第〇二〇話 虹色
ゴーレムの実験をしていたところ、レイラがペンダントを持って来たということで、応接室に向かった。
応接室に入ると、レイラと母のライラが楽しそうに会話していた。ティファも来ているようだな。
「ルーちゃん! 魔石を宝石に利用する方法を見つけたってレイラから聞いたわ。どうして、私に言ってくれなかったの?」
「そういえば、シアにピッタリのを頼んだとしか報告していなかったですね」
「そうよ! 宝石事業はシャドウブレイズ家にとって主力事業の一つ、魔石を宝石に利用する研究は私とレイラ主導なんだから、私にも報告してね」
「そうだったのですね、申し訳ありませんでした」
「怒っているわけじゃないからいいのよ。ルーちゃん、凄いわ!」
そう言って、母は手を広げる……飛び込めということなんだろうな……。
「あと一歩の成果が出なくて困ってたのよ。ルーちゃんありがとう」
「……いえ、母様の役に立てたのなら良かったです」
母から離れると、ライラも手を広げている。二つの霊峰がカモーンと主張しているが、無視でいいだろう。
「それで、シアのペンダントはどんな仕上がりに?」
ライラが膨れっ面なのでティファに尋ねる。
「完璧っス! 間違いなくウチが作った中で最高傑作っス!」
ペンダントの入ったケースをシアに渡す。
「シアのペンダントだ。開けてみてくれ」
レティシアは細かな装飾が施された青い色のケースを開けると、驚きの表情を見せる。
「これは凄いな」
中央に大きな水色の魔石、その周りに小さなダイヤモンドを雪の結晶のように並べた、美しいペンダントだった。これならレティシアの魅力をさらに引き出すだろう。
「ルーちゃん、つけて差し上げなさい」
「分かりました」
俺がペンダントを持つと、レティシアは長い白銀の髪を手で束ねる。こういう仕草はとても同い年には見えない、大人の色香だ。
「綺麗だ……」
それ以外の言葉は思いつかなかった。
「ルーちゃん、レティシア殿下の顔、真っ赤よ」
心の声がまた漏れてしまったようだ。
「シ、シアは気に入ったかな?」
「ルー君ありがとう!」
そう言って微笑むレティシアの笑顔は宝石の美しさをあっさり超えてきた。
レティシアは恥ずかしいのか俺に抱きついて来る。母の前でどうかと思ったが、気にした様子もないので大丈夫なのか?
「昨日もそうだったけど、レティシア殿下は随分とルーちゃんに懐いているのね?」
「そうなのよね。
何っ!? 初めてだと! ルーシャス自身が忘れているだけかと思ったのだが、母が言うのなら間違いないな。
「ルーちゃん、カッコいいから分かるわ」
レイラは分からなくてもいい。
「レイラは良い人いないの?」
「姉さん、ルーちゃん見た後に他の男を見たら、みんなジャガイモにしか見えないわ」
それはないだろう。
「あら、私、レクスは分かるわよ」
そりゃ、旦那なんだ分からないと困るというか、他はじゃがいもなのか?
「それで、割れた魔石はどうなりました?」
「それでしたら、こちらに」
ティファが皮の巾着袋を俺に渡すので中を確認すると、できるだけ丸く加工した小さな魔石がたくさん入っている。
「ん? これは宝石にできそうな大きさだが良かったのか?」
直径1センチぐらいの魔石も入っていたのだ。
「それは魔力の入っていない透明なやつなので、宝石としては使えないっス」
「透明でもカットしたら使えそうなのに?」
「万が一魔力が入っちゃうと、濃い紫に変色してしまうっス」
「なるほど、確かに変色したら困るな」
「濃い紫になったら魔石ってバレちゃうっスからね」
「……魔石ということは隠すのか?」
「当然っス」
「ルーちゃん。魔石ってバレちゃったら魔石の価格が高騰しちゃうでしょ? いずれバレるにしても当分困らないくらいにカラー魔石を集めないと」
「そうか、今はゴミなんだっけ? しかしレイラ、シアが知ってしまっているのは良いのか?」
「あら、レティシア殿下はルーちゃんが不利になるようなことはしないわよね?」
レイラの問いかけにレティシアが頷く。レティシアはいつの間にか俺の太ももに頭を乗せて寝ていた。あまりにも可愛かったので、思わず頭を撫でてしまうと目を細めて喜んでいる。
「しかし、この魔石、ゴーレムに使用するとしたら、魔力を入れる必要があるということか……」
石に浸透させる方法で入らないかな?
魔石に魔力を浸透させてみると――
――!
「「ルーちゃん、何したの!?」」
「激ヤバっス!」
やってしまったな! 透明だった魔石が虹色に輝いている!
「魔石の中で虹色が揺らめいて綺麗っスね」
「いや、ちょっと待って。空の魔石に魔力を入れたら、濃い紫色になるんじゃなかったのか?」
「つまり、ルーシャス様は魔力を入れたっスか? ゴーレムのスキルでは無理だったと思うっス」
「私が説明いたしましょう」
リリアナが分かりやすく説明してくれた。
「ルーちゃん、そんな実験していたの? 私にまで内緒にしていたのはどうしてかしら?」
まずいな……母が臍を曲げてしまった。全然考えてなかったとは言える状況じゃないな。
「ライラ様、ルシャ様はサプライズで見せようと思っていたのですよ」
「まぁ! そうだったのね! でも、隠し事は嫌よ?」
「申し訳ございません」
「分かればいいのよ」
そう言った母の表情はご機嫌だった。リリアナ、ナイスフォローだ!
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