第5話 シャボン玉の日々 その三

 ミー君と会った翌日、日曜日にマー君から連絡があった。

 「ガッコ、匠から連絡あった?」

 「まだ、無いよ」

 「本当、あいつは愚図ぐずだよな」

 「それよりも、本当にミー君と付き合って良いの、私」

 「僕は、高校の三年間は大学受験に、集中したいんだ」「ガッコに使える時間は、少ないし、それで目標に達せなかったらと思うと....」「だからと言って、ガッコを見知らぬ男に渡したくないから、僕の我儘わがままだけど匠なら我慢できる」

 「私、そんなにモテないよ、豚鼻ガリコだもん!」

 「そんな事ないよ、僕も匠もガッコが大好きだし、君は本当に可愛いよ、見た目も性格も」

 「うん....、信じるよ、でもね、ミー君は友達だよ、マー君とは違う」

 「わかった、でも、誘われたら会って上げて、友達なんだから、その内、三人で会おう昔みたいにさ」

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 ミー君から電話があったのは、週明けの月曜日だった。

 「こ...今晩は、今、だ....大丈夫かな」

 「今晩は、ミー君、大丈夫、この間は楽しかった」

 拓磨が一緒だと、もっと.....と、言いそうになって慌てて口を閉じた。解っていることを、言ったって気まずくなるだけだ。

 「ありがとう、俺もめちゃ楽しかった」

 「それでさ、もしも暇があるならで良いんだけど、文化センター脇の県立美術館、行って見ないかな、と思ったりして見たり」

 「何か、面白い企画やってるのかな」

 「野口雨情と、その時代展」

 「えへへ、JKに、それ誘う?北原白秋じゃなくって」

 「カラタチの花よりシャボン玉が好きなんです、それよりも、童謡の解る工業高校生徒ってどうよ〜」

 「バッカじゃない」

 「頂きました、一度は聞きたいその言葉」

 「ほんと、馬鹿じゃない?て、言うか変態?」

 

 「暇、ないのかな忙しい?もう、俺とは、良い...会わなくて.....本当は」

 「そんな事ない、誤解しないで、友達なんだから会いたいに決まってる」

 「OK,今度の日曜日で、どうかな?」

 「良いよ、9時半の、この間と同じバスネ」

 「了解です、楽しみ〜野口雨情!」

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 翌日の朝、通学のバス待ちのバス停

 「ガッコ、おはよー」

 声をかけて来たのは、私の数少ない友人の一人、河原かわはら寧子やすこだった。

 「寧子、おはよー」

 「なに、ちょっとアンニュイな感じ」

 「マー君が、大学受験に集中したいから、私に使う時間が無いって....」

 「エッ、何、受験って、私たち高一だよ、受験ってこの間、終わったばかりじゃん」

 「マー君は、東京の一流大学を目指すから、今から準備しないと出遅れちゃうんだって」「私、マー君の重荷になりたく無い....」

「でも、会えないなんて不安で、耐えられない」

 バスがやって来て、乗り込んだ後も私の愚痴は続いた。

 「私が、馬鹿だから、同じ高校に行けなかったから.....」

 「ガッコは、馬鹿じゃ無いよ、普通じゃん」

 「でも、もっと努力してマー君の隣にいなければならなかったんだ、今までずっと一緒だったのに」

 「誰もが同じ様にはできないよ、ましてや誰もが行ける高校でも無い、ガッコは頑張ったよ、自分を責めても問題は解決しないよ」

 「うん...、ありがとう」

 「他に、何か無い、嫌なこととか、されなかった」

 ミー君のことは、言えなかった。

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 ガッコに電話した翌日の昼休み、俺たちは、いつもの様に軽音部の部室にいた。メンバーは、俺、ノゾキヤロー、カイタローの3人だ。

 「いつも俺ら一年が占拠せんきょしててさ、先輩達は何処でくつろいでんのかな?」

 「去年、柔道部が、部室でのスモーキングを見つかってから監視の目が厳しくて、学校裏の神社の境内に、憩いの場所が移ったんだってさ」とノゾキヤローが言う。

 「それより、イーサオのミッションは?完遂かんすいしたのかよ」

 「あったり前の、こんこんちきちき大レース、ブッチで優勝」

「おー、やる時ゃ、やるやるシモヘイヘイ」

 「誰が、森の妖精さんだよ」

 「よっ、寸足らずの、死神」

 「いー加減にしろよ、話が進みやしねえ」

 「聞いて、驚け、今度の日曜日に県立美術館ディトだぜ、野口雨情とその時代展」

 「バッカじゃネー、今どき小学生だって行かねーって、そんなとこ」

 いきなり、ディスるノゾキヤロー

 「いや、悪く無いぞ、県美の近くの喫茶店バルビゾン、美味しいよ」

 カイタローのフォローが入った。

 でも、県美って何?どーゆう略し方?

 「バルビゾンの、“晩鐘パスタ”と”落穂カレー“は絶品だ」

 何それ、バルビゾン派、ミレーさんと、愉快なお仲間達のレストラン?

 「二人で頼んでシェアしろ、アーンしろよ、間接キスだ何しろパスタはフォーク、カレーはスプーンだから、同じ道具を使い合うしか無いぞ」

 エッ、また、道具じゃ無くて、食器でしょう!

 「カイタロー、お前、天才か!」

 ノゾキヤローが言うけど、そんなかー?

 「パスタ食うのに、フォークとスプーン使わなかったか?」

 「お前、そんなとこイタリアーナに見られたら、僕ちゃん、おっぱい飲んで、ねんねの時間よ。て、言われっちまうぞ」

 何それー、めっちゃ、突っ込み入れてー

 「すっげ、どうでも良い情報?でも、ありがとうナ?」

 「こんなに、役立つ情報、他にねーぞ、俺達は友ダッチだからな、タダで上げるよ感謝しろよ、ホント二度とねーぞ」

 「この程度が、二度と無いなんて何と薄っぺらい友情だ!」

 「マァ、ネー.......」

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   コレでいいのか?

 

 朝からご機嫌 君に会える

 少し無理して スタイル決めて

 自信は無いけど それなりに

 ほんの少しだって よく見せたい

 中身が大事は 当たり前

 君に惹かれた ポイントだ

 それで笑顔が 好きだなんて 

 チョット 理不尽過ぎるかな


 昨日の夜から 準備して

 大分無理した ランチボックス

 自信は有り有り 味見して

 胃袋まるごと 捕まえてやる

 中身が大事は 当たり前

 君に惹かれた ポイントだ

 それで目元が グッとくるって

 チョット 格好つけすぎた


 とにかく今日は 大事な日

 無理を承知で 作ったチャンス

 自信がどうこう 言ってられん

 惚れた分だけ 惚れさせてやる

 中身が大事は 当たり前

 君に惹かれた ポイントだ

 見かけが良けりゃ なおなおよろし

 本音が こぼれコレでいいのか?

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