第2章 Touring car qualifying 7
25台のマシンのうち、ノントラブルで帰ってきたのは、18台。7台がミスでコースアウトし、ロスを余儀なくされた。
タイムが表示される。プレイヤー名はハンドルネームで。
トップはHoney Bear、YouHee。そしてDragon、Spiral K……。
「よし!」
優は満足げに頷く。レッドブレイドは1周ながらワンツーで、幸先がいい。それに続くのはウィングタイガーの2台。
「龍一、踏ん張るのよ!」
「そうですよ、頑張ってくださいね!」
無線を通じ、ソキョンと優佳は龍一を励ます。それに対し、
「はい。がんばります!」
という、溌剌とした返事。龍一も、スランプを脱しつつあるようだ。
メインストレートを抜け、連続するヘアピンコーナーを抜けるが。北コースに比べれば、走りやすいことこの上ない。
様々なマシンがコースを駆け、タイムを刻む。
予選時間は3時間だが、3時間走りっぱなしというわけではない。途中シムリグを離れる。生理的なことや、休憩して気持ちを切り替えるためなど。
「もういい、一旦休め!」
どうにも調子が出ず、走りが荒く、クルーからそう指示を受け、やむなくピットインし、シムリグを離れ控室に降りてゆく選手も見受けられた。
シムリグが並べられた最上階試合会場、選手だけではないのは言うまでもない。開催スタッフや審判もいて、選手の振る舞い、違反がないか目を光らせている。
首から開催スタッフ用の名札をぶら下げた開催スタッフが、腕を後ろ手に組み、会場を練り歩いている。
「落ち着いてください、機材には優しく」
ミスの悔しさからハンドルを叩く仕草をする選手もいるが、力の入れ方を間違えば機材破損につながる。それを防ぐために声を掛けることもあった。
もし機材を破損すればタイム加算に加え罰金もあるペナルティーを受けるのは言うまでもなかった。
2階の中ホールでは、椅子が並べられて、観客はスクリーンで予選を観ていた。
1階レストランにも観客はいて、友人知人と談笑をしたり、スマホ片手にコーヒーブレイクを嗜んでいた。
試合のために貸切られビルは、日常から切り離されたeスポーツの非日常の場となっていた。
良い走りをするマシンや、コースアウトするマシンが映し出されて、おお、という声が漏れる。
休憩などでシムリグを離れる場合、いきなりポーズボタンを押して終わるのは禁止され。リアルレースと同じようにピットインをしなければいけないルールがあった。破ればペナルティーである。
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