あたしより幸せにならないで
第3話 あたしより幸せにならないで ①
――女の子の嫉妬って、怖いよね。
――いやいや。男の子の方が、本気を出すと怖いよ。
よくこんなことが言われる。男の子の嫉妬がどうとか、知らない。だけどこれだけは言える。
女の子は自分が一番じゃないと、気がすまないのだ。二番じゃあ、だめなの。
いつからだろう。自分のダメなところばかりが目について、どんどん自分が惨めに思えてきて。自分に無いものを持っている女の子に無性に腹が立って、そういう子の幸せを全部潰してしまいたいと思うようになったのは。――
✳✳✳
物心付いたときから、仲良し幼馴染み3人組でいっつも遊んでいた。――
3人いれば、3人が平等に仲良くできるのなんて、せいぜい小学校低学年までだ。
異変に気づき始めたのは、小学校3年生くらいだろうか。――そもそも愛莉は運が悪かった。3年生と言えば、入学以降はじめてのクラス替えがある学校が大半なのではないだろうか。入学時は運良く3人とも同じクラスだったのだが、3年生のクラス替えで、愛莉だけが違うクラスになってしまったのだ。
「違うクラスになっても一緒に帰ろうね。3人で、これからも一緒に居よう――あたしたち、親友だもんね」
幼いながらに漠然とした不安を抱いた愛莉は、夏希と拓真にそう言った。
――もちろんよ。
――もちろんだよ。
二人はそう答えた。守れない約束なんてしなければいいのに。幼くて、少しバカだった愛莉は、二人の言葉に安心した。
「そういえば今日担任の菊地先生、めっちゃ怒ってたよねー」
「みんな授業中うるさすぎなんだよ」
「いつも優しくしてるから、びっくりしちゃった」――
だけど愛莉のついていけない話題が、増えた。そして、今まで3人が仲良くならんで歩いていたのが、いつのまにか前に夏希と拓真の二人、後ろを愛莉がついていくような形になっていた。
「あのさ」
ある日、愛莉は二人に言った。
「――これからは、二人で先に帰ってていいよ。うちのクラス、終わるの遅いことが多いからさ」
「え、いいの?でも愛莉、一緒に帰りたいって前言ってたじゃん」
拓真はそう言ってくれた。――小学生なりの、社交辞令だったのだろう。
「うん。――二人を待たせるの、なんか悪いから」
柄にもなく、愛莉は二人に遠慮したような発言をした。――本当は、二人の後ろをついて歩くのが惨めになっただけだ。
「あー、そう。残念だけど……じゃあそういうことにしよっか」
夏希は全く残念じゃなさそうにそう言った。残念どころか、少し安心したような表情に見えたのは、気のせいだろうか。
小学4年生にもなると、愛莉も夏希たち以外の友達が沢山出来、二人と帰れない寂しさや惨めさはさほど感じないようになっていた。もう、このふたりの事は忘れればいいかな。そう思っていた矢先に、突然拓真が「相談があるから一緒に帰ろう」と誘ってきたのだ。
「今日、夏希ちゃんは居ないの?」
いつもなら拓真の横にいる夏希ちゃんが居なかった。
「……うん。相談事なんだけど、愛莉にだけ聞いてほしくて」
「夏希ちゃんには、聞かせたくないってこと?」
「……うん」
その時、愛莉は自分の心がこれまでになく弾むのを感じた。――夏希ちゃんには聞かせたくないことを、あたしには聞かせてくれるの?拓真君が?
だけど世の中そう甘くはなかった。
「俺さ。――夏希のこと好きなんだ」
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