概要
ひとつの世界で紡がれる連作短篇です。幻となってしまったとあるアンソロジー企画に出すはずだったもの。テーマは「死」でした。初めの鍵ふたつは、読んでも読まなくてもお楽しみいただけます。本編をお楽しみいただいてから戻ってきても。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!朝の穏やかな光のように、死を想え。
メメント・モリ。それについての物語だと思いました。
死を想え、とか、死を忘るなかれ、っていう警句です。いつか死ぬ身だと理解して今を全うしろ、みたいなことばで、すごい真っ当で有無を言わさない警句です。
でも、「死」には「辛い」「血生臭い」「酸っぱい」「腐った」みたいなイメージが紐付いていて、それを日常で想ってたら、普通に気が滅入ります。しんどいです。
そもそも今の世の中、「死」に紐付くイメージを日常から遠ざけようとみんなが心を砕いて、「日常生活を送る」と「死を忘れない」はとことん離れてます。
だから、この世界──「死」に光のイメージが強く紐付けられている世界──に、すっごく惹かれました。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!何も残らず散る。けれど、彼らの光は誰かの心に遺り続ける。
致死性発光症。
作中の中で「消失病」という俗称も登場するのですが、この不治の病を患った人は文字通り骨も残さずに光となって消えてしまう。
そんな病が存在する“もしも”の世界のお話を、連作短編で綴られた作品です。
病を患う人、遺される人。
家族や友達のように親しい間柄だけではなく、新しい出会いや傍観者のような立場の人も登場します。
その一人一人に作者様の手によって丁寧に命が吹き込まれており、生きた人間の息づかいを感じます。最期は悲しみばかりではなく、託される想いも存在するのです。
彼らの視点に自分を重ね、「もしも私だったら」と思わずにはいられません。そして今、生きている日常をふと振り返って…続きを読む - ★★★ Excellent!!!残らないからこそ残せるものがある。
それが形あるものでも、そうでなくても。
致死性発光症という不治の病に侵された人間は、徐々に身体から強い光を放つようになり、最後は光とともに消滅する。消滅、それは骨のひとつも残さずに身体が完全に消失してしまうこと。身体が残らない残酷な病を前に、人は何を残すのか。
答えはきっとひとつだけではない、と作者さまがおっしゃっているように、読み手にもいくつもの「もし」を想像できるだろう小説です。残らない恐怖を前に最期に向かって行動する人々。そのどれもが正しいし、そのどれもに異なる可能性がある。
皮肉なほど綺麗な輝きを見せて逝く様は、胸に深く突き刺さります。