山賊_01

 「くっくっく・・下手に抵抗するんじゃねぇぞ、体が痺れてきただろう?」

 「・・・・・・」


 そうか、麻痺毒を短剣に塗っていたわけだ

 俺は無効化してるから全く気付かなかった・・・むしろ痛い割にダメージを感じないことに驚いていた


 多分総HPに対して傷が浅いんだな

 傷ももう塞がりかけている、まるでカスリ傷のようだ

 いや、いくらカスリ傷でもここまで傷浅くないだろうよ


 「へっ!いい鎧つけてるじゃねぇか。まぁ上腕部を守ってないから傷をつけるのは簡単だったようだがな」

 「・・・・・・・・・」

 「どうした、もう麻痺毒が舌まで痺れさせたのか?」


 ん~・・・状態異常にはかかってない筈なんだがなんだろう?

 妙に現実感がないというか思考回路が麻痺しているというか・・・


 もういいや

 どうにでもなれ~~~~~~


 ドスッ!「な゛っ!?」


 俺の前でウロチョロしていた山賊の背から、剣が生えていた

 いや、違うな、俺が刺したのか

 その瞬間、俺の腕の傷は一気に回復した


 「な・・なんだこいつっ!どうして動けやがるんだ!?」

 「ひぃいいいい~~~っ!」


 パニックを起こした部下が俺に向かって短剣を向け襲いかかってきた


 「バカ!やめろっ!!」

 ドッ!!「うぐぅっ・・・・」


 気怠げで乱暴な振りで払われたエクスカリバーは、飛び込んできた手下の胸に深々と刺さっていた

 これは一体・・・


 「や・・やれー!やっちまえっ!奴の剣に注意して手傷を負わせるんだ!!」

 「「へいっ!」」


 どこに隠れていたのか、長剣を持った部下二人と弓を持った部下、そして俺に傷をつけた草原族らしき部下と俺の前を塞いでいた部下の残り二人が一斉にかかってきた

 長剣を持った部下が俺めがけて振り下ろしてきたのを、俺はエクスカリバーで防ぐ

 その隙に弓矢による攻撃が俺の背を襲うが、これはラピッドメイルが防いでくれた

 しかし矢に気を取られた隙に両脇から短剣を持った部下が俺の脇腹を狙って突き刺してきた


 「ぐふっ・・・」


 堪らず空気が漏れた

 しかしそれでも俺の思考回路は元に戻る気配がない

 何かがおかしい


 「うがぁっ?」


 声の方に目を向けると、いつの間に斬ったのか、俺と切り結んでいたはずの男が手首から先を失って倒れこんでいた

 おかしい、俺は何もやっていない

 というか、体に力を入れる気にならない


 「なんだこいつ!全然殺気が無え」

 「達人にしたってあの傷で無事だと!?ありえんっ」


 声が遠い・・・いかんっ!これはやばい奴だ

 多分何かに俺が支配されかかってる

 俺が意識を強く持たないと、下手すりゃ村まで襲うことになる

 村には恩もあるし、第一山賊相手ならともかく村を襲ったとなれば今度は俺がお尋ね者だ、それは避けたい


 「死ねぇっ!」


 そんなことを考えている内に短剣を持った奴が斬りかかって来たのを袈裟斬りにする

 避けることすら億劫だとばかりに体を動かさず、剣だけで対応している


 何だ?何が原因だ?

 剣は俺がこの世界にきてからの相棒だ、なにか問題があるなら今までに何かあったはず

 なら他には?


 今日改めて入手した物といえば鎧だ・・だがこれも身につけてから数時間、何もなかった

 いや待て?確かに「鎧を着てからは」何もなかった、だが迷宮を出る直前からここまでで今までと違うことは何もなかったか?

 俺は何時から朦朧としていた?


 「クソがぁあっ!!」


 気怠い刃はまたしても山賊の一人を斬り伏せた

 しかし致命傷ではない為か恨み言を喚いているようだ


 それより考察だ

 ここに来るまででいつもと違うこと・・・そうだ、仮眠をした

 仮眠から覚めて大急ぎで村に帰る途中だった

 仮眠?まさか


 念の為ラピッドメイルを鑑定してみる


 ラピッドメイル(呪)

 高い防御力と運動性能を持つ

 装備すると瞬発力と跳躍力が2倍になる

 (注)装備したまま寝ると、鎧が呪われ自動的に近づいてきた生き物を迎撃する


 これだ!!

 この世界は本当にどこに罠が待ち受けてるかわからない

 全てを見通すはずの鑑定ですらその部分に注意して鑑定しなくては見ることの出来ない情報がある

 こいつももしかすると、呪われて初めて分かるような隠蔽があったのかもしれない


 だがそうなると厄介だ

 こいつは俺の意思で脱げるのか?でなければ行く先々で俺は人に斬りかかったり殴りかかったりすることになる


 「うあぁ~~~っ・・・」


 リーダーらしき奴と弓を持った奴以外が全て倒れたのを確認すると、俺は篭手を外すよう試みた


 カチャ・・・


 外れた

 両の篭手を外し、次は脛当てを外す・・・外れた


 そうすると、靄のかかったような思考回路が急にはっきりと物を考えられるようになってくる

 手足を支配していた気怠さも無くなり、自由に動いている実感がある

 もう一度鑑定をする


 ラピッドメイル

 高い防御力と運動性能を持つ

 装備すると瞬発力と跳躍力が2倍になる

 (注)装備したまま寝ると、鎧が呪われ自動的に近づいてきた生き物を迎撃する

    手足の護りを外すことで解呪可能


 ちっ

 正解を引き当ててから答えが出たってなんの意味もないだろう

 この鑑定という能力はやはり鵜呑みにするべきじゃないな


 単に野垂れ死ぬのと人に迷惑をかけて死ぬのとじゃぜんぜん違う

 こんな呪われて暴れ回るのは本意じゃない

 今後は呪いなどにも注意して鑑定してみることにしよう

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