コットンキャンディ
閑古路倫
第1話 綿菓子みたいな君を見た
綿菓子みたいな君を見た。
あれは小学二年生の記憶、六月の花ぐもりの日の記憶、その日は小学校を徒歩で集団移動して近くの公民館で、予防接種が行なわれた。
通常と異なり後にも先にも遠足以外での集団行動は、この時だけだった。
その
綿菓子みたいな女の子が本当に居て、それも自分のクラスメイトに成るぐらいに、身近に居たと思い知らされたのは五年生のクラス替えの時だった。本当に僕は馬鹿だった。
綿菓子みたいな女の子に
本当に僕は馬鹿だった。
あの子の名前は、
僕が近づく前に、あの娘は誰かと楽しそうに話していた。
背の高いクラスメイト、
その時から背が伸びること無く小さいままの僕は、彼が僕に無いものを簡単に手にしている様に思えて、あまり好きな奴ではなかった。
そして、そんな僕の席は、あの娘の斜め後ろだった。嬉しすぎて変なテンションになるのも仕方なかった。ましてやあの娘は彼と楽しいお喋りの最中だもの、可愛さ余って何とやら、その時の僕には、やらかす未来しかなかった。そしてまんまとやらかした。
その日あの娘は、背中にとどく長さの髪をポニーテールに結っていた、すごく似合っていたし、ちょっと近づくだけで、ミルク石鹸の香りが
さすがに触れることもできないから、言ってしまった。心にもない言葉の暴力、まるっきりセンスの
「何だよ、その髪型コジローか?ブシかよー」「おまけに、名前も変じゃね、家は住むのに決まってるペ」
突然見知らぬ男の子kら投げ付けられた言葉の
それを見た僕は、愚かにもただ自分の言葉に反応してくれた事にだけ嬉しくなってしまっていた。「やーい、ブシー、サムライー」思い出すと只々恥ずかしい言葉の
驚いて見上げると、上沢が僕を見下ろしながら鋭く言い下した。
「自分だって、ガキじゃねーか」精一杯の声を出したつもりが、小さな震える声が出ていっそう惨めになった。
「ガッコ大丈夫か?」上沢があの子に声をかける。あの子は、小さく頷いて「うん」とかすれる様な声を出した。
うまく息が出来ない、せつなさの中で僕は何もできゃしないちっぽけな自分を抱きしめるしかなかった。
その日から、僕は上沢にまとわりつく様に着いて回った。あの子が目に入る距離に自分がいられるように、その為だけにそうした。
上沢は、いや、拓磨は思った以上に良い奴だった。心から信頼のおける男だったし、悔しいことに、そうあり続けた。それは、僕にだけだったのかも知れないが。
ガッコとは、住家のニックネームは名前の永子の永の字をながいと読んで、それを縮めたらしい、可愛い呼び名とは思うが、正直言って似合ってはいないと思った。そのガッコとは席が近い事と、拓磨と僕が親しくなった事で、割と話せるようになっていた。ただ、それほど上手に話せている気はまったくしなかった。心臓はバクバクだし、顔面から火が噴き出すぐらいにはタドタドしていた。
そんな日々の中で、図工が得意でも無い僕が、練り消しで二足歩行の恐竜、
ガッコは、ちょっと興味ある素振りを示して。
「可愛いね、それ」と言ってくれた。
めっさ嬉しかった。けど、「ありがとう、ちょっと嬉しいかな」などと
言葉にはならないが、そんな感じ、不思議に伝わってる気がしていた。な、わけないない。
授業の合間には、拓磨がちょくちょくやって来る。
ガッコは、拓磨が僕と話してても嬉しそうだ。
拓磨は、さりげなくガッコと言葉の出し入れをする。
無理も淀みもなく、ガッコも僕と話すよりずっと楽しそうに見えた。
きっと、楽しみなんだ........拓磨と顔を合わせるだけで。
消ゴム使いの名人
みくびらないで欲しい。
ノートの端の落書きも
計算違いの筆算の跡も
きれいに全部元通りにできるさ
これっぽっちの擦れ傷
寂しさなんて、目にも止まらず
綺麗さっぱり 消した後さえ残さない
裏表紙の君の笑顔
気まぐれであげた君への優しさ
ほんの少しのつながりを
恋しい想い隠したままで
不出来な仕事と
触れ合うことで出来る傷
残したく無きゃすぐに消せるさ
残す思いも
コットンキャンディ 閑古路倫 @suntarazy
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