あたしより幸せにならないで

まんごーぷりん(旧:まご)

プライベート・ティーチャー

第1話 プライベート・ティーチャー ①


 某国立大学の医学部1年、山本やまもと さくらは家庭教師仲介業者による紹介でとあるマンションをおとずれていた。都心部にそびえる大きなマンションの一室で、中高一貫校に通う中学一年の女子生徒に、英語、数学、そして学校の試験が近い時は理科も教えることになっていた。


 週2回、1回あたり3時間。時給は3000円。条件は、悪くない。しかしまだ中学一年、高校受験も無いというのに、こんな大学生ごときに週に1万8000円も払っていったい何がしたいのか。桜はそんなことを考えつつも、自分に有利なこの仕事をかってでた。


 美味しい話には、裏がある。――この件も、やはりそうだった。

「ほんと、助かったよ~」

家庭教師仲介業者からのメールを受け、二つ返事でOKした桜に、愛想の良い塾長さんは言った。

「今回の生徒さん――花京院かきょういんみやびさんね、すぐに先生を変えちゃうんだよ。んでもって、そろそろ人員不足」


 ――実力が無ければ即クビ、ということか。まあよい。別に生活に困窮しているわけではなかった。国立とは言え決して安くはない学費。学科でしばしば行われるコンパ。所属している合唱サークルの会費。バイトをする理由なんて遊ぶカネ欲しさ、といったところだろうか。生活がかかっているわけではない。クビになったって、また次のバイト先を探せば良いだけじゃないか。何せ桜は優秀なのだ。


 そして今日、桜は家庭教師バイト初日を迎えた――

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