第40話 当然!君がいない日々  その一

 でかい目標が、できた。夏休み中のバイトは決めてしまったし。今更、変更をお願いするのも無責任?かと思っていたら!何と!

 奏美ちゃんと彩炎サファイアちゃんと、2人にたかる虫2匹が、俺達の穴を埋めてくれると言う。「ほんと、助かるけど、良いの?」 「一応、海水浴場?まぁ、言っちゃえば、リゾート?夏バイトの定番、経験出来るし、彼も一緒っすから」 「バイト代、ピンでハネ無いっすよね?」 「ったり、めぇだって!舐めんなよ!」 「「「本当!助かる、ありがとう!」」」 バイト問題も片付いた。一応、肩慣らしも済んで、後は、合同練習の数を増やして行くしかない。観客を前にした場数が、如何しても足りていないのは致命的だが、今更の話!出来ることを、煮詰めて行くしかない。

 「此間の、ライブでさ感じたんだが、俺達のオリジナル!一寸さんの趣味に寄りすぎじゃね?」 「嫌いじゃないけど、乗りが、良くないよね」 「メロディメーカーは、ノゾキヤロー、お前ジャン!」 「いっや〜、何時も、一寸さん分かり難いけど、具体的だから」

 「引っ張られるって?」 「そ、言っこと!」 「何時も、悪者は!俺か〜!」

「「それが、君のポジション!大事にしようね!」」 「絶て〜!やだ!」

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 夏の陽射しは、容赦なくアスファルトの道路を焼き尽くす。まだ、朝の内って言う午前8時、海水浴場!もとい!芋磯ビーチに沿って走る県道には、陽炎がゆらめいている。

 営業直前の海の家“第三稲荷丸”には、一寸さん、つまりは俺を除く2バカと、可愛い後輩2人、奏美ちゃんと彩炎ちゃん。それと、2人に集る“虫”こと、“開くん”と“大チャン”の6人が居た。「明日から、10日迄、俺達の代わり頼むぜ、今日は、取り敢えず、俺とカイタローで仕事、教えるから」 「「「「お願いします!」」」」 アルバイトのスタッフは去年と同じ菓心さんと、よし君、以外は新しい人達だった。やる事は、去年と同じ。女子チームは、ウエイトレス!男子チームは貸ボートと時々ウエイター! 「そんで!誰と誰がカップルなの?」 「えっと!奏美と開君が付き合ってて、私、彩炎と大チャンが、付き合っているんです!」 「4人は、同中?」 「そうなんです」「ライラちゃんは、別の中学で、高校に入ってからの付き合いです」 「こっから、近いんだろ?」 「隣り町っす」「俺らの町、漁港しか無いっすから」 「ガキん頃は、こっち迄、泳ぎに来たっす」

「ここで、焼きそば、食った憶えがあるっす」 「へ〜っ、世間は狭いね!」 「馬鹿っ!隣町だ、せっまい世界で話してんじゃねえよ!」 

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 真夏のど真ん中、俺は、部屋に籠って作詞していた。地区予選まで後、1週間を切って、取り敢えず、今日から夏休み!

 ノゾキヤローとカイタローは、急遽、バイトを代わってくれる事になった。奏美ちゃん、彩炎ちゃんカップルズの初バイトに今日、一日中、付き合うらしい。

 そして、俺は、予選突破をかけて、ノゾキヤローが作った、乗りのいいメロディに歌詞を付けている。明日からは、ぶっ続けで練習して、本番に臨む。


   セイレンの居ない夏


 白い砂浜 追いかけっこの夏

 リフレイン 乱反射する音

 触れたマーメイドの 後ろ髪

 追いかける 何処までも

 涯の無い 水平線 その向こうの空

 逃げるように 遠ざかる 風に靡く髪

 追いかける 何時までも

 光の速さで 僕らは飛び立つ

 重力さえも 捉えられない

 僕を眠らせる 魔女のいない夏

 永遠を捕まえに 行くのさ君とね


 砕け散る波 遠回りの夢

 リグレット 纏わり付き迷う

 裸足のエンジェルの 笑い声

 探すのさ 何処までも

 当ての無い 雲の上 その下の海辺

 誘うよに 繰り返す 天使たちの歌

 探すのさ 何時までも

 夢を抱えて 僕らは見上げる

 引力にさえ 逆らっている

 僕を眠らせる 魔女のいない夏

 永遠を捕まえに 行くのさ君とね


 僕を眠らせる 魔女のいない夏

 永遠を捕まえに 行くのさ君とね


歌詞は、出来た!後は、やるだけ!

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 夏休みになった。マー君は、受講勉強を頑張っている。毎月の、月末の報告によると順調に、目標?志望する大学の合格?に、近付いているらしい。勿論!大学に無事、合格、入学して、マー君の目標が、全て達成ではない筈だ。いくら、難関大学だって、それだけの為に、ミー君と私がこんな事になっているのは、納得が行かなすぎる。でも、それを言えば、納得できる理由があるみたいだ。そんなモノ、何処にだってある訳ないのに。

 それでも、マー君の事を恨みに思う気持ちがないのは、私も、きっとミー君も、私たちの繋がりに、お互いに対する拘り?執着?の存在を感じているからだと思う。きっと、運命は、ミー君と私のモノなんだと思う。私達は、運命の二人!じゃあ、マー君は?よく分からないンダけど。“失楽園”の話、例えると、私が“イブ”ミー君が“アダム”そうすると!マー君は、“へび”あぁ!そっか、そうなんだ。

 マー君は、“ルシフェル”さんだったのか!

 色々、納得。今度の電話で、言ってよう。マー君は、きっと、喜んじゃうなぁ。

 ミー君は、如何してるのかな?去年は、海の家で、アルバイトしてたけど。今年も、するのかなぁ。あの綺麗な娘とやっているバンドは、如何なっているのかなぁ?あの娘とは如何にかなっちゃたのかなぁ?信じて?信じても!只、待っているのは辛い。信じて待つ、と言うより、間違いを恐れて、何もしないでいる。こんなんじゃ、ダメと分かっているのに。ミー君以外には、心も体も許さないと決めたのに。周りの圧力に、負けそうな自分が分かる。もし、そうなったって、ミー君は許してくれる。きっと「巣穴に篭って、震えてた俺のせいだから、ごめんね心配掛けて」そう、言ってくれる!分かっているから、出来ない、したく無い。だって、ミー君とちゃんと向き合った時「ミー君は、望んで無かったかも知れないけど、私は、ミー君を裏切ることはしなかったよ!」と、言いたい。

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