第4回カクヨムWeb小説コンテスト大賞受賞者インタビュー|たままる【異世界ファンタジー部門】

賞金総額600万円、受賞者はKADOKAWAからの作家デビューを確約する第5回カクヨムWeb小説コンテストを、今年も11月29日(金)より開催します。

そこで、かつて皆様と同じようにコンテストへ応募し、そして見事書籍化への道を歩んだ前回カクヨムコン大賞受賞者にインタビューを行いました。創作のルーツや作品を作る上での創意工夫、そして受賞後の変化などを語っていただいた受賞者の言葉をヒントに、小説執筆や作品発表についての理解を深めていただけますと幸いです。



第4回カクヨムWeb小説コンテスト 異世界ファンタジー部門大賞
たままる
▼受賞作:鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ(受賞時タイトル:彼は鍛冶屋で異世界を平穏に暮らしたい)
kakuyomu.jp

──小説を書き始めたきっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

最初のきっかけは中学校の校内文集に作品が載ったことです。荒廃した惑星に移住調査のために訪れた宇宙人がいて、彼らは実は地球人だった、みたいな話でした。
拙作の執筆については友人の「たままるが異世界転生して鍛冶屋でもする話が読んでみたい」と言う、半ば冗談みたいな発言が発端です。

影響を受けた本、と言うとかなりたくさんありますが、大本を辿るなら“ロードス島戦記”でしょうか。他にもライトノベルは時々の代表作と言えるようなものを読んできています。
モノを作る楽しみでも作品として成り立つ、との気づきを得られたのは“異世界食堂”“異世界居酒屋「のぶ」”“ナイツ&マジック”あたりです。

参考になった書籍も結構ありますが、“中世を旅するひとびと ヨーロッパ庶民生活点描”“図説中世ヨーロッパの暮らし”“図説ヨーロッパ武器・防具・戦術百科”“人はどのように鉄を作ってきたか”“たたら製鉄の歴史”あたりを参考にしています。日本刀は学術論文で参考になるものもたくさんありますので、そちらも合わせて参考にしています。

──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞せください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

恐らくは「主人公自体は英雄ではなく、また英雄にはならないこと」が最大の特徴でしょうか。拙作の主人公たるエイゾウですが、彼自身は影の英雄ですらなく、基本的には一介の鍛冶屋の立場から離れません。
ですが、最終的には魔王や勇者の剣を打つほどの腕前には到達する、と言うことが明示されています。この2つが特徴的かなと思っています。

支持をいただいた点については、講評でも頂いていますが読み応えと話のスムーズさが両立している点でしょうか。リアリティと省略については、面白さを損なわないバランスになるよう腐心しましたので、嬉しい限りです。

▲2019年12月10日発売『鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ』カバーイラストを公開! 左から、主人公・エイゾウ、彼の弟子・リケ、森で助けた獣人・サーミャ(イラスト/キンタ)

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。また、今回の作品には無かったけれど、こんな要素がある作品を読んでみたい、というものはありますか?

自分で言うのも何ですが、そもそも「調べる」と言うことが大好きなので、その調査を裏打ちとして書けている鍛冶のシーンなどはお気に入りですね。
その中でも3日ほど図書館に通って調べた日本刀の場面が自分では一番のお気に入りです。


▲ファンタジーでお馴染みの武器が出来上がるまでの緻密な描写も、本作品の大きな魅力の一つだ

当初の予定では、拙作は“異世界居酒屋「のぶ」”などのように、1話1アイテムで展開させるつもりだったのですが、あれよあれよと違う方に進んでいってしまいましたので、鍛冶屋でなくても、そういった作品を読んでみたいですね。
例えば、多くの小説では魔物を退治したあと、冒険者ギルドに素材を納品する側の立場が多いですが、納品される側として、片田舎の小さな道具屋だけど、そこに行けばなんでもあるお店の話、とかいいですね。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんななかで、自分の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

多くの方々が仰っている内容にはなりますが、読者の方がまず目にするのは何かと言うと、タイトルとキャッチコピーになります。ここでまず読んでみようと思われる内容にしました。

内容については逆説的ですが、「多くの人に読まれている作品」がどうやっているのかを書く前に調べています。1話あたりの文字数の目安や改行の程度、話の持っていきかたなどですね。

また、自分の作品を読んで面白いと思ってくださっている読者の皆さんを裏切らないようには気をつけています。これは単に自分の作品はここが面白いんだという点があれば、そこからはブレないようにしています。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスがあれば、ぜひお願いします。

これも多くの方々が仰っていますが、まずとにかく書いて公開しましょう。例えば執筆スタイルにしても、書き溜めが合うのか、それとも都度更新が合うのか等、書かないことにはわからないことはかなり多いと思います。
それに、公開していない作品は誰も読むことが出来ません。読んでもらわないことには評価もなにもないわけですから、書いて公開することがまず大事だと思っています。
後は、自分の作品を一番最初に読むのは自分ですので、まず自分が読んで面白いと思えるものを書いているのが、長く続けられるコツになるかと思います。

上から目線のようで恐縮ですが、最初の一歩を踏み出すのは非常に勇気がいります。ですが、まずはその第一歩を踏み出してみてください。新しく面白い作品が読めることを私も心待ちにしています。

──ありがとうございました。


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