第七章

第26話

放課後。



校門がザワついていて、何かあったのかと思いながら、帰る為にそちらへ足を向ける。



校門を挟んだ向こう側の道に、高級車であろう車にもたれかかりながら、高そうなスーツに身を包んでポケットに片手を入れて立っている人。



その姿が目に入り、心臓が飛び出すかと思うくらい激しく高鳴る。



どうしてこの人は、私をこんなにも夢中にさせるのだろう。



会いたくて、会いたくて、たまらなかった愛しい人。



「栞」



優しく笑って私の名前を愛おしそうに呼ぶ、低く色気のある大好きな声。



私は人前だという事も気にせず、拓人に抱きついた。



「おかえり、栞」



「ただいま。拓人もおかえりなさい。こんなところまで、どうしたの?」



私を抱きしめながら、髪を撫でて、ふわりと笑った。



「会いたかったからな。仕事早く終わらせてきた。お前の様子も気になったし」



ギクリとしながらも、額にいつもよりゆっくり落ちるキスに酔いしれてしまう。



抱きしめられ、私は拓人の匂いに包まれて幸せな気分になった。



その時、拓人が誰を見つめていたのかも、知らないで。






次の日、私は生徒会室に入って固まった。



「な、んで?」



「よっ。久しぶりに座ったな、ここ」



当たり前のように会長の椅子にすわる拓人に、目を丸くする。



この人は、何をしているんだろう。



「た、拓人、仕事は?」



「あぁ、今は一段落した」



だからって、こんな所にいていいのだろうか。



嬉しいけど。顔が緩むくらいには。



「可愛い顔で、喜ぶなよ」



「だって、嬉しい、から」



ふっと笑った拓人が椅子を少し引いた。



「栞、おいで」



手だけを広げて私を甘く呼ぶ。



その甘さに引き寄せられるように、私は拓人の膝に跨る。



「なんか、懐かしいな。この椅子でも、何回もヤったの覚えてるか?」



「は、恥ずかしい事、言わないでっ……」



ちゅっと小さなキスから、深くトロけるようなキスに変わる。



「こ、んな、キス……されたらっ……」



「ん? 何……シたくなる?」



体が熱くて、奥が疼いてくる。



「ねだってみ?」



「ぁ……たく、とっ……」



「おら、言えよ……俺が、欲しいんだろ?」



首筋を舌でなぞり上げ、耳を咥えらる。



ゾクリと体が痺れる。



「拓人っ、ほ、しぃ……おねが、い……」



「よくできました。可愛いな、栞は……」



またキスをされ、スムーズに服が肌けていく。



胸の突起は、もう拓人に触られるのを心待ちにしているかのように、立ち上がっている。



息を吹きかけられるだけで、体を揺らして快感を伝える。



「やらしいな、栞は……」



「んっ、あぁっ……」



胸の突起を交互に口で刺激され、口でされている音が生々しくて、私のソコを濡らしていく。



「こっちも一緒にイジって欲しい? 腰、動いてるぞ……久しぶりだしな。でも、そんながっつくなよ……ちゃんと可愛がってやるから」



「あぁっ、んっ、き、もちぃ……はぁっ……」



上の突起を口で刺激しながら、スカートへ手を滑らせる。



太ももを撫でられるだけで、物凄い快感が体を通り抜ける。



「今お前、すっげぇやらしい顔してんぞ。やべぇくらいそそる……」



囁かれ、体が震え、我慢できなくて、既に拓人の大きくなっているモノに、自分のを擦り付ける。



「拓人っ、早くっ、ほしっ……」



「んっ、おまっ……煽んなバカっ……」



興奮している二人の吐息が混じり合い、そのままキスが繰り返される。



「イカせてから入れるつもりだったのにっ、お前が、煽るからっ……」



「い、れてっ、早く欲しぃ……」



「ほんと、お前はっ……」



自分からこんなに激しく求める事があまりないからか、拓人が少し嬉しそうに笑う。



余裕がない素振りで、拓人のモノが私のそこに宛てがわれる。



「脱がすのももどかしいなっ……ちょっとズラすだけでいけるか……」



濡れた部分を隠している場所の布だけをズラして、ゆっくり入ってくる感覚に、ゾクゾクして、体を反らす。



「ああぁあぁっ……」



「ん? もうっ、イった? そんなに俺の、欲しかった? 気持ちよさそうな顔してっ……」



慣れたはずの拓人の形に、震える唇で拓人にキスをする。



「拓人っ、すきぃ……きもち、いっ……」



「俺も好きだ……お前の中、めちゃくちゃ気持ちいいっ、はぁ……んっ……ちょっと、激しくすんぞっ」



そう言った瞬間、思い切り下から何度も突き上げられ、悲鳴に似た声があがる。



気持ちよすぎて頭が溶けそうになり、拓人に必死で掴まる。



「あぁっ、ふっ……んっ、いい声……はぁ……栞っ……マジ、で、可愛いっ……」



「あっ、あっ、あんっ、ンぁっ、あぁっ」



皮膚が当たる音と水音がやたらと大きく耳に届き、恥ずかしいのに拓人に抱かれている事に、嬉しさと興奮で涙が流れる。



「泣くほどっ、気持ち、いっ、のか?」



「気持ちいいっ、いいぃっ……ああぁっ」



拓人に思い切りしがみついて、激しく揺さぶられる。



だから忘れていた。



ここが、生徒会室だという事を。



―――ガチャリ。



何度も体験したデジャブ。



でも、この時の私はそんな事を気にする余裕がない程、拓人のくれる快感と温もりに溺れきっていた。



