と言う事になりますか」

「ええ、それでも熟練者でなくては使い物にならない槍や弓よりは使い物になるので、騎士団では備品として用意しているわけです」


 金貨10枚を備品で揃えられるとか凄いな

 っていうか、俺未だに貨幣価値知らないわ

 金貨ってくらいだから凄いんだろうけど、俺の居た世界の金貨ってせいぜい10万だからなぁ


 とにかく事情聴取も終わり、俺は離れに戻るとナズナに貨幣価値について聞いてみた

 ナズナが言うには、この国での基本通貨は三種類あると言う


 まず一般的に使われるのが銅貨だそうで、最小単位でもあるらしい

 銅貨1枚分より安いものは切のいい枚数になるまで纏めて売られるという


 次に使われるのが銀貨で、銅貨100枚分の価値があるらしい

 主に装備や家具を買う時に使われるという


 最後に金貨で、銀貨100枚分の価値があるらしい

 奴隷など、ひと財産になる物を買う時に使われるとか


 適当に日本円に換算すると、銅貨が100円銀貨が1万、金貨が100万か

 確かにひと財産だ

 ナズナ一人だと一体いくらになるんだ?


 この村での居住権と家だからどんなに田舎だと考えても向こうの価値で500万~一千万円

 と、言うことは金貨10枚位が妥当なのか?


「奴隷って金貨何枚くらいなんだ?」


 じとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ

 なんか視線が冷たい


「いや、お前を売って豪遊とか他の奴隷を買って言うこと聞かすとかそういう事じゃなくてな、参考までに聞こうと思っただけなんだが」

「まあ、いいですけど・・・だいたい肉体労働に子供の奴隷が金貨5枚、これは将来・・・10年ほどで開放されることが条件です。男性の成人奴隷が金貨10枚、他に犯罪奴隷と言う刑罰の一種があって、これは金貨5枚で数年で開放されます」

「なるほど、男は高くても10枚、犯罪者や子供のように一定期間働き手として雇う場合は5枚で解放を条件にされるのか」

「犯罪奴隷の場合は罰なので開放されるだけですが、子供の場合は開放時に金貨1枚渡されます。これは最初の金貨5枚を含めても普通に子供を10年雇うのと比べて半額くらいになります」


 なるほど、月当たり銀貨5枚(5万円)で雇ったとして1年で60枚、10年で金貨6枚だから残り1枚を給与として渡すわけだ

 子供だから月当たり5万円でも高そうだが、奴隷だしエブリデイフルタイム以上で働くこともあるだろうからそう考えると安いか


「ちなみに成人男性を普通の労働条件で一ヶ月雇うといくら位になるんだ?」

「普通の労働条件とは?」


 そこからか


「そうだな、日が完全に登ってから日が落ちかけるまでで、月に8日以上休暇があると仮定しよう」

「ずいぶん楽な仕事ですね・・・それだと銀貨で15枚ほどです」


 向こうだとこれ以上だときついと言い出す奴が出るレベルだが・・・


「だったら犯罪奴隷を5年で開放しても元が取れる計算か」

「犯罪奴隷にそんな生温い環境で働かせる人は居ませんけどね」


 肉体労働を課せられるわけだし、寝る以外休みなしとか普通にありそうだな

 ブラック企業なんて言葉があるわけでなし・・奴隷なら普通なのか

 普通の奴隷は一生ものだし、雇いきれなくなったら売ることもあるからある程度ぬるい条件もあるかもしれないが、犯罪奴隷は期間が決まっている分死なない程度にこき使うのは十分ありえるのかも


「・・・・・・あれ?成人男性?」


 ぴくっ!


 ・・・なんかナズナが反応した気がするのでこれ以上は止めておこう

 俺も命は惜しい・・・死なないけど

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