戦士_04

 結局朝食の場で俺の発見を披露する羽目になった


「なるほど、そういう事ですか」

「ええ、まず間違いないと思います」


 大丈夫大丈夫、問題ないはずだ


「たしかに、貴族の間では初陣を熟練者のパーティーに組み込むことでレベルを上げ、派生ジョブに就いてしばらくしてから実践を積ませると聞いたことがあります」


 パワーレベリングか・・・ネトゲじゃよくあることだな

 あまりレベルが離れていると意味が無い場合が多いが、この世界はネトゲじゃないからそういった制限のは無いんだろうか?


「しかし、そういうことなら今回の一件はいい機会かもしれませんね。村の働き手をパーティに組み込めば数匹倒すだけで派生ジョブに就けるでしょう」

「ですね、派生ジョブに就かないにしても「農夫」としてLv10もあれば十分戦闘ができるはずです」

「それでは今日の探索、よろしくお願いします」

「わかりました」


 食事を終えると表に出る

 既に村人の中で探索と言う名の修行と言う名のパワーレベリングに出るメンバーが揃っていた


 みんなそれぞれ農夫Lv2~3程度の若い男ばかりだ


「パーティを組む上で理解して欲しい事がいくつかある。まず、戦闘はしばらく俺だけが行う、2匹以上現れたとしても俺が良いと言うまで手は出さないで欲しい」


 ざわつく声が聞こえるが仕方ないことだ

 なにしろLv5になってすら数人で相手にすることが多いようなモンスターをLv2とかに相手させるわけにはいかない

 俺は武器がよかったからLv1から何とか倒せたが、彼らの武器は使い古しの銅の長剣だ・・・無理がありすぎる


「次に、レベルに関してだが・・・モンスター1匹倒しただけで2レベル上がる事もあるかもしれない、だがそれは恐らく正常だ」


 またもざわつく


「どういうことですか?」


 農夫Lv3の青年が聞いてくる

 確かに理由は知りたいか


「モンスターの持つ魔素は家畜の持つ魔素の数百倍と見ていい、6人で分けても君らが虫や家畜を殺すことで得た魔素よりだいぶ多い量になるだろうという事だ」


 2から4に上がるほどあるかは分からないが、少なくとも通常の2倍だ、見つけたモンスターの数によっては今日中に全員Lv10になる事もありえる


「そして最後に・・・俺の戦い方は武器の特性を利用した特別なものだ、真似をしないように」


 これは言っておかないとな











 村を離れてしばらく歩く・・・昨日とは違う方向だ

 恐らくこちらが本来のオオウサギの方の迷宮なんだろう

 進んでいくと目の前に大型犬サイズのウサギが現れた


「オオウサギです」

「見れば分かるくらいでかいな」


 ナズナが俺にあれがモンスターである事を教えてくれる

 全体的な質量で言えばオオアゲハの幼虫などよりはるかに少ないだろうが、動きは素早そうだ

 しかし至近距離でなら、動きさえ追えれば何とか出来るほどでかい的でもある


「さっき言ったとおりに俺だけでいく、遠巻きに見て万が一自分の近くに来るまでは手を出そうとしないように」

「はい」


 ジリジリと近づく

 ルードリッヒさんの話ではオオウサギの間合いは狭いらしい

 仮に体当たりに出るとしても1mくらいまで近づかなければ大丈夫だろう・・・が、油断は命取りだ

 「絶対回避」は初手のみに有効

 カウンターの準備も無しに回避をしてもそれは無駄に消費しただけになる


 毎度のことだがエクスカリバーを正眼に・・・「一刀両断」を念じる


 力が溜まるのが自分でも分かる

 腰を溜め、オオウサギを見据える

 オオウサギが間合いを詰めてきたのでじっと待つ

 カウンター狙いと言うわけでは無い・・・スキルの予備動作の関係で動けないのだ

 失敗したかもしれない、これは他に前衛が居て初めて使えるスキルだ

 数人で囲むことが常識のこの世界ならともかく、今は俺だけが攻撃するシフトだ


 攻撃を防ぐ手立てが無い


 オオウサギが1mまで近づく・・・奴の足に力が溜まるのが見て取れる・・刹那

 俺の溜めが終わった


 踏み込みながらエクスカリバーを上段に振り上げ、一気に振り下ろす

 体重もかかったその一撃を受け、溜まらずオオウサギは煙になった


 俺は全員を見回すと、全員レベルが2つ上がっていた・・・確実にオーバーフローがおきている

 俺のレベルはと言えば・・・


 ユウヤ・ハマナカ 自由人

 旅人Lv9 決死兵Lv7 戦士Lv5


 ・・・まだオーバーフローしてるんかい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る