第31話

二人の甘い声が響く部屋。



いまだにこの恥ずかしさには慣れないけれど、それでも愛おしい人の温もりを感じられる事が嬉しい。



「んっ……ぁ、くれ、はっ……出、すっ……よっ……」



「あぁっ、ンっ、累っ……ああぁっ……」



激しく小刻みに動かされ、打ち付けられた衝撃に、体の奥が熱く滾る。



ビクビクと身体を震わせ、荒く息を吐く。



「はぁはぁっ……紅羽、大丈夫?」



「はぃ……」



気持ちいいなんて、普通の状態では言えないけど、それを伝えるように、先輩に自らキスをする。



「大胆だね……まだ、足りない?」



「ち、違いますっ……」



「俺はまだまだ全然足りない。ずーっと抱き続けてたいよ……」



恐ろしい事を呟いて、優しく笑う先輩の言葉に身動ぎするけれど、それが許されるはずもなく、抱きすくめられてしまう。



心地いい心音と呼吸に、眠くなってくる。



先輩の匂いに包まれて、目を閉じる。



頭の上で規則正しい寝息を立てている先輩を、目を開けて見上げる。



綺麗な顔が近くにあり、男らしさもありながら、改めて美人だなと感心してしまう。



起こさないように先輩の頬に触れ、私を宝物だと言ってくれる、この愛おしい人にまたゆっくり口付ける。



「ンんっ! はっ、ぁ、ぅんんンっ……」



寝ていたはずの先輩の手が、逃がさないとでも言うように私の後頭部を押さえる。



「これは、誘われてるって思ってもいいんでしょうかね、お姫様?」



「ち、ちがっ……ゃ、あっ……」



いつの間にか組み敷かれていて、身動きが取れずに先輩の手が体をいやらしく這い回る。



「紅羽……一生愛してるから……俺の傍からいなくならないで……」



不安そうに言って、額をくっつける先輩に私は笑った。



離れる事のないように、先輩の首に手を回し、キツく抱きしめた。



こうやって少しずつ不安や辛さを拭い合いながら、寄り添って歩いていけるよう、先輩からの愛を全力で返して行こう。



一緒に幸せになるって約束したから。










[完]

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虚無の果て 〜睦月紅羽の場合〜 柚美。 @yuzumi773

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