第29話君がいなくても過ぎる日々 その七

 今晩は、閑古路倫です。毎度、お世話になってます。今回は、完全なる私の趣味回となっております。チョット、心苦しくもございますがお読みいただけると、大変嬉しいです。

 つまらんと、お思いになられた方々、大変申し訳ありませんでした。この場を借りて謝らせていただきます。 

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 俺達の“工業祭”の幕が上がった。持ち時間は、特別に20分貰えた。特別の理由は、疑うべく無く、カノミーだ。ゲップの素だ。

 滅多に会えない様な美少女JKに、飢えた狼共は、牙を抜かれて、今にも拝み出しそうな呆けた表情を晒していた。

 「今日は、ご機嫌な“工業祭”にようこそ!俺達!“カノミー・ウィズ・サンバ・カメンズ”ヨロシク!」「メンバー紹介から!オン、ギター、ずぶ濡れの男の尊厳!オマタ・カイタロー!オン、ベース、虫眼鏡あるか〜!イサオ・イッスン・タクミ〜!そして、イケテル、ボーカル、イケボ・ノゾキ・アキト!最後、お待ちかね、我らがバンドの女王様!オン、ドラムス!裏も表も(見分けつか)無い、ペッタン・カノミー!」「「「「「ウッ!オーオー」」」」」

 大盛り上がり、大歓声の中、予定の三曲を演奏して、アンコールの嵐の中をステージを降りた。

 最後に、カノミー一人が、ステージに戻って頭を下げてから、手を振りながらステージを降りた。と、思ったら!観客に向かって見事な横蹴りを決めた!細くて長い生脚!黒のレザーのミニスカ?ミニ!スカート?

 「「「「「ウッ!オオオーッ!」」」」」

 今日一の大歓声! 「「「アァッ!ヤラレタ!」」」バックヤードに戻ってきた、カノミー

 「見せパン、見せパン!男って!」

 カノミーは、大満足で「お先に失礼!」と、帰って行った。何なら、菓心さんが車で迎えに来た。「「「有難うございます!」」」立ち去る車に向かって、頭を下げる俺達!このまま、逃亡と思った時.....

 「お前ら!チョット、来い!」声が掛かった。部活の顧問、南郷先生、俺達は、無抵抗で連行された。職員室で正座!説教!一時間!俺らが、職員室を出ると待ち構えた先輩、同級問わず、野郎共が「「「「「紹介しろ!」」」」」と叫びつつ追いかけて来る!

 結局、この騒ぎは、一月近く尾を引いた。

 「「「カノミー恐るべし!美少女JK侮るべからず!」」」俺達に、重い教訓を残し、“工業祭”の幕は降りた。

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 俺は、一人部屋の中、机の前、椅子に座って目の前に広げた教科書を、見ていた。頭の隅っこ?胸の奥?一人の少女が、居座って退いてくれない。左耳たぶ、ピアスに触れてみる。俺は、あの娘を許した証しに、これを着けた筈なのに。あの娘は出て行ってくれない。一体俺は何を許し、何を赦していないのか?胡麻化して見ても無駄な事だ、何が欲しくて、何が諦められないのか?いや待て!何も胡麻化しちゃいない!あの娘が拓磨のものになりたがったから、その、選択を恨んで無いよ、と、俺の諦めを、あの娘に知らせただけじゃ無いか?裏切られたと思っているのか?俺は?あの娘に、嫌、拓磨に裏切られたのは間違いない!それなのに、正直なところ、こうなって、あの娘とのキスを見せ付けられながらも!心底、恨む事ができない、何処か、頭の隅っこ、胸の奥の奥、そこに居る俺の芯の様な俺が言うのだ!彼奴は、俺のためにこうしたんだって!俺が、彼奴らにこんな事をさせてしまったんだと。全てが、お前(俺)の原罪なんだと。だから、諦められない。あの娘との楽しかった日々!苦しかった思い!恋人ごっこの弁当の味!間男として誘惑してみろ、って言う挑発の言葉!友だちだから大切ダヨって!大好きだって!ガッコは言ってくれた!あんなに、切なかった!苦しかった!でも、心から嬉しくて、楽しくて!終わりにしたく無かった。シャボン玉みたいに、キラキラと虹色にきらめく、薄膜に閉じ込められた想い出!

 あの花火の夜に、花火の煌めきと轟音に、微かに振えフッと消えてしまった日々。

 あぁ...俺は、終わりにしたく無いんだ.......シャボン玉の日々を。

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 俺は、教科書を閉じた。「赤点確定!」と頭の奥に響く声を無視してイヤホンを着ける。“The doors ”の“When the musics over “を聴いた。俺の祖父さんが好きな曲。“The doors ”の中でもマイナー寄りの曲だ。こんな時、音楽だけが友だちだ。

 気を紛らす為に祖父さんの事を思い出す。祖父さんは、所謂ミーハーで純粋に音楽が好きと言うより、ゴシップ、スキャンダル好きの下衆い爺いだった。だからの“The doors ”だ。

 ジムとパメラの物語は、胸苦しいほど刺激的で、救いようが無いくらい悲劇的だ。

 二人が愛し合っていた事を、疑う事は野暮なこと。ただ、パメラがジムの死んだ3年後に自殺したのは、ショッキングだがロマンチックの匂いもする。

 何処にしても、“The doors ”は、ジム・モリソンのバンドであり、メジャーなヒット曲はロビン・クリューガーが作ったにしても、ジムが歌わなかったら、此処まで残る事はなかっただろう。そんな訳で、俺は祖父さんのお陰で、立派な下衆ぃ野郎に成長したのだ。

 そして、俺はこの頃の音楽が大好きだ。電子オルガンの安っぽい電子音が、堪らなく心地良い。

 ジムの低くて優しい声に包まれる、不安は無くなるが、物悲しい余韻が残る。

 ジムが27歳で亡くなると、知っているせいかもしれない。所謂、27クラブだ!そして、それより、更に若くして飛行機事故で亡くなられた。ソウル・シンガー、オーティス・レディングは、とても20代前半の男性とは思えない渋味のある声を聴かせてくれる。天才アーティストは本当に凄い!彼の“The Dock of the Bay“はひどく物悲しく心を揺さぶる。

 どんな、人生だったのか?こんな平和な国で、友達との小さな行き違いに悩んでいる事が、申し訳なくなる。でも、彼等は偉大な癒しを俺に残してくれた。いや、俺限定では無いけど!俺は、何か、人に影響を与える事ができるのか?俺の祖父さんの様に、下衆ぃ野郎を作れるのだろうか?んな、役立たず残して何になるって、話しだけど!

 自分の祖父さん、ディスって、心落ち着き今夜は、寝れそうだ。

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 冬休み前のある日、通学待ちのバス停で、寧子に話しかけられた。

 「ねぇ、ガッコ、クリスマスに浦安ランド行かない?」  「それって、寧子と和君のお邪魔虫ってこと?」  「う〜ん、違くないけど、結海と小歳君、それと西城君と一緒」  「Wデートに、お邪魔虫が二人なの?」  「どぉ、かな?西城君は、OKだって!」

 浦安ランドは、夏休みにミー君と行ったところだ!そして、次の日マー君と.......

 「返事は、今じゃ無くていいから、考えてみてくれる?」

 バスが来た!    <<続く>>

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