第4章 Touring car final 3

 ゲームを決勝レース待機画面に切り替え、一旦シムリグから立ち上がる。

 オープニングセレモニーだ。

 音楽が鳴り、実況のヴァーチャルチューバ―の実況が響く。まず風画流。

「グリーンヘル・カップ、ツーリングカー決勝レースがスタートです!」

「地獄のレースの第一関門! 誰がトップで駆け抜けるのでしょうか!」

 会場の様子が映し出される。

 数名の選手が、片膝をついている。ウィングタイガーにレッドブレイドの2名も。

 一瞬、スイカの断面のピンバッジも映し出された。開催スタッフのちょっとした気遣いだった。

 会場の音楽の音量が下げられて。選手紹介がはじまり。紹介された順にシムリグに着く。

 やがて選手紹介も終わり。配信場面はスターティンググリッドに切り替わった。

 24台のマシンがスタンバイしている。外は暗くなっているが、それとは対照的に、ゲーム内の空は青空。雲が思い思いの形になって、空を泳いでいる。絶好のレース日和だ。

 チーム控え室のクルーたち、2階中ホールの観客たち、配信の視聴者。じっと画面を見据えている。

 選手の使用するマシンが映し出され、それから各視点に。ある者はボンネット視点、ある者は運転席視点。各自使いやすい視点でプレイする。

 画面の真ん中に数字が出る。まず3。オレンジのリングが数字を囲み、時計回りにリングが回りながら、カウントダウンに合わせて消えてゆく。

 3、2、1……。

 GO!

 エキゾーストノートを響かせ、各車一斉にスタートする。

「Go go go!」

 ソキョンはしょっぱなから発破を掛けた。龍一もフィチも、イエッサー! と応える気持ちでアクセルを踏みつけた。

 まず第1コーナーに飛び込んだのは、赤と黒の、ヤーナのアウディ・RS3 LMS、次いでフィチのヴェロスターN、雄平のアウディ、龍一のシビックタイプR。

 5位には第1レースウィナーのRacingBall。これもぴったり張り付く。

「上手くスタートダッシュを決めたのは、Honey Bear選手! 続くはSpiral K選手に、YouHee選手、Dragon選手と続きます!」

 と風画流。

「おっと、後方で接触、数台が絡むアクシデント!」

 と夜香楠。

 その通り、後方で数台のマシンが接触して、くるくる回りながらコースアウトしている。

 それを尻目に、マシンの集団は駆け抜けてゆく。

「Shit!」

「くそ!」

 コースアウトしたマシンの選手やチームクルーは悔し紛れの言葉を吐き出す。

 幸いひどいダメージはなく、コースに復帰するが。上位入賞は絶望的となった。

「さあさあさあ、ぶっちぎっちゃうよ!」

 ヤーナはしょっぱなから飛ばす。後ろもよく着いて行っている。第2レースと違うのは、5位以下もよく着いて行っていることだ。

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