(四)『読みやすい』にも程がある
『文章が読みやすいです』
というレビュー文を見かけることが多い。そういうレビューの付いた作品を「それでは」と読んでみる(読み通すとは言わない)。繰り返すうち、ははぁこの「読みやすい」には二通りのパターンがあるのだな、と実感してきた。
その1。文字通り。
おおむね正しい文法を用いて文章として成立しており、過度な装飾もなく、必要なだけの適切な情報を含んでいる。普通に言うところの「読みやすい」。
オッサンからは「悪いわけじゃないけどぜんぜん物足りないなぁ」と思うくらいが、Web小説だとちょうどいいのかもしれない。
その2。スカスカ。
うわうっす。薄。風景見えねえ。配置わかんねえ。関係性感じられねえ。描写がねえ。
5W1Hという枠組みすらすっ飛ばして、文章が足りない。主語も時たまなかったりするが、「一人称小説」ということに寄りかかって書き切ってしまう。そう、こういう文章には一人称が圧倒的に多いんだよね。
誰かが誰かに好意を持っていることを、「AはBが好きなので」と書いてしまって説明終わり。意味は通じるが程度が分からん。
人物の感情ばかりを集中的に書き連ね、状況や情景はかなりおざなり。まったく触れられないことすらある。例えば「学校」と書くだけでその学校に関するすべての説明も描写も終了してしまう。何階建て? その教室は何階? 周りは街? 田舎?
複数人数で会話していても文章になるのは誰かの気持ちとセリフだけで、彼らがその合間にどんな動きを見せているのか、が見えてこない。せいぜいたまに表情について書かれるとかか。
端的に言うと「マンガの内容を口頭で他人に説明している」という印象。これだと、いちいち誰の手がどう動いて、とか描写などせずに、誰と誰が殴り合って……で終わるわな。
その2は、本をさして読まず文章を書くこともなかった人がいきなり書き始めた文章、って感じだな。年齢とは相関せず。何十歳でも経験がなければこんな文章にはなる。
せめて「読んだ経験」もたくさんあれば、書く文章はまた変わってくるんだけどね。読書も含めて、「経験」がないからそういう文章になっちゃうわけで。要するに、「何を書くべきか分かってない」的な。
Web時代の新しい文体なのだ! という強弁は可能だろうか? 可能かもしれないが、個人的には「さいですか」と通り過ぎるしかないな。
自分では、こういう文体は狙って書こうとしても無理だなぁ。描写が薄くて説明が多いのも個人的には苦手。「説明」をするのが嫌なので、「描写」で分かってもらおうとしてきたもので。
そういう描写文は「読者が理解してくれる」ことが前提だから、やはり作家、小説そのものにとって「読み取ってくれる読者との出会い」は大事だな。
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