魔道具_02
「魔法でモンスターを倒したことですか?」
「ああ、そういう経験はないか?」
まあ、無いとは思うけど
あの後自室に戻ると、それとなくナズナに聞いてみた
「ありますよ」
あるんだ
「どうやって・・・というか、それでなんでLv1だったんだろう?」
全く以て謎である
「迷宮の外では、たまに迷宮ではなくモンスターが産んだモンスターが出ることがあるんです」
「そんなものが」
「そのモンスターは非常に魔素が少なく、1日と絶たずに消えてしまうんですが・・・それを魔道具で倒すという遊びが草原族で流行っていたことがあるんです」
「魔道具?」
そういえば「魔道具師」とかいう上級ジョブがあったな
「これです。非常に弱い火の玉を出すことが出来て、焚付なんかに使います」
そう言うと、ナズナはいつも身につけている指輪を見せた
その指輪は俺が手に取ると人間サイズになった
これが魔道具っていうものなのか?
「指輪などはその人物に合うようにサイズの変わる魔法がかかっています、滑り止めの魔法もかかっているので、本人が意識しない限り激しく動いても外れません」
「逆に、付けたままどんなに太ったりむくんでも外せるという認識でいいのか?」
「そう言った認識で間違ってはいません、同様に成長期にずっと着けておくなどということも可能です」
なるほど・・・ちょっと鑑定してみよう
着火の指輪
着火の魔法を打ち出すことができる
炎の威力は知力依存、レベル指定でMPを注ぎこむほど威力が上がる
えっと・・・本当に生活道具の域を出ないな
これどこかで手に入らないかな~?
「欲しければ差し上げますよ?」
「え?」
顔に出てたか?
「それは以前奴隷になる前に入手したものですが、ご主人様が欲しいというのであれば奴隷が拒否できるわけもありませんし」
「重い重いっ! 確かに使ってみたいとは思うけどどうしても欲しい訳じゃないから!!」
「そうですか、それは良かった」
どうもナズナには手の上で踊らされてる感が半端ないな
翌日、自警団を連れ立ってオオアゲハの幼虫の居る迷宮を目指す
そろそろ幼虫の数が洒落にならなくなる頃合いだ
自警団の平均レベルは15、農夫でもこのレベルが6人でパーティを組んでいれば幼虫の攻撃1回位なら耐えられるだろう
囲んでしまえば犠牲者が出る前に倒せないこともないはずだ
一応万が一を考えて危ないと思ったら即座に逃げるようにも言ってある
「居ますね」
森に入ると、早速二匹の幼虫を発見した
二匹は早速こちらに気付いたようで、揃って向かってくる
「1匹は俺が相手する、もう1匹の方を頼む」
そう言って幼虫に向かう
最近ではコツも身について、カウンターではなく触手を払って踏み込み切り等と言う芸当も出来るようになった
レベルも上がっているし、エクスカリバーの能力もあり、ただの踏み込み切りでも一撃で倒せるようになっていた
「こちらも終わりました」
村人たちのパーティも危なげなく終わったようだ
二人が正面で攻撃をいなし、四人が背後から襲う・・・オオウサギで培った連携だが、無事オオアゲハの幼虫にも通用したようだ
しばらく進むと前に見たのと同様に、迷宮の入り口が口を開けていた
よほど獲物が来ないのか、以前よりもハイペースで幼虫を吐き出しているようだった
進みながらエンカウントとほぼ同時に煙と消える幼虫たち・・・もう騎士団要らないんじゃないかと言う話は内緒だ
生き残りの幼虫が居ないか、辺りを捜索する
オオアゲハの幼虫の厄介なところは成虫に進化すると言うこと、長い事放置するのは危険だ
「お~い、こっちに居たぞ~!」
声に導かれ現場に行くと、そこには少々様子のおかしな幼虫の姿があった
「共・・食い?」
1匹の幼虫が、仲間であるはずの幼虫の横腹に食いついていた
念のため鑑定をしてみる
オオアゲハの幼虫 Lv1
オオアゲハの幼虫EX Lv1
・・・EX?
食いついている方の幼虫にはEXとついていた・・何が違うのかと思うと、どうやら触手の他に顎があった様だ
オオアゲハの幼虫は本来体液を啜る、その為の穴を開ける役割をするのが触手だ
だがこのEX固体は明らかに噛み付いて食い破っている
それ以上に不思議なのが、絶命をしていない所為か煙になって居ないもう一つの固体だ・・・オーラは赤いが点滅はしていない
危険極まりないと判断し、距離を取って観察する事にした
3パーティの内一つを村への報告に充てる
しばらくすると動きがあった
EX固体に食いつかれていた固体は煙になること無く、不思議と何か肉塊のような物になった
EX固体がそれを食い尽くすと、体全体から糸が噴出した・・・
繭だ
オオアゲハなのに繭かよ!!
