(10)コンテスト反省会・収穫編

 ここカイタ編では前回まで2回に渡って、カクヨム×エース漫画原作小説コンテストに参加してみての、自身が感じた反省点を述べてきた。

 今回はネガティブ評価ではなく、ポジティブな体験を切り抜いて並べてみようと思っているのだが、かなり「実体験」に寄りかかるので、ここから一般論的に、広く諸兄に適用されるような教訓を見いだせるかどうかは分からない。「なんだただの自分語りか」くらいの気持ちで生ぬるく見守って欲しいと思う。

 また、内容が実作と直結したものになるので、これを読んでいない方にはよく分からない話になるだろうことは予告しておくのである。


無制限アンデッド ―UNlimited UNdeads― - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054881305359




 今回、おおよその筋立てと舞台運びだけを決め、見切り発車で書き始める中で、それぞれのキャラクターの外見や行動の特徴、口調などは初めから決めていたものの、それ以外の性格・人格といった根っこのところは、書きながらの暗中模索だった。

 幸いにもこれは上手くいき、特に弥勒沙弥の複雑な“おっぱいコンプレックス”や、メンドゥ久世の“過去の記憶リターンズ”などが「書きながら生まれてきてくれた」おかげで、キャラ立ての面等々でかなり助かった。


 元来、ガチガチにプロットを固めていた自分が、ゆるい筋立てだけで書き始めるようになったのも、幾度も執筆を重ねるうち「書いているうちに分かってくる・見えてくるものがある」という経験を重ねたからだ。今回またそれを実感し、かつ奏功してくれたのだといえるだろう。


 特に、悩みどころであった「なぜ『メンドクセ』のメンドゥがラストシーンで働くのか」が、“過去の記憶リターンズ”によって一定の理由付けが出来たことは、作品全体としても大きな助けになってくれた。ラストのそこが締まらないと、作品全体が締まらなくなるのだからして。

 同時にそのことが、沙弥のヒカル説得場面での理由付けの一つにもなってくれたわけで、単なるアイデアという以上に役立っていると言えよう。

 たった一つ「昔、銭湯で働いてた」(←その後“湯治場”に修正)というセリフとアクションが生まれたところから、だいぶ救われたわけだ。書きながらのアイデア、変化というのはやはり馬鹿に出来ないものがあるな。


 そういう「書きながら……」が生まれるベースには、「書いてみなければ分からない問題」というものがあって、それはプロッティング時点では決して感じ取れないものだからだろう。書いて初めて気付いた問題点を、どう解決していくか。その意識が、書きながらなにかを生み出してくれるのではないだろうか。

 そのためには、やはり「読みながら書く」という今の自分のスタイルは、少なくとも自分が実践するソリューションとして、肌に合っていると言えるだろう。


 同じように「書きながら」出たアイデアを記録のために残しておく。


○温泉からの変化

○沙弥の感覚喪失


  (ネタバレ避けのためにボカした言い方)




 また、当初のプロットからの流れがどうしても上手く運んでくれず、「破の段」の内容は大きく変わることになった。

 当初予定では「破の段」は序の段を受けての直後の時制で、場所もホテルの部屋だった。そこで沙弥によるヒカルへの「説明」の場を設けていたわけだが……

 お膳立てが「説明」そのものになってしまったせいか、ここがどうにも短くまとまらず、物語の展開も遅くした。結果として何度も書き直し、執筆までもが遅れた。この害は、完成予想を一週間以上遅らせるという、カクヨムコンテストのレギュレーションとしては致命的なスタートダッシュの遅れをもたらした。


 それは大反省点なのだが、それを、時制と場面をすっ飛ばして、移動開始という“すでに流れが生まれている”ところからのスタートに変更したことで、ようやく流れがスムースになってくれた。やはり「動き」を付けることは重要で、場面の「停滞」はなるべく避けるべきであったのだろう。特に今回は、前回反省点コラムで書いたような、ちょっと特殊な書き方にしたせいで、このことが顕著に出た感がある。


 ただ、流れは作れたものの、必要な「説明」が分散する結果にはなった。ヒカルの再登場が遅れたことで、二人の会話としてしか生まれない要素の登場もまた遅くなった。それ故に、以後の会話は流れこそあるものの濃厚で、本当ならもう少し「抜きながら」やりたかったところだ。


 情報の再配置にはまだ改善の余地はあったものの、ともあれ「動き」というものがああした物語には重要であることを改めて認識した次第である。停滞は敵なのだ。次ある時は、プロットの時点からこのことに注意しよう。





 んー。まだ足りないような気もするが、ひとまずこういった点で、ポジティブに感じられる体験があったということを記録するものである。


 次はこういうの取り入れて、もっとうまくやるぞ(泣き言

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