第4章 Touring car final 11
第1、第2のシケインを抜けつつ、俄然前を猛プッシュだ。
「Keep calm, keep calm!」
5位のGhost_SimRacerの03は、前の雄平のRS3 LMSに追突しそうな勢いだ。クルーは咄嗟に、落ち着け! と指示を出した。これでダブルクラッシュになれば元も子もないし、もしかしたらペナルティを受けかねない。
「……!」
Ghost_SimRacerもそれに気付き、フェアプレイを心掛ける。
「龍一、ひっつき虫じゃだめよ! Push、push、push!」
ソキョンは龍一に発破をかける。
「了解!」
龍一とて、表彰台圏内とはいえ、臆病な走りをしてはいけないことはわかっている。
「Dragon、自分を信じて! 今までの悔しさをぶつけるんだよ!」
とカースティ。
PRID-eの面々は静かにレースを見守る。
ディスプレイには、フィチのヴェロスターNをプッシュするヤーナのRS3 LMS。
(勝ちたい……!)
消えかけていた龍一の心の中の闘志の火の元だったが、一気に燃え上がった。
夜香楠が実況する。
「最終ラップに入り、トップ争いは俄然厳しさを増します!」
そこから風画流が話を継ぐ。
「ここに来て3位と4位以下の差が開いたようです。YouHee選手に何があったのでしょうか?」
「え、えーと、なんででしょう? マシンは調子良さそうなんですけどね」
「ふふ。とぼけちゃって。おそらく、チームオーダーがあったのかもしれません」
「あ、チームオーダー! なるほど5位のGhost_SimRacer選手すごい勢いで追い上げてましたもんね」
「レッドブレイドは2位のHoney Bear選手に全懸けして、YouHee選手に後ろを抑えさせたのでしょうね」
「チームオーダーをしっかり遂行するYouHee選手も、たいしたものです」
その実況の間にも、上位3台はGPコースを駆け抜ける。
後ろ2台にとっては、北コース、ノルトシュライフェに入ればパスの難易度は上がる、ここでなんとか前に出たいところだ。
「しかしSpiral Kは押されても慌てる様子がねえな。鉄の心臓だぜ。さすが、敵ながら天晴だぜ」
と優はフィチを褒め称える。
3台のペースは上がる。フィチは逃げにかかり、ペースを上げ。後ろ2台はそれに引っ張られているかたちだ。
リアスライドも見せ、前輪駆動なのにまるで後輪駆動かのようだ。それだけ攻めているということだ。
順の変動はなく、結局このままの順位でノルトシュライフェに入る。
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