第8話

彼が先輩で、生徒会長だと知ったのは、出会って少し後の事だった。



女癖が悪く、来る者拒まず去るもの追わずで、それでも男女問わず人気があるのは、持って生まれたカリスマ性と、体から滲み出る色気なんだとかなんとか言っていた気がする。



色々物凄い人なんだという事は、話を聞くだけで何となく分かるけど、帝王と言われていると聞いた時には、妙に納得した。



やりたい放題だし、強引だし。なんでそんな人が私なんかに。



私より綺麗な人や、色気のある人ならいくらでもいるし、今までのタイプと違う珍しい相手で遊ぶって理由なら、もう解放して欲しい。



「去るもの追わないんじゃなかったの?」



草陰に隠れながら、私は周りをキョロキョロして、警戒しながら目的地へ向かう。



今日は有難い事に、1度も会長に会わずにすんでいる。



幸か不幸か、私は人より小さいから、隠れられる場所ならたくさんある。自慢にはならないけど。



しかし、私には彼の他にも、敵はたくさんいる。



女子には刺さるような殺気を含んだ視線を向けられ、生徒会のメンバーは私を見つけると、すぐあの人の所へ連れていこうとする。何度も連行されそうになって、その度に逃げるように隠れるのだ。



あれほどまでに平和だった生活が、あっという間に変わってしまった。



何もかもあの暴君のせいだっ!



「確かに格好いいし、ぇ、えっち、だって、き、気持ちぃけどさぁ……」



自分で言ってて赤くなる。ブツブツと呟きながらも、周りを警戒する事は忘れない。



図書室へ続く廊下に差し掛かり、慎重に曲がり角を曲がる。



「よし、あと少し」



「何があと少しなんだ? ん?」



「ひあぁっ!」



後ろから耳元に響く低い声。



それと同時に耳を甘く齧られて、素早くその人から離れて耳を押さえる。



きっと今私は真っ赤になっているだろう。



ワナワナと震えながら、口をパクパクしている私を見下ろすその人の目が、艶を持ちながら妖しく揺れた。



この目は嫌だ。



私までおかしくさせるから。



この目で見つめられると、体が熱く疼き出すから。



「やっと見つけた、栞」



優しく甘く、それでいて有無を言わせぬ声音が耳を支配する。



ジリジリと近づく会長と同じように、私は後ろへ下がって行く。



「逃がすかよ……」



「ゃあっ……」



素早く腕を取られ、抱きあげられる。



「やっ、下ろしてっ……」



「下ろしたらお前、逃げるだろうが」



逃げたって、逃がしてくれない癖に。何が去るものは追わないだ。めちゃくちゃ追われてる私がいるのに、撤回するべきだ。



ムスッとする私を抱っこするように抱きながら、来た道を帰る。



「機嫌直せって。何怒ってんだよ」



「……あなたが、それ、言います?」



「ははは、まぁ、そうだな」



何が楽しいのか、口角を上げてニヤニヤしている会長の顔をじっと見る。



やっぱり綺麗な顔。羨ましいくらい綺麗。



「あんま見んな。ヤりたくなる」



「ヤりっ!? っ〜……」



会長の言葉に口を閉ざして下を向く。



会長の男らしく長い指が私の顎を撫でて、上を向かされる。



「んンっ……はぁ、ぅンんっ……」



「エロい声出すな、勃つだろうが」



そんな事言われても困る。じゃぁしなきゃいいのに。



こんなずるいキス、するから。



「ヤるつもりなかったんだけどな。勃ったからヤるぞ」



「ゃっ! やだっ! しないっ!」



「ぅるせぇ。黙って抱かれろ」



必死に抵抗するように暴れるけど、いつもの様に意味が無い。



近くにあった保健室へ拉致され、私はベッドへ優しく下ろされ、優しく髪を撫で、甘く微笑む。



こういう突然優しくするとことか、ほんとにずるいと思う。なんでそんな顔で微笑むのか。



自分だけは特別なんだって、期待してしまうから、ほんとにやめて欲しい。



ゆっくりとした動作でキスが落ちる。何度も触れるだけのキスを繰り返し、唇を味わう会長の唇は柔らかくて、頭が麻痺してくる。



「舌出せ」



「ゃあぁ……」



顔を背けると、大きな手がそれを戻して口に指が入ってくる。指が私の舌を捕らえる。同時に唾液が口の端から零れる。



「エロい顔……」



「はぅんっ……んンっ、ぁ、んぅっ、っンンんぁ……」



とろけるようなキスをされ、頭が朦朧とする。



いつの間にかシャツがはだけ、胸を隠す下着が外され、意味をなしていなかった。



「ゃだっ、あっ……」



「いい加減諦めろ。無駄だって分かってんだろ」



会長の言う通りだ。それでも、なんか悔しい。



「ほら、ココとかめちゃくちゃ正直だぞ?」



「やぁっ……ぁあぁああーっ!」



胸の突起と同時に、既に濡れている部分の突起を刺激され、体が激しく痙攣する。



「なぁ……いい加減俺のもんになれよ……」



「……ぁ……」



荒い呼吸をしながら、何とか意識を保ち、会長の言葉を聞く。



「俺のもんになるって、言えよ……」



「ぃ……ないっ、ならないっ……」



「強情っ……」



「ひあぁあっ! ぁ、あっ……」



思い切り会長が押し入って、私は一気に快感に飲まれて体を痙攣させた。



「入れただけでっ、イったのか? 今、中が締まったっ……んっ、はぁ……やべぇ……」



ビクつく私の体が抱き起こされ、膝に跨る体勢にさせられ、ハッと息を飲む。



「やだっ、これ、やだっ!」



「黙れよ」



「っんぅっ、はぁっ、んんっ……」



抱き合うように座る体位。私はこれに弱い。嫌でもいい場所に当たるから。おかしくなるから。



いつもの余裕がない表情で会長が動き始めると、これから自分がどれだけ恥ずかしく乱れるかを思い出し、怖くなって必死にしがみつく。



「ぁああっ、あぁあァっ、やぁっ、っや、あああっ……」



「はっ……っ、っんなに、気持ちぃの? ヨがり方やばっ……」



「いやぁっ……だめだめだめだめっ、気持ちぃの、だめっ、来ちゃうっ……ぁあっ……」



もう必死に快感から逃げようと叫びに似た声を発しながら、次から次から迫り来る快感の波に体を固くする。



それでも、会長は動く事をやめてはくれなくて、嬉しそうに笑って、唇に食らいつく。



「ンんんっ、んっ、ぁんんンっ!」



唇を塞がれながら、また気持ちよさで体を震わせる。



頭が痺れて、何も考えられない。



「あぁっ、あっ、も、っ、やめっ……ぉか、しくな、るっ……からぁ……」



「なれよっ……。っ、ここで、しっかり俺を覚えろ。俺なしじゃ生きていけないくらいに、俺を欲しがれ……」



耳元で呪文のように囁かれ、私は激しく体を揺らして高く鳴いた。

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