第2章 Touring car qualifying 4

 スタッフ専用の控え室では、ソキョンたちがノートPCを見据え、優佳はタブレットを手に予選開始をSNSで告げる。

 ノートPCはブラウザを2つに分け、龍一とフィチのライブ配信を映し出す。

 ショーンはベッドでよく眠り、マルタが付き添う。

 テレビの方では、複数のマシンが走っているように見えるが、接触はなくゴースト設定で透り抜けてゆく。

 ウィングタイガーのシビックタイプRとヴェロスターNはGPコースのメインストレートを駆け抜け、ヘアピンの第1の右コーナーを抜け、続くヘアピンの左コーナーを抜ける。

 シビックタイプRは5ドアハッチのシャープスタイルに、レーシングマシンらしい大きなリアスポイラーを装着している。

 ヴェロスターNは同じ5ドアハッチながら溌剌さを感じさせる短めのホイールベースのコンパクトボディに、リアのドアにこれまた大きなスポイラーを装着している。

 白地に、左の運転席側に赤と青のラインがノーズからリアテールにまで伸び。ボンネットの空いた左側に、赤く、後ろ足で立つ翼のある虎の勇ましい姿の、チームのエンブレムが貼られ。ルーフとドアには台湾のゲーミング機材の会社であるAVP Gamingのロゴが。次いでM&D motorsのロゴがあり、その他スポンサー企業のロゴが各所に貼られていた。

 序盤のGPコースは近代的なサーキットだ、全体的に走りやすく、見晴らしもいい。

 控室でスタッフたちとともにノートPCとテレビを交互に見据え、優も2台のRS3 LMSの走りを見守る。

 アウディ・RS3 LMSは赤と黒の、2色のデザイン。フロントは広めのグリルのいかつそうな顔つき、全体的に鋭角的なデザインで力強さを感じさせる。そこに大きめのスポイラーが装着され、ヨーロッパ車らしい威厳も感じさせた。

 ボンネットと左右の前のドアにはメインスポンサーのエナジードリンク、ゾンネエナジーのロゴが貼られていた。

 俊哉とアンディも、スタッフとともに2台のアウディ見守る。

 自分たちは走らなくて楽だとか、暇だとか、そういう気持ちはなかった。

 少しでもコースを頭に叩き込もうと、一緒に走っている気持ちでテレビを見据えていた。

 その左肩には、スイカの断面のピンバッジ。チームメイトはもちろん、ウィングタイガーの選手たちも着けている。

 GPコースはさすが走りやすそうだと思われたが、そこで調子に乗り、不意のコースアウトをするマシンも見受けられた。

「なにやってんだ、素人じゃねえんだぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る