プロローグ_03

 その頃、モニターの向こう側で彼の顛末を一部始終見ていた存在があった


「転生トラップにかかった奴が居たか」


 あの書き込みは、死を意識した人間にだけ見る事が出来たものだった

 死を意識し、しかし死に切れず、転生を・・・新しい人生を望んだ者の目にだけ映った

 しかしそれだけであの場に行ける訳ではない

 あの広告を三度見る事でようやく本当のページに飛ぶことが出来る

 しかしそこからも更に試練は続く

 精神的に追い込むような自分の欠点を使った追加ボーナス

 一見するとラッキーに見えるが、ゲームの中でまで自分のマイナス要素を引きずりたい人間はそうは居ない

 それを正常な状態に戻そうとすればがっつりとボーナスが減っていく


 彼は気づかなかったようだが、実は正常な状態まで追加ボーナスを減らせば今度はコンプレックスを逆に長所に変える項目が現れる仕様だった

 もしそれを発見すれば、コンプレックスを持った人間はそこにどんどんボーナスを費やす

 気づけば手元にはろくにボーナスが残らないはずだったのだ


 苦渋の選択をして、断腸の思いでせっかく得た長所を削っていく

 その後どうしても削る決断が出来なかった長所を抱えて、ろくに残っていないボーナスをそれぞれのスキルなどに振る

 最終的にどうでもよくなってやめてしまうのだ


 実は彼もどうでもよくなってやめるところではあった

 しかし運命は彼を異世界転生へと誘ったのだった


 だがそんな事はモニターの前の存在にはどうでもいい事だ


「くっくっく・・・今度は楽しませてくれるのかな?」


 モニターの前の存在にとってこれはただの退屈しのぎだ

 彼のような哀れな人間を陥れる・・・そのヒントは彼の居た世界に蔓延していたファンタジー作品たちだった

 哀れな人間を陥れるためにこの存在が用意したトラップは一つだけでは無かった

 或いは本、或いは手紙、或いは電話、或いは子猫

 ファンタジー作品で見たあらゆる手段で罠を張った


 そして送られる世界はただひとつ・・・先ほど彼の送られた箱庭だった

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