「え? は?」



「……はぁ〜……まったく、卒業したのに、またこんな場面に出くわすとは……」



呆れた声で心底嫌そうな声を出した樹君と、驚きで訳が分からないといった声を出した辰巳君。



「よぉ、樹っ、ぁ……椅子、借りてんぜっ……はぁ……」



「僕が座るの分かってますよね? 最悪だ……」



「いやいやいや、ちょ、会長、何でこんな状況で普通に会話……ってか、アイツ、何でこんな事になってんのに、やめねぇんだよっ……」



「この人はこれが通常運転なのでね。こんなのは日常茶飯事ですから、僕はもう慣れてます」



苛立っているような声で辰巳君が言った。



当たり前だ。普通、こんな状況はおかしい。



そんな事、拓人には関係ないし、通用しないのだ。



「そこの一年っ、はぁ……混じるかとはっ、言えねぇけどっ、そのまま、見てるか? 首のコレ、付けたの、お前っ、だろっ……んっ」



首のコレとは、何だろう。



「人のモンに変な痕っ、付けるとかっ……可愛い事、してくれんじゃんっ、ふ、ンんっ! はぁ……お前、そんなに死にたいの?」



最後に思い切り激しく一突きされ、大きく喘いで達して、ビクビクと体を震わせる私の頬にキスをし、動きを止めた。



低く唸るように威嚇する声で、辰巳君に言葉を投げる。



息を飲むのが分かる。



明らかに敵意が向けられる。



私ですら体が冷える。



繋がったまま立ち上がり、体をうつ伏せにさせられ、机に胸を付く体勢にされ、後ろから突かれて、また声が出る。



声を我慢する事すら、もう出来なくて、場所だとか、人がだとか気にする余裕もなく喘ぐ。



「早く終わらせて下さいね。僕には仕事がたくさんあるのでね、あなたと違って忙しいんですよ」



もう見慣れた樹君は、何事もなかったように空いている席に座って仕事を始める。



「ほらっ、見せてやれよ、はっ、あぁ……大好きな俺ので気持ちよくなってる顔っ……今回は栞の感じてる可愛い顔っ、見る事くらいはっ、ん、ぁっ、許してやるよっ……」



辰巳君と目が合う。



私は、諦めてもらうという意味でも、彼から目を離さず、拓人に突かれながら喘ぎ続ける。



「あぁっ、すきっ、た、くとっ、ああぁっ、きも、ちぃっ……もっとぉ……」



目を逸らす事はせず、苦しそうに私を見つめる視線。



残酷な事をしているのは分かってる。



でも、ちゃんと分かってもらわなきゃ、いけないから。



私には、もうこの方法しか、分からなくなっていたから。



「辰巳、君、ごめん、ねっ……あぁ、私っ、はっ……んンっ、この人じゃなきゃっ、ん、はぁっ、ダメっ、だからっ……あぁんっ」



私が話をしているのに、後ろからの律動はやまず、快感が体中を支配する。



首に噛みつかれ、それすらも快感で、体を跳ねさせて喜ぶ。



「噛まれて気持ちよくなったのか? 中が締まったぞっ……可愛いな、俺の栞は……」



「あぁっ……んンっ、い、ぃっ……ぁ、気持ちいいっ……ああぁっ……」



もう私の頭には、拓人しか存在しなかった。



この部屋に誰がいて、見られていても、そんな事、どうでもよくなっていた。



拓人が何度も中に欲を注ぎ込み、何度も達する。



「おい、一年、人のモンに手ぇ出す時は、相手をしっかり見極めろよ。次は……ねぇぞ。次は……潰す。覚えとけ」



出て行こうとする辰巳君の背中にそう言った拓人の言葉を聞いて、強く扉が閉じられた。



首に噛み付かれた時に、先程言っていた痕をつけたという話を思い出してハッとする。



電話の時だ。首を吸われた。あの時に付いたのなら、分かりやすい場所にある痕に、鋭い拓人が気づかないわけがない。



拓人はもっと早くに気づいていて、黙っていたのだ。



熱いはずの体が冷えていくようだった。



私が隙を見せたからだ。私の、せいだ。



怒っていたんだ。だから、こんな。



「泣くな……」



「ごめっ、なさっ……ごめん、なさいっ」



入っていた拓人が抜かれ、椅子に座った拓人に優しく抱きしめられる。



髪を撫でる優しい手。



「何で年下なんだよ、お前……。ほんと、隙だらけだな、俺の可愛いお姫様は」



「ごめんっ、なさっ……ひっく……ひっ、嫌いにっ、ならないでっ……ふっ、っ……嫌いにっ、なっちゃ、やだぁ……」



「なるわけねぇだろ、謝んな……。お前はなんも悪くねぇよ……。意地悪し過ぎた、ごめん」



涙を拭うキス。



甘く溶けそうなキスが唇を塞いで、離さないでというように、縋るようにキスをせがむ。



しばらく拓人に抱っこされていて、ウトウトし始めた頃、ようやく空気のようになっていて、うんともすんとも言わなかった樹君が口を開く。



「帰られては? 彼女も疲れたでしょうし。別に僕一人でも仕事は出来ますから」



「さすが有能な会長様だねぇ。頼もしい。んじゃぁ、お姫様は攫って帰ろうか」



私を抱き上げ、扉へ向かう拓人が去り際に口を開く。



「樹、毎回悪いな」



「何がです? 僕は何もしていませんよ。大事な時に、助けられませんでしたしね」



「謙遜すんなよ。ったく、ナイト様は格好いいねぇ。今後も、頼りにしてるよ」



そう言った拓人に、樹君は「光栄ですよ、帝王様」と、皮肉を漏らして少し笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る