迷宮_02
翌朝、俺はナズナの所有者になった
所有権の移動は領主によって行われる・・・人事権というやつだ
これでナズナは俺のものだ
この世界、奴隷を従順にするためにいくつかの制限がある
まず奴隷の主人が死んだ場合、数日の内に新しい主人を得られないと死んでしまう
これは奴隷が主人を殺して自由にならないための制約であり、一週間という猶予があるのは主人に蘇生の術を施す意志があった場合のためだ
この世界の蘇生にはいろいろな手段がある
まず「教皇」によって執り行われる儀式
次に霊薬の力によるもの
聖地での奇跡を願う等
聖地ではないが迷宮にもそう言った場所があるのだという
いわゆるパワースポットというやつだろう
この世界では「魔素」という命の根源がある
その命の根源がモンスターをも生み出すのが迷宮という物らしい
普通は死体を持ち込むと迷宮が吸収してしまうのだが、迷宮の中には魔素が集まる場所があり、死んで日が経たない場合なら生き返ることがあるらしい
しかし、もし死んで時間が経ちすぎると・・・一見生き返ったように見えるが人を襲うのだという
・・・それってゾンビじゃね?
要するに、魂が留まっていないと魔素が体を操ってしまうんだろう
もしかすると体内に肉体を操るモンスターが生まれるのかもしれない
それはまあ置いといて
迷宮に行くに当たり、ナズナと取り決めをする
「いいか?君は俺のサポートをすることになっているが、決して俺を守らなくていい。俺は死にそうになってもそうは死なない」
「そう・・・なんですか?」
「ああ、少なくとも君よりは頑丈だ。君がいくつかは知らないが、君みたいな小さな子を死なせてまで生き延びるつもりは毛頭ない」
決まった・・かな?
「失礼な!私はこれでも18歳です!!」
え?
「えっと・・・ずいぶん若く見えるけど」
「私は草原族です。背丈はたしかに小さいですが、見た目ほど若くはありません!!」
身長130cmくらいなんだけど・・・そうか、ホビットとかそういう類だったか
「ご主人様こそ炭坑族にしては腕が細いように見えますが。それに根無し草の炭坑族なんて聞いたことありません」
炭坑族・・・ドワーフか
確かにこの身長と肥満体型を見ればそう見えなくもないか・・・
「俺は人間だよ、だから君が人間だと思ったんだ」
「・・・ご主人様は記憶喪失なのでは?」
「あれは方便だよ。だがこの世界でどこの誰だかわかってないような人間でもある」
「どういう事ですか?」
「簡単に言うとな、俺はここに来た経緯などは一切わかってない。だから記憶喪失というのもある意味では正解だ」
「はあ・・・」
「だがここに来るまでのことは割と鮮明に覚えている、俺はこことは全くと言っていいほど異なる所からここに来たという記憶があるというべきだろう」
「ずいぶん難しい話ですね」
まあ、異世界とかそういうところを端折ってるからな
「俺は君たちの知っていることは知らない、だが俺の記憶に草原族や炭坑族は出てこないし、少なくとも俺の両親は普通の身長の人間だった」
「この世の中にはそんな国もあるのですか」
まあ、そういうことです
「しかし君は奴隷という身分の割にはずいぶんと頭が良さそうだな・・・何か理由があるのか?」
「私は元々草原族でも良いところの育ちでした。人間族の開拓で住処を追われ、逃れたところを奴隷に落とされたのです」
身の証を立てるとかは無理なのか
この国の司法や戸籍がどうなっているかは分からないが
「そんな簡単に奴隷になるのか?」
「ええ、人間族の言うところの亜人は基本的に勝手に住んでいます。戸籍が無いため税金の義務がありません、が、捕まると国民として戸籍を与えられ、税金が払えなければ奴隷になるのです」
なにそれ?俺も税金払えないと奴隷になるの?
「自由人は・・・どうなるんだ?」
「自由人に戸籍はありません。街に住むなら宿代に税金が含まれます」
つまり、住居や宿を得る際に税金も支払うと
「私はこの近くで開拓があった時に奴隷とされ、街に売られるところを領主であるところの旦那様に拾われました。セリさんはその時から私の世話をしてくれた恩人です」
「そうか」
「恩人二人の命の恩人です、お世話をすること自体はやぶさかではありませんが、着いて行くとなると話は別なのです、昨夜の無礼はご容赦いただけませんでしょうか?」
つまり、「あんたが嫌なんじゃなくて旅に出るのが嫌だったんだから、勘違いしないでよね」と
ツンデレに見せて実はそうでないという奴ですね?分かります
訓練されたソリストはそんな簡単に引っかからない・・・ツンデレ口調だったらちょっと来たかもしれない
「まあ、そういうことで・・・とりあえず迷宮を探しに行くか」
「そうですね・・・ではパーティを組みましょう」
そう言うと、ナズナは不思議なカードを手渡した
「ご主人様はおそらく知らないでしょうから説明させていただきます、このカードはパーティコンフィグカードと言います」
「
「ええ、これによってパーティを設定します。魔素の分配や入隊や除隊ですね」
魔素の分配なんて概念があるのか、まあ想定はしてたけど
「魔素の分配をしますとご主人のレベルアップはその分遅くなりますがよろしいでしょうか?」
「まあ、現状オーバーフローの方が問題だし大丈夫だろ」
「え?」
あ、しまった
「大丈夫大丈夫、昨日の一件でレベルも上がったし昨日よりは楽にレベルも上げられるさ」
「途中動物を狩るのもいいでしょうね、モンスターほどではありませんが魔素を得ることができます」
なるほど、それもアリか
「じゃあ獲物が出そうな、かつモンスターから不意打ちを受けそうにない場所を探索するか」
「それでは案内します」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます