第20話
どれだけの時間が経ったのか、朦朧とする頭では何も分からない。
甘い痺れはまだ続いていて、体は相変わらず疼いている。
休憩すらなく、先輩は狂ったように腰を振り続けていて、それに答えるように喘ぎ続ける私の声は既に枯れていた。
「んっ、はぁ……まだっ、出てるっ、のっ……分かる? 紅羽っ……あぁっ……ははっ……」
笑っている先輩も、何かに酔った様な顔で私を見つめていた。
ずっと入りっぱなしの先輩のモノが、ずるりと出された。
「はぁ……さすがにちょっと疲れたから、休憩ね」
その言葉に、私の意識は一瞬で途切れた。
微睡みの中、ゆっくり目を開けると、はっきり感覚が戻る。
「あ、目、覚めた? んっ、全然っ、起きないからっ……ちょっと焦ったよっ、はぁ……」
「あぁっ、んっ、やっ、だめっ……」
「何が? ダメなわけ、ないっ、でしょっ……」
また揺さぶられて、喘ぐが繰り返される。
「これだけっ、何日もかけて、いっぱいシてるのにっ……はっ、ぁっ、中の締め付け、相変わらずっ、凄いっ、よ……俺を離したくないって、言ってるよ? はぁ……すっごい、気持ちぃっ……」
「あっ、ああぁっ、ンんっ、せん、ぱっ……」
夢中で腰を振る先輩にしがみついて、気づいたら私も同じように腰を振っていた。
頭が溶けるみたいに、訳が分からなくなっている。
もう、気持ちよくなる以外は、どうでもよかった。
貪るようなキスだけでも達する体は、おかしくて、私も狂っていく。
「ほらっ、名前っ……」
「累っ、累っ、あぁあっ、あっ、累っ……」
「あ〜……紅羽……可愛い……俺だけの……紅羽……ずっと俺のだ……誰にも、誰にも渡さないっ……」
呪いのように繰り返される先輩の言葉。
執着すると言われた事を思い出したけれど、今の私にはそんな事、どうでもよくて、先輩から与えられる快感だけが今の私の全てだった。
何も考えられなくて、先輩だけを求める私の耳に、遠くの方から音が聞こえる。
先輩も私も、気にはするものの、その音に反応はしなかった。
その音は次第に大きくなる。
「累っ!」
「紅羽っ!」
扉の向こうからくぐもった声がする。
先輩が舌打ちするのが分かり、動かす腰の動きがより激しくなって、私は果てる。
大きく息を吐いた先輩が、面倒そうに私から離れた。
疲れきった私の体は、指一本すら動かせず、ただ視線は先輩の姿だけを追っていた。
扉を開いた先輩を押しのけるようにして飛び込んできた二人の人物が、私の視界に入る。
美都と入谷先輩だ。
勢いよく入って来た二人が、私を見て眉を寄せて立ち尽くした。
美都は泣きそうな顔をした。
何でそんな悲しそうな顔をしているのだろう。
美都は私から視線を離して、先輩に歩み寄ると、その頬を叩いた。
「あんた、自分が何をしてたのか、分かってんの? 女の子相手にこんな酷い事……奴隷だから何してもいいって?」
先輩は何も言わない。
「少しくらいは、紅羽を思ってくれているって思ってた私がバカだったっ! あんたなんか、信用するんじゃなかった」
それだけ言って、美都は私に素早く近づいた。
「紅羽、私が分かる?」
冷静に私に声を掛けた美都の声は震えていて、目が少し潤んでいる。
朦朧とする意識の中、私は美都の名前を呼んだつもりだった。
しかし、掠れ切った声は、ほとんど声にはならなくて、薬がまだ効いている私の体は動かなくて。
「累、彼女に何をしたの?」
「見たままだけど? 紅羽は俺のなんだから、俺が何をしようが、りっちゃん達には関係ないだろ?」
「累っ!」
「ていうかりっちゃんさ、奏夢の奴隷に同じ様な事しといて、俺に何か言える立場じゃないでしょ?」
言われた入谷先輩は言葉に詰まる。
二人の会話に驚いた様子もない美都は、何があったのか知っているんだろう。
どんどん眠くなって来て、瞼が落ちてくる。
そんな中、先輩が私に近寄ってくる。
止める美都には目もくれず、先輩はしゃがみこむ。
「紅羽……ごめんね……」
先輩の冷たい手が、私の髪を撫でる。
薄れていく意識の中で、小さく「好きに」と「ごめん」だけが聞こえた気がした。
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