第〇三九話 性格

 ゴーレムを使って開墾の手伝いをした話は、すぐに父の耳に届いたようだ。


 もちろん怒られるどころか褒められたし、今後ゴーレムが活躍できそうな仕事は手伝えることになったので、いろいろ試してみようと思っている。



 今日はアルカリオに作ってもらった十種類のマリオネット人形を比べてみようと思う。


 それぞれの木を触った感じでは、リグナムバイタとバルサが一番良い感じなのだけど、せっかく作ってもらったので、どの程度性能に差があるのか試す。


 まず、すべてをゴーレムにしたところで重い順に並び替えると、こうなる。


 リグナムバイタ、黒檀、黒クルミ、トネリコ、ブナ、アカシヤ、ブラックソーン、ニレ、スギ、バルサの順だ。ただ、黒クルミからニレまではそこまで大差はない。


 ゴーレムたちを起動して一通り動かしてみた結果、性能の違いが明確に見えてきた。軽い材質のバルサやスギは、確かに俊敏性が高く素早く動く半面、力仕事をさせるには不向きだ。


 一方、リグナムバイタや黒檀は、その重さに比例して耐久性と力強さがある。ただ、重い分だけ動きが鈍く、精密な動作は難しい。


 実験を進める中で意外な発見をした。比べて分かったのだが、それぞれの木材には性格や相性のようなものが存在するようだ。


 例えば、アカシヤとブラックソーンは重さ自体ほぼ同じなのに、ブラックソーンの方が明らかに動きが良く、戦士のように見える。一方、アカシヤは若干抵抗のようなものを感じ、俺との相性が悪いと感じた。


「これは、性格と言っても良いのだよな?」


「杖にすると相性が出てきますが、ゴーレムにすると性格も出てくるようですね」


 杖での相性といえば、光ったり風が吹いたりするあれのことか? つまり、アカシヤは俺の命令に抵抗している分、反応が悪いのかもしれないな。


 いろいろ検証した結果、リグナムバイタ、黒クルミ、ブラックソーン、スギ、バルサは俺との相性が良く、黒檀、トネリコ、ブナ、ニレは相性が悪いという、かなり癖があるように感じた。そして、アカシヤは確実に相性が悪い。


「それにしても、アルカリオに追加で依頼した感覚は正解だったようだな」


「リグナムバイタとバルサ、ともにルシャ様との相性が明らかに良いですね」


「性能の違いを見るために普通のゴーレムの詠唱で生成したが、リグナムバイタとバルサは俺の命令を先読みするような感覚さえある」


「リグナムバイタは一番重いですが、反応速度や動きは明らかに上位です。私としてはスギとバルサのゴーレムらしからぬ動きに目を見張るものがあると思います」


「確かにスギとバルサの動きは軽やかで、ゴーレムというよりは人間の女性の動きに近い。軽いため普通のゴーレムのような力仕事は難しいが、違う仕事ができそうだ」


「それにしても、小さいとはいえ、これだけゴーレムが並ぶのは初めてみる光景です」


「そうだな。ゴーレム自体珍しい……そういえば、ゴーレムって複数を同時に動かせるのか?」


「普通は一体動かすのがやっとですが、ルシャ様ならできそうですね」


 そう、ルーシャスの膨大な魔力なら複数動かすことが可能なはずだ。


 まずは二体のゴーレムを起動させてそれぞれに命令してみる。動いてはいるが、同時というよりは順番に動いているだけのような気がする。


「少しイメージしていた動きと違うな」


「そうでしょうか? 二体が動いているだけでもすごいことだと思いますが?」


「少し命令のやり方を変えてみるか」


 今度は二体の名前を呼んでから動きを指示してみると、二体は同時に動いた……もちろん同じ動きだけど。


「ルシャ様、同時に二体動いてます!」


 そう、同時なんだよな……これでは同じ動きしかできないというか、別々の動きをさせるのはかなりハードルが高いな。


 そうだ! 十体のゴーレムを、三角形の陣形に配置する。


 すべてのゴーレムの名前を呼んだあとに、次々と頭の中に思い浮かべた動きを指示すると、ゴーレムは同期されたシンクロダンスを繰り広げたのだ。


「出し物としても使えそうですね!」


 ところが、中央に配置されていたアカシアだけどんどんダンスがずれてしまい、左に倒れ込み他のゴーレムを巻き込んだのだった。


 出し物にするときは、すべて同じ材質の方が良いようだ。

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