「縦推奨」を含む小説

　大学一年生の日野紫（ひのゆかり）は夏が苦手だった。 　夜空に咲いた大輪の花。優しい二人の笑顔。 　美しいはずの夏色の記憶が、紫を暗い暗い過去に縛りつける。 　だが、ミステリアス…

閉ざされた部屋。意識のないまま横たわる、病み衰えた夫。 時が止まったようにすら思える病室で、彼女は不意に懐かしい音を耳にする。 ※五年ほど前に書いたものを転載しました。

二人の男は不思議な夢から目を覚ます。ひとりは不吉な夢から、ひとりは心地よい夢からの目覚めだった。 神奈川県内の大学に通う男は、卒業論文で関東大震災時における朝鮮人虐殺事件を調べ…

ごみの不法投棄に腹を立てた時に思いついたストーリーです。 ※もともとは、大木　奈夢様の自主企画【集団提案企画　2000文字以内限定】参加のため書下ろした作品です。

第５回BOX-AiR新人賞最終選考作品に大幅加筆修正をし、完結まで仕上げたものです。

縦組みがいい感じだったので一句。

　哲学――知を愛する学問。フィロソフィア。 　おそらく人類最初の学問であるそれは、手を変え品を変え、今現在も続いている。 　科学の発展によって時に否定され時に肯定され、新たな概念…

昭和初期の寂れた炭鉱町。 そこに暮らす「僕」は映画館で同級生の少年と出会う。 その少年はスクリーンに映しだされる女優を指差して言った。 ――あれは僕なんだよ。 二人の少年…

これは、命を巡る物語。 ナゴヤのストリートミュージシャン、サブは、ある日、二人の“死なない少女”と出会う。 その日からサブは、腐敗した街で、ヤクザ、警察、政治家、新興宗教の教…

少女と見紛う美貌の母、色子。 色子とは正反対の娘、諒子。 色子に似た人形を作り続ける男、誠司。 「髪を伸ばして化粧をさせて。それで色に似れば喜ぶんだね、誠司さんがさ」 そのキ…

　才色兼備の軍医イザベラと、容貌魁偉な中将イーサンは、軍きっての鴛鴦夫婦。 　二人が初めて出会ったのは八年前。イーサンの一目惚れだった。 　戦場に凛と咲いた一輪の花。その麗しい容…

「拒否権は……？」 「あ？　ないに決まってんだろ、そんなもん」 　路上で倒れた苦学生——羽柴茉莉花《はしばまりか》を自宅に連れ帰り介抱したのは、年齢不詳のおじさん——速水朔哉《…

派遣社員の安河内敬介は、取り立てて何もない男だ。何も無さすぎて、小説にも出来ないような。これは、そんな男の今と、光り輝かない青春時代の話。

　皇帝陛下はじめ、すべての貴族が《竜人》で、彼らが政治を司るこの国。 　ヒトである旧家の令嬢ディアナは、父親の命により、十八歳という若さで結婚することが決まった。 　相手は、ディ…