④
夏希の代わりができた、とは言っても夏希と桜は全く違うタイプの人間だった。
夏希は自分の意見をはっきりと言うタイプではなかったものの、幼馴染みだということもあり、表情や動作から何を考えているか分かりやすい子ではあった。――もちろん、彼女が愛莉のことを疎ましく思っているのも、なんとなく分かった。
しかし桜が何を考えているのか、愛莉には全く読めなかった。そもそも桜は愛莉のことをどう思っているのだろう?今、嬉しいのか、楽しいのか、怒っているのか、悲しいのか、それさえも何もわからない。
どうしてなの。みんなに馬鹿にされて、いじめられて、惨めじゃないの。いっそ自分が桜のことを言いふらしたのだと告白してしまいたかった。告白して、唯一の「親友」を失ってしまう絶望を味わえばいいと思った。だけど、愛莉の劣等感を忘れさせてくれるのはただ一人、桜だけだったのだ。桜を、失うわけにはいかない。
✳✳✳
いじめなんか全く気にしていない、むしろ自分がいじめられていることに気づいていないようにすら見えた桜は、中学二年生の半ばごろに、学年で1位の成績をとった。――数学や英語だけじゃなくて、文系科目も含めて、1位。
愛莉が桜を憐れみ、優位に立った気分に浸っている間に、彼女は彼女にできる努力をしていたのだ。
なんなの。いじめなんて、全く気にかけていないふりして、陰でコソコソ努力して。結局、いじめてくる奴らを、見返したかったんでしょ?愛莉は理不尽すぎる怒りを覚えた。学校では全くガリ勉っぽい素振りは見せず、いつもぼーっとしているか寝ているか。いつも余裕そうな顔をしていたはずなのに。
――どうして、あなたはあたしより幸せになろうとするの?
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