迷宮_03

 村を出ると、俺達は一路森の方へ向かった

 その森は昨日オオアゲハの幼虫が飛び出してきた・・・


「おもいっきり不意打ち食らいそうなところだな」

「オオアゲハの幼虫を吐き出した迷宮はまだ未確認ですからね、位置的におそらくこちらではないかと」

「まずレベル上げからじゃね!?」


 ナズナは意外とスパルタだった

 もしかすると子供扱いされたことを根に持ってるかもしれない


 しばらくするとポッカリと穴の開いた場所があった

 近くにオオアゲハの幼虫が・・・ってもしかして


「これか?迷宮って」

「はい、何もない空間に穴が開くんです。一・二匹が出るくらいならあそこまで大きな穴は開かないのですが、どうやら完全に開いているようですね」

「そこまで極端には大きくないな・・・せいぜいオオアゲハの幼虫が出られるくらいか」


 直径は120cmくらいだろう

 人間が通り抜けるには若干小さな穴だ


「あそこまで大きくなると人間も入れます。むしろあの穴はそこを通るものの大きさに比例して大きくなるので、オオアゲハの幼虫しか出てこない以上、あれより自然には大きくなりません」

「なるほど・・・中に入ったことで穴が大きくなって余計溢れ出すということは?」

「ありません。不思議なことに、中で人が死ぬと自然におとなしくなります」


 をひ?


「え・・と?つまり俺に死んで来いと?」

「まぁ、それがベストでしょうがそうも言ってられません。既に外に出ているオオアゲハの幼虫も駆除する必要がありますし、一人くらいの死体では最活性も時間の問題です」


 待てこら

 要するに、あれを大人しくさせるためには人の死体が必要で、俺一人入ったくらいじゃどうしようもないと


「冗談はここまでにして。迷宮というのはモンスターを生み出しますが、あれは膿の様な物だと言われています」

「膿?」

「はい、迷宮内に溜まった魔素が吐き出される際に、その階層に合ったモンスターという形で出てくるとされています」

「それが、この迷宮の場合はオオアゲハの幼虫だったと」

「あくまでオオアゲハの幼虫は第一階層のモンスターです」

「ほう」


 まあ、階層によってモンスターって変わるもんだよな


「モンスターは深い階に行くほど少なくなり、一定数以上は増えないそうです。しかし第一階層だけはその限りではないようです」

「つまり、深い階層を充実させたあとに余った魔素が第一階層のモンスターになるわけか」

「簡単に言うとそうなります、ただ文献によると迷宮は魔素を自身の成長のためにも使うのですが、その際に使うのは自身の中にたまった魔素ではなく、外部の魔素なのだそうです」


 なるほど、自分の排泄物を食べても栄養にはならないが、外部から来たものを取り込めば栄養になる

 栄養を取り込むための餌として第一階層のモンスターを吐き出すとも言えるわけか


「全階層のモンスターを倒しきると、迷宮は自身を維持できなくなり死ぬと言われています」

「外からの栄養も体内の体液も無くせばそりゃ生きてはいけないか」

「そういうことです。とりあえず迷宮が出来たら騎士団を呼ぶことになっていますので、ここまでの道筋に標(しるべ)を立てていきましょう」


 その前に・・・


「まずは何匹か掃除していかないとな」

「できますか?」

「無理そうだったら見捨てて逃げていいから」


 森に入って割りとすぐだった

 彼女一人で逃げても途中で襲われることはそうはないだろう


 昨日と同じようにエクスカリバーを正眼に構える

 今回は間合いが広い・・・奴の間合いに入る前に仕掛ける


 間合いが2mを切りかけたその瞬間、一気に踏み込む

 触手が撃ちだされたのを確認して素早くずらす・・・横を抜ける瞬間すれ違いざまに一太刀入れた


「絶対回避」


 昨夜これ以上はいいかと思ったところで見つけたボーナススキルだ

 俺が最初に設定を指定た時には見かけなかったから、おそらくこちらに来てから追加された・・・開放されたと見るべきだろうか?

 効果は最初の一撃だけ、確実に避けるというスキルだ

 こいつと「決死兵」のカウンター成功率上昇は非常に相性がいい

 もしかすると、「決死兵」を獲得したことで開放されたのかもしれないな


 さっきのカウンターでオオアゲハの幼虫のHPは一気に減った

 しかし瀕死ではない

 昨日今のタイミングで放ったカウンターでは黄色になった、今回は赤だ

 普通に考えれば、威力が1.5倍から2倍になったと見るべきだろう

 レベルアップの効果やジョブ2つによる効果アップなども考えられるが、一番大きなのが「決死兵」のジョブなんじゃないだろうか?

 あの本にはなかったが、おそらく「決死兵」のジョブにはカウンターの威力を上げるような効果があるんだと思う

 そう考えれば、たった2レベル程度でここまで威力が上がった理由にもなる


 しかし2撃目は油断できない・・・慎重に

 間合いに入った直後、オオアゲハの幼虫が体当たりを仕掛けてきた


 相手の勢いを利用して避けながら横薙ぎに一閃

 オーラが点滅する間もなく煙になった


 次は一番近くのあれか


 その前にレベルを確認・・・

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