心の中の突っ込みを意に介さないその繭は、瞬く間に次の段階へと移った
大きな亀裂が生まれたかと思うと、中から畳まれた翅が出てきて、数秒で広げ終え・・次の瞬間
光と共に、その場にオオアゲハが誕生した
オオアゲハLv1
生まれた成虫にはEXはついて居なかった
それはまあ置いといて
でかい
ひたすらでかい
幼虫も体高1m体長3mほどだったが、成虫は縦横に2mほどあった
その殆どが翅とは言ってもでかい
翅の形状は確かにアゲハのそれだった
移動範囲も聞いていた通り狭い・・が
基本的に2mの位置に居るため、攻撃を当てるには相手が降りてきた時しかない
「逃げろ!リンプンの毒にかかると死ぬぞ!!」
厳密に言うと直ちに死ぬわけではないが、薬を持ってきていないなら同じことだ
それにしてもこいつと俺とでは相性が悪い
いくら俺に状態異常が効かないとは言っても俺の身長は145cmだ
腕を振り上げても160cm程度、そこからエクスカリバーの刀身が70cmほどだから最も高いところで2.3m
切りつけようと思ってもダメージを与えようと思ったら奴が下に降りてきたタイミングを狙うしか無い
昔あったなー、こういうゲーム
ダメージを与えるために敵の攻撃のタイミングで滑空する敵を迎撃しなきゃいけないけど、地面に居ると滑空してきた相手の体当たりを食らうので、攻撃直後にジャンプしないといけないという
しかしこれはリアルだし、攻撃しようにも投擲武器とか無いし
飛び道具・・何か飛び道具は・・・・・・っ!
「ナズナっ!アレ貸してくれ」
「アレってなんですか?」
「着火の指輪だ、アレにありったけMPをぶち込んでぶつけてみる」
「いいですけど、やり過ぎると死にたくなるほどメンタル弱くなるので気をつけてくださいね?」
え?何、MPってそういう仕様なの?
いや、そうか
なんとなくMPを「マジックパワー」とか訳してたけど「メンタルポイント」という解釈もあるのか
HPが「ヒットポイント」で生命力なのだから「メンタルポイント」が消えたら同じように生命活動に支障をきたす可能性があるわけだ
とにかくナズナから着火の指輪を借りてボーナス振り分けをイメージする
”ボーナス:30”
パワーレベリング開始以降いじってないからだいぶ溜まってる
今回はリセット無しだ、とりあえず知力上昇にチェックを入れる
”知力+50:知力補正+50ポイント”
”ボーナス:15”
これで大分威力が上がる
そう思っていると、新しい項目が増えていた
”威力強化(魔):魔法系スキルの威力を上げる”
これは・・・
”ボーナス:5”
10ポイントは痛いがどうせリセットで戻る、今はここにかけるしかない!!
スキル選択・・・着火
着火 スキルレベル選択 1~10 使用MP スキルレベル×10
スキルレベル10・・・発動
目標設定・・・オオアゲハ
行けっ!!
そう念じると共に、俺に指先から火線が迸り、オオアゲハに辿り着いたと同時に直径1mの大きな火球が発生し、オオアゲハの胸を包み込む
オオアゲハは翅こそ大きいが、その本体は50cm程の大きさしか無い
それをはるかに上回る範囲を一気に炎に包まれ、オオアゲハは一気にダメージを受けたようだ
しかし俺の方もただでは済んでいない
たったMPを100Pしか使っていないはずが何やらごっそり抜けていったような気がする
ちょっとダウナー気味の思考に入っている辺り、半分以上MPを持って行かれたようだ
「ご主人様!一体何やらかしたんですか?」
「え・・何って?最大威力でぶち込んだだけだぞ?」
「そんなわけないじゃないですか、あれ大人がLV10で撃ったってカボチャくらいの大きさの火の玉にしかならないんですよ?」
カボチャ・・・大きさにもよるが来れは普通に食卓に上がるサイズか、だとすると直径で20cm程度だ
「一体どれだけMPつぎ込んだらあんなのが出来上がるんですか・・・」
「さ・・さあ?火事場のなんとやらじゃないか?」
知力+50程度であそこまで威力が上がるはずもないから威力強化の仕業か?
・・・まてよ?そういえばあいつが設定したスキルがただ便利なスキルのはずがないな
とりあえず「威力強化(魔)」の説明をよく見てみる
”威力強化(魔):魔法系スキルの威力を倍にする代わりに使用MPを3倍にする”
・・・・・・取得しないとわからないトラップかよ!!
俺みたいに確認グセつけないと知らない内にMP切れで自殺してそうだな
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