第4話

気づけば腕を取られていた。



「ぃたっ……」



強い力で腕を握られ、痛みで顔が歪む。



「お前、見ない顔だな。1年か?」



綺麗な顔が近づき、低い声がする。



――――ペロッ。



「ひっ!?」



突然耳を舐められ、私は拘束されていない手で耳を押さえて、小さく悲鳴をあげる。



「答えろ」



怖くて恥ずかしくて、私は頷くしか出来なくて、涙がじわりと浮かぶ。



「んな顔して泣くな。食いたくなる……」



色々な事が巻き起こって、私の頭はパニックだった。早くここから出たい。



そんな私の願いが叶う事はなかった。



「さて、女に逃げられた責任は、どう取ってくれるんだ? ん?」



そんな事を言われても、私にはどうしたらいいかなんて分かるはずもなく、目の前の男が怖くて涙がこぼれ落ちる。



「だから泣くなって……」



泣きじゃくる私の涙を拭うように、男の唇が顔中に降る。そしてそのまま、私の唇は奪われた。



突然の事に、目を見開き、呆然としている私をよそに、男のキスは啄むものから、ねっとりとした深いものになる。



「っん……っ……ゃ、んぅっ……ンんっ」



「体だけじゃなくて、舌までっ、ちぃせぇな……何? 感じてんの?……んン?」



「ゃ、ちがっ……ぁンんっ……」



大きな体に抱きすくめられ、唇ごと全部食べられてるのではないかと錯覚するほど、激しく、でも丁寧にキスが繰り返される。



「よっと」



「ん、やぁっ……」



溶けそうなくらい熱くなった唇が離れ、男にそのまま抱えられる。抱っこされているという方が正しい。



息をするのも必死で、抱き上げられた高さに男にしがみつく。



「あんま煽んなよ……優しくしてやれなくなんだろ」



耳元でクスリと短く笑うと、男がまた耳に小さくキスを落とした。



「お、下ろしてっ! ゃだ、っ……」



背もたれのないベンチに寝かされる。下ろしてくれたはいいけど、そういう意味じゃない。



自分より倍はある男が、私の上に覆い被さる。私は自分の身を守るように体を捻って男を見上げる。



何をされるかくらいは、さすがの私でも想像はつく。だからこそ、怖くて震えと涙が止まらない。



「お前、それ逆効果だぞ」



それとは何の事を言っているのか分からず、答えを求めるように男を見つめる。



「女が自分の下で組み敷かれて、震えながら涙目で自分を見上げてくるとか、男を煽るだけだっつってんの。分かるか?」



「……わ、かりませっ……」



「男からしたら、むちゃくちゃに汚したくなる。特にお前みたいな、何も知らなそうな純粋な女なら尚更だ」



恐ろしい事を言われ、私は精一杯首を横に振る。



「残念。もう逃がしてやんねぇよ。大人しく俺に食われてろ……」



「や、やだっ!」



「大丈夫だ、痛くしねぇから。どうせお前処女だろ? ちゃんと優しくしてやるよ」



会話になってなくて、必死に抵抗するけど、体格差、力の差は明らかで。



「やめて欲しいなら、名前、教えろよ」



「っ……し、栞……です……」



「栞……いい名前だな……」



名前を優しく呼び、優しく笑う男に目を奪われている間に男の唇が首筋を這い、手はスカートへ伸びる。



「待ってっ! や、やめて、くれるって……」



「冗談だろ? こんな美味そうなもんが目の前にあんのに、食わねぇとかねぇだろ。もっとって自分から言うくらい、気持ちよくしてやるから、お前は俺に任せてればいい」



謎理論の後に思考が置いていかれている私の唇が強引に塞がれ、口内を犯される度、甘い吐息が漏れる。



――――怖いっ、いやだっ!



両手を頭の上で拘束され、唇を塞がれたままシャツが下着ごと捲られて、お世辞にも大きいとは言えない胸が露わにされる。



「いやっ、やだやだやだ、やめてっ!」



「やめるかよ。しかし、どこもかしこも可愛いなお前。ここも美味そうな色して、俺を誘ってんぜ?」



そう言って男が胸の突起を口に含んで舌で転がすと、暖かい舌の感触に、体がゾワリとしてまるで自分の声では無いような高い声が出た。



「ひゃあぁっ!」



体がビクリと跳ね、拘束された手に力が入る。



両方の胸を交互に唇で弄ばれている間も、男の手は止まらず、スカートの中へ容赦なく入ってくる。



身を捩って逃げようとした私の腰を、いとも簡単に引き戻し、あっという間に下着が脱がされる。



「ほっせぇ腰だな……体もちいせぇし、俺が抱いたら、壊れんじゃねぇか?」



「ぃやぁ……っ、はなし、て……」



「壊れんなよ……栞ちゃん」



何が楽しいのか、男は悪魔のような笑いを浮かべながら言った。

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