KADOKAWAの児童向けレーベル「角川つばさ文庫」が主催する小説新人賞「角川つばさ文庫小説賞」第7回の一般部門が、7/1~8/31の期間で募集しています。
昨年開催した第6回では、カクヨムから応募した田原答さんが『オバケがシツジの夏休み』にて見事金賞を受賞しました。
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カクヨム編集部としては、現在募集している第7回からも才能ある書き手が現れてくれることを願っています。そこで、今回は田原答先生と角川つばさ文庫編集部にご協力いただき、受賞者インタビューを行いました。
小説を書いたきっかけや影響を受けた作品をはじめ、受賞作品をどのように書き上げたか、また受賞したらどのような生活が待っているのか──など、普段は知ることのできない、受賞者の「その後」の生活も垣間見えるような、貴重なインタビューとなっています。
応募を考えている方や現在執筆中にとって、より良い作品を創るための参考となれば幸いです。
──まずは、小説を書き始めたきっかけについて教えてください
高校時代、友人達との遊びの一環で書いた小説が予想外に喜ばれ、調子に乗ったことが始まりです。当初は、書いたものを読んでもらえることに喜びがありましたが、そのうち、書くこと自体に楽しさを見出すようになりました。
そこから本格的に小説を書くようになり、オリジナル作品や二次創作を中心に、同人誌やwebサイトで、細々と創作活動を続けていました。
──創作をはじめるにあたって、田原さんが影響を受けた作品はありますか?
RPGが好きなのも手伝ってか、ファンタジーものの作品が多かったです。
特にWizardryや女神転生シリーズなどの世界観には、根っこの部分でかなり影響を受けていると思います。迷宮探索は楽しい。
──友人との遊びから趣味の活動として執筆をはじめた田原さんですが、それでは角川つばさ文庫小説賞に作品を応募しようと思ったきっかけはなんだったのですか?
事の発端は、「ウチの子が本を読まない」という友人の嘆きでした。
「(小説は)マンガみたいに笑えない」と言っていると聞き、「じゃ、笑える話を書いてやるわい」と、ムキになったのです。今思えば、夏の暑さにやられてたのかもしれない。
その後、カクヨムさんで公開すれば、遠方の友人親子が気軽に読めるだろうと、投稿の準備をしていたところ、つばさ文庫の小説賞に応募出来ることを知り、せっかくの機会だからと、応募することにしました。ほんとに、偶然に偶然が重なった形です。
▲受賞作『オバケがシツジの夏休み』のカクヨム作品ページ
そういった経緯もあり、執筆時は「読んだ子ども達が楽しんでくれるかどうか」ということを、ひたすら念頭に置いてました。
「つばさ文庫」の小説賞ですから、それが大前提なのですが、執筆に夢中になりすぎると、忘れてしまいがちだったので……。
──9月には、デビュー作がいよいよ書籍化されます。受賞が決まってから今日までのことを教えてください
受賞後は、受賞作の修正作業を行う一方、書籍化に関する諸々の作業、続編の準備と、フル回転してました。それらが一段落したのは、6月の末頃です。
あらかじめ「忙しくなるよー」とは聞いてましたが、予想以上すぎて、5月に入ったあたりから笑いしか出なくなってました。単に時間のやりくりが下手だった、とも言う。
とは言え、仕事と家事の両面で、家族の協力を得ることが出来たので、かなり恵まれている方だと思います。
──受賞したことで、普段の生活に突然書籍化の作業も舞い込んできたようなもので、慣れないことも多々あると思うのですが、日常生活と執筆はどのようにバランスをとっていますか?
慣れるまでは、執筆時間の確保に苦心しました。
特に、家事と執筆の時間の境目が曖昧だったため、両方疎かになってしまい、頭を抱えることも多かったです。
現在は自分の体力&集中力と相談しつつ執筆計画を立て、毎日、執筆のためだけの時間を確保するようにしています。
その上で、「夜遅くまで執筆しない」「週に1日は執筆しない日を作る」など、自分を労るルールも盛り込んでみたところ、以前より執筆に集中出来るようになりました。
──つばさ文庫は児童向けのレーベルなので、表紙や挿絵がつきますね。ご自身の作品のキャラクターのイラストが上がってきたとき、どのようなお気持ちでしたか?
自分の頭の中だけにいたキャラクター達が、イラストレーターさんを通して姿を見せてくれたことに、ただただ感動しました!
執筆時に思い描いている彼等が、より活き活きと動き出した瞬間でもあります。
実際は、喜びのあまりに奇声を発し、飼い猫を怯えさせてました。
▲主人公・涼とおばけのシツジ
──ちなみに、イラストに関して田原さんによるご希望やこだわりはありましたか?
キャラデザインに関して、設定に絡む部分については、かなりワガママを言わせていただきました。イラストレーターの渡辺ナベシさんと、担当さんには、今後足を向けて寝ちゃいけないレベルです。
逆に、渡辺さんから提案いただいた部分(シツジのメガネや蝶ネクタイなど)を、小説の設定に追加したりもしています。
ちなみに、主人公の涼のアホ毛は担当さんのこだわりポイントでして、曰く「涼がオバケのシツジとダッシュする際の、『取っ手』になるイメージ!」だそうです(笑)。この場を借りて、お伝えしておきます。
▲担当編集渾身のアホ毛ハンドル
──イラスト以外でも、作品については担当編集と様々なやりとりをした上で本が出来上がっていきます。受賞作にまつわるやり取りの中で、担当編集とのやりとりで印象に残ったことがあればお聞かせください。
受賞の連絡を頂いて以降、何もかもが初めてのことだったので、頂いたアドバイスすべてが印象的でした。作品の修正作業に限った話ではなく、目からウロコが落ちっぱなしです。
それらの中でも、執筆の際、こまめに確認していることの1つが、「各章を、10ページ前後にすること」 。
この10ページというのは、子ども達が学校の 『朝の読書時間』の10分間で、ちょうど読み切れる分量なのだそうです。
読書慣れしていない子どもだと、ページの途中からストーリーに戻るのが、難しく感じるため、区切りをはっきりさせてあげると、最後まで、読み通しやすくなるとのことです。
残念ながら、あまり守れていないのですが、心に留めています。
この他にも、読んだ子ども達が「楽しい! 面白い! 続きを読みたい!」と感じてくれる作品にするための視点や姿勢を、現在進行形で、辛抱強く教えていただいてます。
たまに、担当さんではなく先生ではないかと錯覚しそうです。
他には、予想外の提案がボンボン飛んでくるので、キャッチするのに必死。
でもそれが異様に楽しい。
──今後の目標はありますか?
受賞作では、笑ってもらうことに重点を置いた、お話作りをしていました。
今後は、単に笑いだけでなく、主人公達と一緒に悩んだり、怒ったり、時には涙したりしてもらえる様な物語を作っていければと思ってます。
そのためにも、「子どもの目線」も含め、もう少し視野を広げていきたいです。
──最後に、つばさ文庫小説賞にこれから応募される方へのメッセージをお願いします
子ども達のためのお話であるということを忘れず、心から楽しみながら、執筆していただければと思います。
私自身、キャラクター達と遊んでいるつもりで、のびのびと書いていました。
楽しみながら書いたものは、子ども達も、楽しく読んでくれると信じています。
途中、色々と迷って筆が止まることもあるかもしれませんが、誰に向けて書きたいのかを思い出せば、きっと大丈夫です!
──ありがとうございました
(田原答 / インタビュー・テキスト:カクヨム編集部)
第7回角川つばさ文庫小説賞への応募方法は下記をご覧ください。
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