第1章 The game begins 1
ついに迎えたForza Sim Racing Green Hell Cupの開幕。
長い残暑が終わり、涼やかな空気が世間を覆い。オリオン座をはじめ、秋からの星座が夜空に燦燦と煌めくようになったころ。
HOM電気が貸切るビルのロビーでは、出会いや再会を喜ぶ声があちらこちらであがっていた。
心地よい秋晴れの日である。ビルは活気に満ち溢れていた。
「Hey Dragon! 久しぶり!」
そう言って溌剌と龍一の手を握るの若い黒人女性。ハンドルネーム、ヴァイオレットガール(Violet Girl)ことカースティ・フリント。屈託のない笑顔と輝く瞳で龍一を見つめる。
「あ、ああ。元気でなにより」
龍一は照れる素振りを見せながらも、笑顔で応えていた。
Dragonとは龍一のハンドルネームで、この試合のエントリーリストでも、そのハンドルネーム、Dragonで登録し、試合中継に表示される。
彼女はイギリス出身で、イギリスのチーム、チームヴァイオレットに所属しロンドンを拠点にグローバルにeスポーツの試合に参戦している。
その傍らでは、白人女性のレインボーアイリーン(Rainbow Eileen)ことアイリーン・エヴァンスとフィチが握手をして再会を喜んでいた。レインボーアイリーンはもちろんハンドルネームだ。
「スパイラル・K(Spiral K)の足を引っ張らないように頑張るわ」
と、レインボーアイリーンはフィチをハンドルネームで呼んだ。フィチは、
「僕も、足を引っ張らないように頑張ります」
と応えた。
レインボーアイリーンのそばには幼い男の子を連れたアジア系女性と、ウェーブする黒髪も艶やかなラテン系の女性がいる。
アジア系女性はアレクサンドラ・羅(ルオ)、レインボーアイリーンのパートナーで、幼い男の子はふたりの息子のショーンだった。
アイリーンとアレクサンドラ、ふたりはレズビアンカップルだった。
もうひとりのラテン系の女性は、アメリカはニューヨークの、レインボーアイリーンの所属するチーム・PRID-e(プライド)の監督で、トランス女性のマルタ・パラといった。
アレクサンドラとショーン、マルタはレインボーアイリーンに付き添い観戦に来たのだが。ウィングタイガーが招待したゲストでもある。
「レース楽しみにしているわ!」
と、満面の笑みでマルタはソキョンと握手する。
最初の握手をし、次いで龍一とアイリーン、フィチとカースティが握手をする。
それから、チーム関係者それぞれと握手を交わす。
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