第3章 Race of AM 1

「決勝は良いレースをしましょう」

 フィチは微笑んで言う。彼は韓国チャンピオンだ。eスポーツでは、韓国勢の活躍がすごいものだった。レジェンド級の選手もいるほどだ。

 フィチにもそんな雰囲気を感じて、雄平は挑戦の心の火をさらに燃やす。

(4位は油断させるためのフェイクだったのか)

 そんなわけはないが、ひとつ上になっただけで勝ちが決まるわけではないことくらいはわかる。

 龍一は今季は不振だが、こちらも余裕がありそうだ。スランプを脱したのか。

 ともあれ、4人、軽く雑談をしながら階段を降りる。他の選手たちも、ひとりで、あるいは複数人で雑談をしながら、階段を降りてゆく。

 その選手ひとりひとりに名前があり、人生があるのだ。

「それじゃ」

「明日は良いレースをしよう」

 と、それぞれチーム控え室に入ってゆく。

 予選上位に入れたことで、チームの雰囲気は明るいものだった。

「ようし、景気づけにぱーっとやるか!」

 とレッドブレイドの監督の優は言う。ただし。

「酒はなしでな!」

 まだツーリングカーの予選が終わっただけで、これからが長いのだ。チームとして厳しく禁酒令を出している。

 それでも、ぱーっとやれるのは嬉しいものだった。そのために焼肉店を予約している。

 ウィングタイガーの方でも、

「景気づけに、お寿司をいただくわよ!」

 と明るくいって、Yeah! と明るい返事が返ってくる。

「でも、酒抜きでね!」

 と、こちらも厳しい禁酒令。それでもやっぱり、美味しいお寿司をいただけるのは、嬉しいものだった。

 ソキョンはこのために寿司屋の席を予約していた。

 一旦宿泊ホテルに戻って、着替えをして、しばし休憩して。チームで予約した店に赴いて。

 明日のレースのために、景気づけに、みんなで美味しく賑やかな一席を楽しんだ。


 翌日、Day3。

 景気づけの一席は90分で終え。ホテルに直帰。

 それぞれすぐに休んで、朝を迎えた。

 チームで朝食をとる。ウィングタイガーとレッドブレイドの宿泊するホテルは別々ではあるが、他の参加チームも宿泊しており。顔を合わせれば、軽くではあるが挨拶もする。

 第1グループは7時にビル入りする。ウィングタイガーとレッドブレイドの第2グループは9時にビル入りする。

 ホテルからビルへは、主催者がチャーターしたバスで移動する。ビルは大通りに面しているが、バスは裏通りに入り、チームはビル裏口から入る。

 午前9時になった。

 第1レース。白熱したレースが展開された。2階中ホールの観客たちも好レースに盛り上がった。

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