神に手違いで殺された上に異世界にほっぽり出されたんですけど!?
気晴
第1話 俺、手違いで殺されたって
気がついたら俺は真っ白い空間にいた。右も左も上も下も前も後ろも真っ白だ。
「はて?」
俺、何してたっけ? 確かいつも通りベッドの上でスマホをポチポチしてて……、そのまま寝落ちた? うわぁ、目覚ましかけてないじゃん。明日も仕事なのに……。どうか遅刻せずに起きられますように! 神様ぁ!
「なんじゃ?」
「はうぇあ!?」
隣から急に声がして気が動転しちゃったよ。ビビらせんな、クソが。
俺は声から少し離れて振り向いた。そこには立派な髭を蓄えた老人が立っていた。
「え……誰ぇ……」
「さっきお主が呼んだじゃろ?」
「……は?」
このジジイ、ボケてんのか。俺は誰かを呼んだ覚えなんてねぇっての。つーか、この真っ白空間にこのボケジジイと二人きりとか新手の拷問かよ、チクショウ。あー、せめて美少女ならなぁ。あ、でも知らない美少女とか会話続かない自信あるわ。
「悪かったのう。ボケジジイで」
「ホントにな……。え?」
「さっきからお主の思考は筒抜けじゃ。この愚か者め」
え? は? ……え? このボケジジイ、思考盗聴してんのかよ、マジ悪趣味。頭にアルミホイルでも巻こうかな。
「アルミホイル如きで神の御業を防げるとは、思い上がりも甚だしい。名前と同じく知性のなさが滲み出ておるわい」
そらそうだ。もし防げたらアルミホイルが神を越えた存在になる。それを大量生産する人間ヤバすぎでしょ。てか、本当に思考盗聴してるっぽいな、変態。とういうか、名前は俺関係ないだろ! 親の知性の問題だ!
「お主は一言多くないか?
「は……?」
なんか勝手に現れたくせに、俺、殺したの? しかも間違いで? HAHAHA、何それ、おもしろーい。冗談でももう少しウィットに富んだものを言おうぜ。あと、俺の名前を口の出すな。殺すぞ。
「嘘ではない。本当じゃ。すまんな、ユニヴァース君」
「……すまんな。じゃねぇんだよ! 人違いで殺しといてそれか!? 生き返らせろよ! あと、名前を口に出すなって言ってんだろうがハゲ!」
「ハゲてはおらぬし、同一世界での死者蘇生は禁止事項なのでできぬ。だから、お主には詫びとして異世界に行ってもらおうと思ってな」
What? 異世界? あの小説とかに出てくるヤツ? マジ? 詫びって言ってたし、チートスキルとか大量に貰って悠々自適にハーレムライフ送れるってこと? ……悪くないかも。
「それなら結構。詫びだからのう、少しサービスしといてやろう。現地の言語と常識、魔法の才能と、お主自身の才能を少しだけ伸ばしてやる。後は適当に現地仕様に調整しておこう」
いやー、異世界で美少女に囲まれてハッピーライフとかマジ最高じゃん。あんなことやこんこなこと、ムフフなことだってし放題じゃん、最高! しかもどんな相手だって無双しちゃうんだろ? 人生イージーコース確定とか超ラッキー! 殺されて万歳!
「ダメじゃ。聞いておらん。ま、生きるのには不便しないようにはしたはずじゃ」
あ、でも魔物になるのは遠慮したいかな。進化とか面白そうだけど、俺は人間のままでいい。勇者とか魔王とかも無しで。俺は辺境の温泉地でのんびりハーレム隠居生活がしたい。このまま現世で生きててもうだつの上がらねぇ底辺が一発逆転とか夢しかないじゃん。
「それはお主の頑張り次第じゃのう。それじゃ、頑張るんじゃぞ」
あー、ワクワクしてきた。この感覚、何年ぶりだ? 社会人になってから感情という感情が軒並み死んだからな。張り付けた笑顔の裏で妄想ワッショイするのが日常になっちまった。しかし! ここから俺の覇道がァああぁぁ落下してるぅぃううぅぅ!? ナンデェ!?
「クソジジイがぁぁああぁぁ!」
サムズアップしやがってこのクソハゲジジイがぁぁああぁぁ! いやぁぁああぁぁ落ちるぅぅううぅぅ!
こうして俺は異世界転移しましたとさ。
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