第3章 Race of AM 2
優勝はボクスホール・アストラを駆るRacingBall。シンガポールの選手。ポールトゥウィンだ。続いてLync & Co 03を駆るスウェーデン選手、Ghost_SimRacer。3位、プジョー308のアメリカの選手、Cyber Driver。
「決勝レース勝つよ!」
と、RacingBallは不敵に強気の発言をした。
それから、第2レースまでのインターバル。
ビル入りしたウィングタイガーとレッドブレイドは、控え室でミーティングをし、緊張感をつくり、気持ちの引き締めを図った。
勝負には、適度な緊張感は必要だ。
「このレースで人生決まると思って、取り組んで」
龍一は小声ながらも力強く「はい」と応えた。
「Dragon、自分を信じて。あの時の私みたいになっちゃだめよ」
とレインボーアイリーンは言う。あの時とは、Forza E World GPの決勝レース、アイリーンはカール・カイサとトップ争いをしながら、ダブルクラッシュでリタイヤしてしまったのだ。
あの時は双方が、自分の過失であると言い、互いに謝罪をし合った。
ただ、トップを走るプレッシャーや焦りがあったのは確かだ。歴戦のベテランでも、完全に抑えるのは難しい。
「そうだよDragon、アイリーンの言う通り、自分を信じて!」
と、カースティ。
「はい、がんばります」
と龍一は自分にも言い聞かせるように応えた。
「でも、容赦はしないよ。本気で戦うのが、ライバルへのリスペクトだからね!」
フィチだった。ウィングタイガーにチームオーダーはない。龍一も、
「わかってるさ、勝つのはオレだよ」
と応えた。
(まあ、4シーズン戦ってきて、こんなこと言われてんじゃだめだけどね……)
微笑ましさと苦笑とを織り交ぜながら、ソキョンはその様子を見守った。
優佳と、ショーンを抱くアレクサンドラ、マルタも、この様子を微笑ましく見守った。
(この雰囲気、試合の中にいるのがたまらなく好きなのよね)
とマルタは考えていた。eスポーツこそ我が人生! その思いで駆け抜けた人生であり、これからもその気概で生きてゆく。
(私は才能がなかったから、早めにプロは引退して、クルーに回ったけれど。たくさんある選択肢の中で、私の中の私が、これだ! と選んだ。それが、この世界!)
アレクサンドラも同じだった。彼女もかつてプレイヤーで、マルタのチームに所属し、アイリーンと出会って結ばれた。
だがやはり厳しい勝負の世界である。アレクサンドラも自身の限界を思い知り、早めにプロは引退し。いちファンとして、この世界を見守ってゆくこととなった。
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