朝の穏やかな光のように、死を想え。

メメント・モリ。それについての物語だと思いました。
死を想え、とか、死を忘るなかれ、っていう警句です。いつか死ぬ身だと理解して今を全うしろ、みたいなことばで、すごい真っ当で有無を言わさない警句です。

でも、「死」には「辛い」「血生臭い」「酸っぱい」「腐った」みたいなイメージが紐付いていて、それを日常で想ってたら、普通に気が滅入ります。しんどいです。
そもそも今の世の中、「死」に紐付くイメージを日常から遠ざけようとみんなが心を砕いて、「日常生活を送る」と「死を忘れない」はとことん離れてます。

だから、この世界──「死」に光のイメージが強く紐付けられている世界──に、すっごく惹かれました。
日常に光があるのは当然のことで、それなら死もそばにあるのも、すっと腑に落ちるだろうな、と思ったからです。

この病に関わる登場人物それぞれ強い優しさを持っていたり、やれることを常に探していたりして、ふと自分を省みてしまいます。

そして、「死」に紐付く憂鬱なイメージを据え置いて、素直にしぜんに、自分は何を遺せるのかなー、なんて省みている自分が不思議で面白く思えました。

すっごく、おすすめです。

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