第1章 The game begins 3
ちなみに、彼女が今季のForza Sim Racingの日本リーグのチャンピオンなのだ!
「Dragon、追い打ちをかけることになるけど、容赦しないよ!」
と、ヤーナは溌剌と強気なことを言う。
「リーグ戦じゃ悔しい思いをしたけど、このカップ戦で取り返すよ」
と、龍一も負けじと返事する。
「ふふ、楽しみにしてるよ」
(おうおう、怖い顔しやがって)
よおーと言った、少壮のチーム監督の塩谷優(しおや・ゆう)は龍一の面持ちに苦笑を禁じ得ない。
好勝負を期待されながら、片やチャンピオン、片や10位という大差。この試合でリベンジしたいという気持ちが強いのも当然だ。
(だがそうじゃなきゃ面白くねえ)
龍一はなるだけ隠そうとしているが、それでも闘志みなぎるのが見てわかって、優は好もしい印象を抱いた。
あと3人シムレーサーがいる。ふたりは日本人で、あとひとりは黒人男性で。堂島雄平(どうじま・ゆうへい)、ハンドルネームはYouHee。紺野俊哉(こんの・としや)、ハンドルネームなしの実名。アンディ・モイ、ハンドルネームはキングソード(King sword)。
アンディはケニアのeスポーツ選手で、地元ケニアのみならずグローバルに活動している選手だ。チームブレイドから耐久レース助っ人のオファーを受けてこのカップ戦にエントリーすることとなったのだ。
俊哉はアマチュア選手で、社会人実業団の試合で実績を積んで、耐久レース助っ人のオファーを受けた。
だから、ツーリングカーのレースに出るのは、ヤーナと雄平のふたりだった。
雄平の日本リーグのランクは5位だった。
8人のシムレーサーは互いに目配せし会釈するも、見えない火花がばちばち弾けていた。
「ハーイ」
おもむろにショーンが声を出し、手を振り。ヤーナたちレッドブレイドの面々は、笑顔でショーンに手を振り返した。
(グローバルで活躍する人は、やっぱオーラが出てるな)
雄平と俊哉はウィングタイガーのシムレーサーたちの雰囲気に感じるものがあった。リーグで苦戦した龍一ですら、皆と一緒にいるとそれなりの雰囲気になり。チーム名通り、虎に翼を見るようであった。
レストランスタッフが、たくあんつきの2つの白米のおむすびと湯呑に入ったお茶を持ってきた。カースティである。
「腹が減っては戦は出来ぬ、って。アジアにそんなことわざがあるでしょ」
と、白米のおむすびを、上手に箸を使って食べる。他の面々はコーヒーだけであるが、カースティは素直に空腹であることを伝え、おむすびを頼んだのであった。
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