魔道具_01

 村の農夫たちを連れ立って探索を開始して4日、村人たちは順調にレベルも上がった

 基本ジョブとは言え男女関係なくLv15になっている


 結局オーバーフローはその後Lv10まで続き、Lv9から11になる程は無かったようだ

 俺か?

 俺は結局Lv13までオーバーフローしていた、14からは1レベルずつ上がってたまに余り分と合わせて一気に上がる程度だ

 まあ、4日間のパワーレべリングの結果


 ユウヤ・ハマナカ 自由人

 旅人Lv31 決死兵Lv29 戦士Lv28


 こんな感じになったんだが


 うん、盛大に突っ込まれた・・ナズナに

 そんなナズナはどうなったかと言えば


 ナズナ 奴隷

 村人Lv20


 一人だけずっと一緒だったんでやたらレベルが上がってる


 ナズナには経験値3割引が効いていないのでその分低めだが、それでも既に村内で彼女に勝てるのは俺だけだ


「ご主人様、何こっち見てるんですか?」

「いや、かわいいなと」

「お世辞言ってピーマンは抜きませんよ?」


 彼女の中の勝手な思い込みで、俺はピーマン嫌いと言う事になっている

 恐らくこっちに来て最初にピーマンを食べたときに顔を顰めたからだろう


 何の事は無い、単に向こうのピーマンより野趣溢れる味で面食らっただけだ

 具体的にどうかと言うと、青臭くて苦かった

 元々食べやすく品種改良されていない上に生だったので仕方ないのだが、別に俺は嫌いではない

 むしろ酒の充てにちょうどいいくらいだ


 まあ、そんな事もあって彼女は朝夕必ずピーマンを入れてくる

 ただ、彼女の矜持として美味しくない物を作るつもりは無いようで、毎食出るピーマンは必ず火が通っていた

 ピーマンの苦味は火を通すことで甘みに変わるという

 また、青臭さも火を通すことで消える・・・普通に美味しいんだが


 いい加減彼女も派生ジョブにしたいのだがどうしたらいいのかがよく分からない

 そもそも彼女の素質が分からないんだが・・・どうすればいいんだ?


 ふと思いついて彼女の中に発生している派生ジョブのフラグが見られないかと意識しながら鑑定をしてみる


 ナズナ 奴隷

 村人Lv20 (盗賊 商人 魔術師)


 ・・・え?

「盗賊」は犯罪者だよな?一体何やらかしたんだ?

 それとなくアルベルトさんに聞いてみるか












 夕食後、アルベルトさんに時間を貰い派生ジョブの件についてとナズナについて聞いてみる

 犯罪歴等があれば分かるはずだ


「ナズナの派生ジョブですか」

「ええ、どうやればいいのかは分かりませんが特に心当たりがないのであれば任意の派生ジョブの条件をクリアさせる必要がありますし」


 アルベルトさんは何かしら考え込んだ様子だったが、しばらくすると口を開いた


「神殿で職業変更をすればなってしまうかも知れません、早めに言っておくのもいいでしょう」

「何かあるんですか?」

「彼女は以前間違って・・・・神殿の供物を食べてしまったのです。そのため「盗賊」になってしまう可能性があります」

「そんなことも犯罪扱いですか・・・」


 ずいぶんと心の狭い


「神殿に手数料を払うことで違う職業にする事は出来ますが、他の条件を満たしていないならば基本ジョブに戻るだけです」

「神殿以外で職業を変える方法はありますか?」

「伝説によれば、とある英雄が仲間のジョブを自在に変更できたと聞きます」


 しかしあくまで伝説・・・とアルベルトさんは続けた


「もしかすると他の職業の適性もあるかもしれません、派生ジョブの条件はわかりますか?」

「え?私の知識はあの本の知識だけですが?」


 当然知ってそうなものだが


「お恥ずかしいことですが、地方領主なんてものをやってても所詮出自は村人です。多少の書類を読むことは出来ても本までは」

「息子さんは読めるようなことを言っていましたが」

「息子は街まで勉強に出しましたのである程度は読めるはずです、まあ私が領主に任命されたのは息子が成人してからですから息子も村人出身になるのですが」

「そういえば、貴族は生まれる前に祝福を受けなくてはいけないんでしたか」

「ええ、孫は生まれる前から領主家の人間ということで祝福を受け、今は街で母親と暮らしています」


 地方領主の子供は、小さい内は母親とともに街で暮らすのが普通らしい

 ルードリッヒさんの息子はまだ10歳になったばかりなので、今勉強の真っ最中だそうだ


「一応わかっている条件ですと、武器でモンスターを倒したことがあると「戦士」になることが出来、神の洗礼を受けると「僧侶」に、魔法でモンスターを殺したことがあると「魔術師」になれるようです」


 ここで不思議なのが、何故Lv1だったナズナがモンスターを殺した経験があることになっているかだ

 モンスターから得られる魔素はモンスターを倒した瞬間に出る、つまりどんなに少ないダメージで倒しても倒した本人の経験値になるわけだ

 パーティを組んで分配していてさえLv1をオーバーフローさせる程の魔素を持つモンスターを倒しているのにレベルが上がっていないのはおかしい

 村人として認定されるまでに内包した経験値はLv2の手前で止まるということなんだろうか?


「あと、商取引をすると「商人」になるとされていますが・・・」


 この「商取引」というのもよくわからない

 どの規模の取引ならいいんだろう?

 というか、まだ商人になっていないのに大きな規模の取引ができるとも思えないんだが


「ならば「商人」になる可能性もありますね、ナズナは行商の商人に自分の作った民芸品を幾つか売っていましたから」

「ほう・・・」


 「商人に売った」からなのか「いくつか纏めて売った」からなのか・・・恐らく「商取引」というからには纏めて売ることがポイントなんだろう

 これで「商人」の理由も分かった、あとは「魔術師」か

 ここからはナズナ本人に聞く必要があるな

 そもそも魔術師でもないのに「魔法でモンスターを倒す」ってなんだよ

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