鎧_02
早めの昼食を済ませ、アルベルトさんから保管袋と万が一の為の保存食(干し肉3枚)を受け取り再度迷宮に向かった
なんで非常食があるかといえば、もし日が落ちそうな時は迷宮で夜明かしができるようにという配慮だ
まあ俺の場合まず完全には死なないから、どんなに人数が居ても大丈夫だと思うんだけどね
迷宮に着くと、まず三階に入った
しばらく歩くがなかなかオオウサギに遭遇しない・・・どういうわけだ?
ようやく現れたオオウサギの群れをエクスカリバーでブツ切りにすると奥の方で何かが光ったような気がした
これは・・・階層開放の合図、そして
「ビギャーーーーーッ!!」
ボス出現の兆候だった
ヨロイオオウサギ Lv3
Lv3・・・この階層のオオウサギも数は増えたがLv1のままだった
ボスはどうやら他のモンスターよりレベルが高いようだ
そして種族というか種別だ・・・「ヨロイオオウサギ」、オオウサギはオオウサギだが体中に鎧を纏っている
これは角質というより犀の角のように体毛が変質したものじゃないだろうか?
防御力が飛躍的に上がり、細かな突起のあるその鎧は体当たりの威力を引き上げる効果を持つだろう
さらに特筆すべきはその体躯・・でかい
ボスだからかLv3だからか、とにかくでかい
体高は1.5m程、幅もそのくらいか
見事に筋肉の塊なんだろう・・・これは避けないとヤバイな
ダッ!!
いきなり跳び込んでくるヨロイオオウサギを大きく避けると、即座に振り向き大きな隙のある背後からエクスカリバーを振り下ろす
ガキィッ!!
硬い!!
DEF半減効果のあるエクスカリバーでさえこれか・・・これは生半可な武器や戦士では相手にならない
恐らく奴が跳び回れないほど間合いを詰めて、剣で押さえつけながら魔法で焼くのがセオリーだろう
「ギュビャーッ!」
なにか悔しそうに喚くヨロイオオウサギから距離をとって魔法の準備をする
この場合どの魔法を使うべきだろうか?
物理的な防御力がある以上凍らせて足止めしてもあまり意味は無いだろう、仮に足止めできても普通のモンスターと同じだけ固められる保証はない
物理的な攻撃魔法も恐らく意味は無い・・・魔法防御力と別の計算である可能性は低いからだ
・・・念の為試してみるのもアリか?
俺はとりあえず石矢を使ってみることにした
キィンッ!!
弾かれた・・・ダメージは少なそうだ
やはり物理攻撃魔法には物理防御力が適用されるのか
ならばと今度は風刃を使ってみる
キキキキィィン!!
金属同士がぶつかったような音が、今度は連続して聞こえてきた
つまり風刃も物理攻撃魔法だったということだ
そうこうしている内に間合いを詰められてしまった
俺はとりあえず炎陣で距離を取れないか試してみた
「ビェッ!?」
ヨロイオオウサギは突然現れた炎のカーペットに驚き後ろへ跳んだ
その様子を注意深く観察する・・・焦げている
アレは明らかに火傷だ
やはり属性攻撃はこういう時に有効だということか
逆に物理攻撃魔法は魔法防御力の高い敵に有効な攻撃手段なんだと思う
だから単にどちらに対しても対して防御能力の無いオオウサギには同じように効き、物理防御力の高いヨロイオオウサギに物理攻撃魔法は効かないのだ
だとすれば、この場合有効な攻撃魔法は火矢だ
しかし単純に火矢を使うとして、そこまで決定打に成りえる程の威力が見込めるだろうか?
いや、炎陣の炎を咄嗟に避けてもアレだけのダメージだ・・一点突破の火矢であれば打ち抜ける可能性はなくもない
もうじき炎陣の効果が切れる
心を沈め、集中する
狙いは首筋・・・襟の装甲
できれば隙間を狙いたいが火矢にそこまでは望めない
ボボォォォォッ
熟練度が上がったからか、一度に二本発生した
一本当たりの大きさ・形状も変わっている、よく見ればクナイのような大きさ・形になっていた
なるほど、確かにこれは「火の矢」だ
出来上がった火矢はヨロイオオウサギの首筋を狙い・・・襟から肩口にかけての装甲を消し炭一歩手前に変えた
まだ足りない
やはり狙いがいまいち正確でないのが問題だ
狙いを正確にし、ある程度の威力・・・試してみるか
指先から火線が延び、奴の襟の内側に到達する
ボォワッッ!!
バレーボール大の炎の玉が襟の内側に発生し、奴の肉を焼く
外と内、両方から焼かれた襟の装甲は完全に炭化し、ボロボロと崩れ落ちた
着火の魔法だ
着火の火球は高い熟練度によって火矢と同じようにレベルアップしていた
そしてその火球は、正確に奴の襟元で発生し、その熱量で装甲を焼きつくしてくれたのだ
「ビギューーーッ!ビャーーーッ」
まだだ・・さすがにボスに対して着火で致命傷はなかったか
物凄く怒った感じだ
しかし俺の策はここからが本番
足に力を溜め・・一気に駆け出す
エクスカリバーは胸元に構え、前に突き出すように体を前傾にし・・・
「ビギャッ!!」
狙いは装甲が炭化して顕になった首筋の火傷痕
勢いをつけた切っ先はいつもよりも筋張った筋肉の抵抗を受けながら、それでもいつも通り弾かれることなく奥まで刺さる
いつも通りの骨を貫く感触・・・そして
ビクッ!!
一瞬の痙攣の後、ふっと無くなる手応え
ヨロイオオウサギは煙となって消えていた
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