第9話 シャボン玉の日々 その七

 ミー君から告白された話は、マー君にはしていない。あの日は、電話の後、泣き通しだった。翌日、目が腫れてしまった。お母さんが、可愛い顔が台無しよって、タオルに包んだ保冷剤を用意してくれた。どうしたの?って聞かれたから、夜中に悲しい小説読んで、泣いたと言っておいた。信じてくれたか分からないが、マー君のことで、何か、あるとは思っているみたい。

 バス停で、寧子に会った。寧子にも、マー君と何かあったの?と、聞かれたから、何も無いよ!と、言っては見たが、信じてくれては、いないようだ。寧子には、ミー君のことを言っていないので、相談することもできない。私の周辺で、マー君の評判が下落している。これも何とかしておかないと、元さやに戻る時、うるさく言われそうだ。順番としては、ミー君のことを話すのが先になるけど、話し方次第でマー君の印象が悪くなってしまう。元カノを友達に「付き合いな」って渡すみたいに、物のように扱ってるみたいに見えるから。本当は、違くて、私と、ミー君のことを其々それぞれに思って、みんなが幸せになる様に考えてくれているのに。周囲の人が何を言おうと、私だけはマー君の味方で居たい。それは、本当の気持ち.....

 でも、もう一つ、気付いてしまった。“レジスタンス”マー君の言いなりに、ならない私!

ミー君との“浮気”楽しんでやる!恋人のマー君と、間男(友だち?)のミー君、二人とも手放さない。

 私は、欲張りに生きてやる!その朝、目を腫らしたけど、心が晴れ晴れと浮き立った、私がいた。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 土曜日にガッコを連れて行く場所の選考は難航した。何しろ、ガッコをその気にさせなきゃ、ならないんだから。少しでも、俺に気があるなら、やりようはあるだろうが、その可能性は100%無い。自分で言って、悲しいけど、正確な?状況分析は勝利への絶対条件だ。

ウチのポンコツ-ブレインは、モチベ最低だ。

俺を心配してくれる、過保護な友人達。尚更だ、二人に“ザマァ”見せてくれる!(本気じゃ無いけど)と、煽ってみても。

 「勝手にすればー」と、連れない返事だ。

 「分かったよ、近所の“うみはま公園

”に決めた!」「あっこなら、俺たちに、お似合いの幼児向けアトラクションが盛り沢山で、お花もキレイだぜ!」

 「異議ナーシ」「右に同じ」

 「オゥ!アンガトネ!」

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 「今晩は、今、大丈夫かな?」

 「ウン、大丈夫!ダヨ」

 俺は、ガッコに電話している。まだ、慣れない、鼓動の音が五月蝿くて、心がざわめいて、ちょっとのことで心臓が止まるんじゃ無いか?くらに緊張している。

 「貴女の、間ぁ、男です」

 「私の、間ぁ、男さん」まぁ、お、と、こ、なんだ?

 「えっ、何か?」

 「何でもない、繰り返しただけ、まぁ、

お、と、こ、って」

 「はい!間ぁ、男です、間ぁ、男から誘惑への、ご招待です?」

 「何で、疑問形?」

 「いえ、コレは、この地方独特のです」

 「方言って、地方独特の言葉でしょう」

 「えっと、そこ突っ込まれると、話しが進みません」

 「あらっ...ごめん...あそばせ?」

 「コホン!貴女の!間ぁ、男、からの、誘惑への、ご招待です」「お受けに、なりますか?」

 「勿論、受け取ります!」

 「それでは、今度の土曜日、朝9時に、この町の“うみはま鉄道”の駅、改札口で待っております!」「当日は、少なくない距離を歩くことになります、動き易い装いをお勧め、いたします」

 「ありがとう、御忠告に従いますわ」

 「それでは、当日、宜しく、お願いします貴女の、間ぁ、男が、ご連絡致しました」

 「ご機嫌よう、お休みなさい」

 「お休みなさい」

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 ガッコから電話があったのは、木曜日だった。

 「今、大丈夫かな?」

 「うん、丁度、一区切りついたところだ!休憩しようと思ったところ」

 ガッコは、機嫌が良いようだ。声の雰囲気が軽くて、明るく感じた。

 「今日、ミー君から電話貰ったよ」

 「そう、それで、どんな用事だったの?」

 「今度の土曜日、朝から会わないかって」

 「ご機嫌みたいだけど、行きたい場所に連れてってもらえるとかなの?」

 「ミー君と会うことは、いつでも、嬉しいよ、なぜ、そんなこと聞くの?」

 「匠と会いたく無いって、この間言ってたから」

 「言ったけど、そのあと、会いたいって、また、会っても良いよねって聞いたよね?」

 「あぁ、その通りだ」

 「ミー君に会うのは、何時だって嫌じゃないよ、でも、傷つけちゃうかも知れないのが嫌だった」「でも、マー君、一緒に謝ってくれるんだよね」

 「勿論、そのつもりだよ」「匠とは、お互いに友達で居たいものね」

 「安心した、でも、近いうちに、二人で会えないかな?」km「電話だと、誤解しちゃうかも?だし、寂しいよ、ずっと会えないのは」

 「分かった、日付が決まったら電話するね」

 「あんまり、待たせないでね」

 共犯者同士の秘密の電話、秘密の約束、ちょっとドキドキしながら、話を終えた。

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 マー君に、ご機嫌だねって言われて、ドキッとした。そんなに分かり易いのかな、私?

それとも、それが分かるくらい、マー君は私に、気を遣っているのかなー?それなら、嬉しいな!

 ミー君と浮気するって件は、ちゃんと話せば分かって貰えると思う。でも、駄目だって言われたら、言うこと聞いちゃうんだろーなって分かるから。私が、ミー君とのことも、何とかしたいから、少しの間、黙っていよう。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


  無いもの強請りの欲張り女


 どうしたって 出来ないものはある

 そんな当たり前 やっと見つけた

 真実ほんとみたいね 子供が玩具おもちゃ

 見つけたみたいな そんな眼をして

 私を観てる くれないのなら

 奪ってみせる 不可能なんて

 無いよ私に 出来ないなんて

 死んでも言わぬ やる前から

 出来ないやれない 当たり前

 それをするのに 価値がある

 無い物 強請ねだりの 欲張り女

 誰が言っても 気にしない

 あなたが言っても 気にしてあげない


 お前にそんな 価値があるのかって

 そんな当たり前 見れば分かるわ

 分からないなら 豚に真珠ね

 驚いたような そんな眼をして

 私を見てる くれないのなら

 奪ってみせる 不可能なんて

 無いよ私に 出来ないなんて

 思っても言うか 手も付けないで

 出来ないやれない 当たり前

 それをするから 価値がある

 無い物強請りの 欲張り女

 可愛いだけの 女では

 あなたが見たって 欲しくは無いでしょ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る