読んで「面白さ」を評価する時の基準~個別要素編

 (ii-1)発端のアイデアとオリジナリティ

 作品には、必ず「中心となっているアイデア」というものがある。「登場人物のキャラクター性」だったり、「独自性のある世界観」だったり、「作品に施された“仕掛け”」だったり、「物語を支えるテーマ」だったり。

 多くの場合、「これが書きたい!」と作者が考えているポイントに近い。また、世界観を「そのアイデアを活かすために構築していく」基準点にもなる。



 『異世界に転生・転移して人生大逆転の大活躍をする』も一つのアイデアだし、『ある衣服を着ると、衣服に応じた特殊能力が行使できるようになる』(via.『キルラキル』)もアイデアだ。


 個人的に、アイデアそれ自体を高く評価するのは、それが「オリジナリティに溢れて、かつ、物語の面白さに貢献している」時と、「オリジナリティはない(既存の何かに似ている)が、よくアレンジされて、面白さに貢献している」時だ。

 「オリジナリティに溢れて」はいるものの、面白さに貢献していない場合には「惜しいな」という評価に留まる。



 また「オリジナリティがなく、アレンジする工夫もない」場合には、剽窃・借用と判断して低評価する。これはどういう場合かというと、例えば『異能バトル。異能者にしか見ることが出来ない分身を互いに召喚して、その分身の能力と自らの頭脳でもって戦い合う』という「おまえそれジョジョのスタンドやんけ」という具合だ。

 そういう観点からすると、『異世界に転生・転移して人生大逆転の大活躍をする』というアイデアは、これだけではもはや凡百ある類似品の一つにしかならない。そうならないために、『異世界とはゲーム世界であり、世界そのものの法則を解き明かしながら生きる術を探す』(ログ・ホライズン風)とか、『大活躍する理由』を工夫する(現実世界での得意分野を駆使する、等)ことが必要になる。


 そういう工夫がなぜ必要かというと、「同じことを真似しただけでは、先行作品に勝つことは難しい」からだ。「あっちの方が面白かったな」と読者に思われては、その作品を読み通してはもらえないだろう。それを避けるためには、「ちょっとは違うんですよ」ということを見せなければならないのだ。

 逆に、こうした工夫がないのであれば、『同傾向の作品がたくさんある中で、自分のこの作品を見てもらおうとする努力が足りない』と見なすことも可能なわけだ。工夫なしが低評価になるのはそういう理由なのである。




 アイデアというのは、完成作品の中では、別の形となって現れてくるものだ。それがキャラ(の装備とかも含む)であったりストーリーであったり、世界観となったりする。

 アイデアは素材であり食材である。それを下拵えしたものがキャラとなり世界観となり物語となる。そしてこれらが調理され一つにまとまることで、作品という名の「料理」が完成する。

 アイデアを活かすか、それとも殺してしまうかは、「どう下拵えしていくか」の過程によって決まる。

 下拵えの仕方が巧いか、下手かによって、面白さへの貢献度が変わってくるということだ。ここもアイデアを評価するための判断要素になる。



 例えば世界観のアイデアに、「その世界では一定年齢になると○○という儀式を経て魔法が使えるようになる。儀式を行っても魔法が身につかなければ、劣等人種と見なされる」といったものがあるとする。

 これで、主人公を「劣等人種」に設定し、能力が劣る中で周りと競っていくような話なら、まだ分かる。

 だが、主人公は魔法が使える優秀なキャラで、世の「劣等人種」が不満を高めてレジスタンスとして蜂起し、主人公が迎え撃つ……という世界にしてしまったらどうだろう。『それは、この世界観でわざわざやるべきストーリーなのか?』という疑問が湧いてこないだろうか。

 被差別民が武力で社会を変えようとする、というストーリーは、どういう世界観でも起こり得る。特別にアイデアを盛り込んだこの世界観でやる意味・意義はどこにあるのか? ただ対立する二者が必要なら、戦争中の二カ国でもいいじゃん?

 もし、後の例のようなストーリーを展開させたとしたら、個人的にはその作品への評価は下がる。せっかくの「アイデア」を、活かす方向で作り込めていない、と見るからだ。

 そのストーリーならば、せめて「劣等人種」側にヒロインを配置するとかして、主人公が社会の壁をどう乗り越えようとするのか、といった要素を盛り込みたいところだ。そうすれば、社会を分ける意味というものが生まれてくるので、最初のアイデアも生きることになる。

 下拵えの良し悪しとは、こういった点を指して言っている。アイデアが「面白さ」を発揮できるようにするために、必要なお膳立てをしっかりする、という意味合いだ。




 といったところで、「アイデア」「オリジナリティ」の個人的評価軸について、ざっとまとめてみた。ざっとなのでおおざっぱではあるし、評価というのは「作品一つ一つによって評価軸が変わってくる」ものでもあるので、他の人にとっては指針にすらなりにくいかもしれないが。


 書くとき、読むときに「こういう考え方もあるのかな」と、自分のステップアップの参考の一つにでもしてもらえたら幸いである。




 ……とか「まとめ」にかかっちゃったけど、まだこの後「8」まで続くんだった……いかん、結構大変だなこれ……やらなきゃ良かったかも……



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