第5話

何もかもが初めての事で、頭が上手く機能しない。



男の言う通り、痛みを感じる事は1度もなかった。その代わりに、味わった事のない感覚ばかりが私をおかしくしていく。



自分が自分でなくなるような怖さが、私を不安でいっぱいにしていった。



「すげぇ……ここ、もうぐちゃぐちゃ。栞、分かるか?」



「ぁ……っ、ん、も、やぁっ……」



「お前、なんつー顔してんだよ……誘うの上手すぎだろ」



男から与えられる快感が、全てを麻痺させ、翻弄される。



だらしなく開いた口からは、ただただ甘い喘ぎが漏れるだけ。




――――クチュ……



何度も出し入れされている指が増え、中で蠢く度に体がビクビクと跳ねる。



足を広げられて、その中心に男の顔が近づく気配がし、私は朦朧としながらも目を見開く。



「やっ、やだっ、……っ!」



男の手で拘束されていた両手は、それの代わりに制服のリボンで拘束された。その手を一生懸命男の頭へと伸ばして、必死で男から逃れようとする。



「んあぁっ! やぁ……舐め、なぃでぇ……」



「気持ちいの? そそる顔してる」



「そんな、とこっ……きたなっ、ぃ……ぁ」



「汚くねぇよ。どこも全部甘ぇ……」



わざといやらしい音を立てて、快楽で溶けきったそこを舐めたり吸ったりを繰り返す。それに合わせるように、私の体は身勝手に反応する。



「いや、やだやだっ、あっ、ま、たっ……ぃんぅうっ……っあああぁぁあーっ!」



しつこいほどそこを解され、痙攣しながら何度も果てる。



「ぁ、あぁ、っ、はっ、ん……」



荒い息を何度も繰り返し、涙でドロドロの顔に優しいキスが落ちる。



「マジで可愛いな、お前。やべぇわ。俺、栞にハマっちゃったわ」



甘く囁く悪魔に、私は朦朧としながら視点の定まらない目で男を見る。



どこまでも綺麗で妖艶な男。



どうせ女には苦労してないだろうに、何故私みたいな普通の女に、そんな甘い言葉を囁くのか。



――――どうせ飽きたら、捨てるくせに……



逃げる事をやめてしまった舌を絡め取り、深いキスをし、カチャカチャとベルトを緩める男をぼんやり見つめる。



「そのまま、力抜いとけよ……」



うっとりした表情で、自分の唇を舐める男がニヤリとした。



「ぅ……ぁああっ……ゃああぁ……」



下腹部が圧迫感に襲われ、嫌でも体に力が入る。



「んっ……はぁ……きつっ……力、抜けっ」



「ゃ、む、りぃ……ぁあ……」



男の舌打ちが聞こえ、また唇が重なる。深く貪る男の柔らかい髪が頬をくすぐる。



何度も口内を暴れ回る舌に、どちらのともつかない唾液が口の端からこぼれ落ちる。それすらどうでもいいかのように、熱い口付けは続いた。



その気持ちよさに、力がゆっくり抜けていく。



「っ、狭っ……はあぁー、全部、入った……」



恍惚とした顔で言われ、涙で滲む目で男を見る。大きな手が私の腰を掴み、自らの腰を動かし始める。



「ぁ、あっ、ん、んンっ、ぁあ……」



「ん? 気持ちい?」



いつの間にか、私は男の首にしがみついて頷いていた。



優しく囁いてくる男が、触れるだけのキスをする。そして、恋人にするように、鼻を擦り合わせ、優しく微笑む。



「じゃ、もうちょい早く動くぞ」



「ンあぁっ! っん、はぁ、っ、ぁあ、あっ」



「栞っ、栞」



何も考えられなくなるほど、体を揺さぶられ、何度達したか分からない。頭も体もぐちゃぐちゃに乱され、必死で男にしがみつく。



「拓斗」



低くそう囁かれ、揺さぶられたまま男の顔を見る。



「名前……呼んで……栞」



「……た、くと?」



「っ!? くっ……ぁっぶねぇ……想像してたより、やべぇわ……」



小さな声で「イきかけた」と笑う男。



先程より速さを増して動き出す腰の動きに合わせるように喘ぎが漏れ、また何度も体中に電流が流れる感覚が走る。



体をビクつかせ、それでもまだまだ欲しくて、腰が勝手に動く。



「っ……栞っ」



「たく、とぉ……」



甘えた声を出せば、男――拓斗は嬉しそうに笑って触れるだけのキスをする。



「ククッ……栞ちゃんは快楽に忠実だな」



「だっ、てぇ……ぁ、これ、きもちぃ……もっとしてぇ……」



もう自分が何を言っているのか分からず、ただ本能のままに拓斗に快楽をねだる。



再び動き出した腰に体が悦ぶように波打つ。



激しい律動の後、私は悲鳴にも似た声を上げ、果てた。



薄れる意識の中、拓斗が何か言ったような気がしたけど、もう私には何も分からない。

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