プロローグ 4

 なのに、あろうことか龍一は今シーズン不振に陥り、優勝なしの、表彰台回数もわずかという有様だった。それに対し。

 チームメイトで友人のユン・フィチは、韓国リーグに参戦し、2勝、表彰台率は9割をマークし、見事シーズン総合1位、チャンピオンを獲得したのだ。

 この落差はどうだろうか。

 リモート所属とはいえ、江洲葉優佳さんという、日本人マネージャーもつけてもらい。ビデオチャットでチームと連携し、コーチが走りをチェックし、アドバイスももらって、トップチーム所属選手として、優遇されていたのに。

「最後のチャンスとして、グリーンヘル・カップでの成績次第では、契約更新を考えてもいいわ」

 と、ビデオチャットでのチームミーティングで、厳しい口調で言われ。忸怩たる思いを抱きながら、厳しいソキョンの温情に応えねばならない義務も背負うことになった。

「ただし、契約金は下がるわよ」

 とも付け加えられたが、文句は言えない。

 龍一は無名のアマチュアからこのチームに縁あって加入し、チームが好きになり、なるだけ長くいたいと思っていた。

 サッカーでいうバンディエラのようになれればよかったのだが、それはフィチに譲ることになり。自身は温情にすがらないといけない。

 忸怩たる気持ちは募るばかりだ。

 今日はレースのない日曜日で、休暇日なのだが。自主的に練習をしていたわけだ。

 ちなみにグリーンヘル・カップとは。

 プレイするゲームは、Forza Sim Racing。ニュルブルクリンク・フルコースにて、ツーリングカーで3周のスプリントレースをし。

 その翌々日に、GTマシンで24時間耐久レースを戦うという。

 過酷なeスポーツおよびSim racingの試合のことだった。

 主催は日本のHOM電気(エイチ・オー・エムでんき)。家電およびPC、ゲーム機器を扱う量販店だが。

 かつてHOM電気の主催する、ラリーゲームの試合に参加したこともあり。縁がある会社でもあった。

 この試合、なんと太っ腹なことに、ビル丸ごと貸し切りで開催されるのだ。

 場所はラリーゲームの時とは違い、東京でなくある地方都市だが。その地域でも大きめのビルを貸し切り開催にこぎつけたのだ。

 最上階の大ホールにはSim racing用のシムリグが並んで置かれ。

 それより下の階の各階の各部屋がチーム控室および休憩・睡眠のための部屋として使用される。

 有観客試合であるが、観戦は2階の2つの中ホールにてモニター観戦となる。

 もちろんこの試合は動画配信サイトでも放送される。

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