第11話 シャボン玉の日々 その九
「ミー君、月曜日の朝、何時のバスに乗るの?」
「ウェッ、朝は早いよ、毎日同じ、七時のバスで学校に行くョ!」
「七時なら、大丈夫、間に合うょ」
「何のことかな?」
「お弁当、実は、私、毎日、自分でお弁当作っているの」「それと、私のお兄ちゃんが、今年から東京の大学行って、お兄ちゃんのお弁当箱が空いてるの」
「エッ、それって、俺に弁当を作ってくれるってこと、で、良いの?」
「マー君は、朝、六時のバスで登校して、自習室で勉強するって」「だから、お弁当渡せなくって」「マー君の代わりだし、お弁当箱もお兄ちゃんのお下がりだけど.....良いかな、貰ってくれるかな?」
「拓磨の代わりじゃあ、嫌だけど、弁当は俺用に作ってくれるんだろ、拓磨の好物ばかりじゃ無く」
「勿論、ミー君は何が好きなの?」
「玉子焼き、甘いやつが好き」「あとね、ほうれん草の胡麻和え」
「嫌いなものは?何かある?食べれない物とかはない?アレルギーとか?」
「強いて言えば、豚足かなぁ?」
「えへっ、多分、豚足はおかずにしないと思う」
「じゃあ、大丈夫、弁当箱は次の日返せば良いの?」
「うん!それで良いよ」
結局、ガッコのお弁当は、夏休み前まで続いた。
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マー君からの電話は、ミー君と会う日まで無かった。マー君は、土日で有れば、夕方近い時間帯でも捕まえることが、出来たりする。結局は、マー君からの電話より、私のデート報告が早かった。
日曜日の20時に、私はマー君に電話した。
「今晩は、今、大丈夫かな?」
「うん、大丈夫、電話ありがとう」
「昨日、ミー君と会ったよ、楽しかった」
「良かったね!匠は、変わり無い」
「うん、元気だよ、マー君のことは、話せないの、ミー君が気を回しちゃうから」
「大丈夫、分かるから匠の気持ちは、なんとなく....」
「それでね、ミー君にお弁当、作ってあげることにしたの」
「エッ、どうして?」
「だって、マー君、作らせてくれないから」
「僕の通学時間が、早いのは分かってるじゃないか?」「僕だって、ガッコの作ったお弁当は食べたいよ」
「うん、ありがとう、そう言ってもらえて嬉しい」「でもね、お弁当作ってあげたい気持ちは、マー君のとは違うよ、ごめんなさいの気持ちが強いかな?」
「分かった、それで気が済むなら」
「そんなことより、私たち、
「今度の土曜日、ガッコ、僕の通学駅まで来てくれないか?」
「うん、良いよ」
「移動時間も考えて、13時に駅前の“ラパン”って言う喫茶店で会おう」
「分かった、“ラパン”に13時ね!」
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朝七時のバスに、乗るため15分前からバス停に、俺はいた。恋人ごっこのお弁当イベント、拓磨のつきあいが悪いから、こっちに
バスが目の前に停車する、折り畳みのドアが開く。俺は慎重にステップを踏む、顔を上げるとガッコがいた。
「おはよう!」
「おはよう!」
「と、隣り、座って良いかな?」
「遠慮は、要らないよ、私の、間ぁ、男さん」
「えへっ、ガッコさん、物は何処ですか?物は?」
「怪しい、お薬みたいに言わないの!」
ガッコは、通学鞄の陰から、ジーンズ生地のバッグを取り出して、俺に渡してくれた。
「もぅ、何してるの!恥ずかしいからやめて!」
ガッコの通う高校は、隣り町にあつた。
10分ほどで、ガッコの降りるバス停に到着した。ガッコは、窓際の席に座っていたから立ち上がり、通路に出るとき膝同士が触れた。瞬間、ガッコのスカートが目の前を過ぎた。甘く、切ないような花の香りが鼻をくすぐる。
一瞬遅れて、俺は言った。
「ありがとうな〜」
ガッコは振り向き、あかんべーをした。
反則だ!可愛すぎる!ふっと、あれも拓磨のものなのか、と思ってしまい悲しくなった。改めて感じた、ガッコと会うということは、こういう事なのだ、そこに、拓磨は居なくとも、その、存在を消し去るなんて、土台、無理な話なのだ。この間、振り切ったと思ったのに、また、振り出しに逆戻りだ。いけない、弱気になるな、俺。ガッコは、俺と会うことを嫌がっていない、寧ろ、喜んでいるじゃないか。可能性のある限り、取りに行こう、拓磨がガッコを譲ってくれるのなら、俺たち三人に取っても、それが一番じゃないか!
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部室で、ガッコの手作り弁当を広げていると、ノゾキヤローとカイタローが絡んできた。
「我らが、一寸ベーシスト様が、異なものをお召し上がりで!」
「それは、もしや噂に聞く、手作り弁当と、やらですかい?」
「君たちには、さして、縁のあるもではない、今生の土産に、よく見ておきなさい!」
「そりゃ、もしや、豚鼻ガリコお手製の禁断の弁当じゃあ。ねぇのかい?」
「一口すれば、瞬く間に手足が縮んで...」
「誰が!豚鼻ガリコだ!何だ、食べたら、小さくなる弁当って!」
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通学バス
今朝も七時の 通学バス
君は僕の 左側 窓際の席
君が先に 降りるのを 邪魔したいんだ
触れあう膝と膝 通り過ぎるスカート
君はホームルーム 一時間前
僕は閉門 ギリギリで
やめれないんだ 朝の待ち合わせ
少しだって 君に触れたいんだ
今朝も七時の 通学バス
君が居ない 左側 窓際の席
僕が後で 乗ってくる 知ってるくせに
離れる指と指 通り過ぎる思い出
君は待ち続ける 意味をなくした
僕は止まる ギリギリで
諦めるんだ 君を待つことを
無くしたって 忘れられないんだ
忘れないんだ 君とのことを
つらくたって 楽しかった時を
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