第4章 Touring car final 17

 5位以下の選手と入れ替わりに、ウィングタイガーとレッドブレイドのクルーがやってくる。雄平はチームクルーの集まりの中に入った。

 25台のシムリグ群から出て、3人は表彰式のためのスペースにゆく。クルーはシムリグ群の中で、やんやの喝采だ。

 モータースポーツの表彰式ではシャンパンファイトがつきものだが、この試合に関しては、そばに電機・電子機材があるので、シャンパンはなしだった。

 その代わり、金、銀、胴の、この試合のために特注でつくられたメダルが授与される。

 もちろん賞金も出る。賞金は後日チームの口座に振り込まれる。

 表彰式スペースの表彰台に上り、ゲームの中に出てくるレーシングスーツを着た、男女のコスプレイヤーがメダルの乗った銀の盆を持ってやってくる。盆を持つのは男性の方で、選手の首にメダルを駆けるのは女性の方だった。

「失礼します」

 と、盆からメダルを取り、3位のフィチから首に掛けてゆく。

「ありがとうございます」

 とフィチは笑顔で、日本語で応え。同じく2位のヤーナもメダルを首に掛けてもらい、

「ありがとう」

 と日本語で応えた。

 そして1位、龍一。龍一は女性コスプレイヤーにメダルを掛けてもらい。顔を赤らめて、

「あ、ありがとうございます」

 と、少しどもり気味に、照れくさそうな素振りを見せた。

「本当にウブねえ」

 とソキョンは好もしく微笑んだ。結果を出すのはもちろん、スキャンダルを出さない真面目さも兼ね備えた龍一は貴重な人材ではあった。

 メダル授与を終え、男女コスプレイヤーは表彰式のそばに並んで立って、クルーたちと共に拍手する。

 それから表彰式3名の記念写真も撮り。インタビューだ。まず夜香楠がフィチに。

「Spiral K選手、3位入賞おめでとうございます。ご感想をお聞かせください」

「……そうですね、本音を言えば勝ちたかったので、3位には満足していません。個人の試合は、この試合が公式戦最後なので、来季にこの悔しさをぶつけたいと思います」

 と流暢な日本語で応えた。

「やはり韓国チャンプとして、1位以外はビリと同じという気持ちですか」

「まあそうです。常日頃監督からもそう言われていますし」

 ここで少し笑いが起こった。

「ちょっとー、それじゃあたしもビリってこと?」

 とヤーナが割って入る。

「YouHeeはチームオーダーで後ろ抑えたんだからね。うちらにも感謝してほしいもんだわ」

 大きめの笑いが起こった。クルーたちと一緒にいる雄平も苦笑い。

「あ、そうだったんですか、それは、ありがとうございます……」

 と応えるのは龍一だった。

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